(61)◇ 誰にも渡さない(アルフォンス視点)(12)
茶会の日、毎回母とラファイエリ伯爵夫人が楽しみにしているクリスのドレスのお披露目時間は、自分もとても楽しみにしていた。
クリスならどんなドレスでも似合う事は分かっている。
美しく着飾るクリスから目が離せなかった。
早く自分が選んだドレスやアクセサリーを贈りたい。
既にドレスの生地や、宝石の原石は幾つか取り寄せている。
そろそろ贈ってもクリスに叱られないかいつも時期を見計らっていたが、なかなか難しかった。
クリスは執事のサムやメイド達からもとても気に入られ、
彼女と出会う誰もがクリスの虜になっていく。
嬉しい事なのに、受け入れたくない自分がいた。
ある日、遊びに来ていた幼い再従兄弟がクリスと庭で遊んでいた。
再従兄弟はロアンといい、事もあろうに笑顔でクリスに抱きついた。
その瞬間目の前が真っ赤になり、二人に向かって走った。
ロアンをクリスから無理矢理引き離し、ロアンの泣き声が聞こえたが関係無い。
近くに控えているメイドが面倒を見るだろう。
自分はクリスの手を掴んでサロンに向かった。
その後クリスにこっぴどく叱られたが、クリスが自分だけを見ている事に安堵した。
その時、
この気持ちが嫉妬だと理解した。




