(60)◇ 誰にも渡さない(アルフォンス視点)(11)
頻繁に我が家の茶会に伯爵夫人と共に出席していたクリスは、
すっかりフレデリーグ公爵家に馴染んでいた。
茶会の日は自分も騎士団の任務が重ならないように色々と調整し、なるべく屋敷にいるようにした。
我が家にクリスがいる。
心が弾む。
このまま此処にずっと居てくれれば良いのにと本気で思う。
何度も言葉にして言うものの、クリスの隣にいる伯爵夫人には笑顔で睨まれ、肝心なクリスには全く伝わっていないようだった。
クリスは大変聡明だが、時々話が噛み合わない時がある。
そこもクリスの魅力の一つだった。
要は、クリスなら何でも良かった。
母の渾身の力作の休憩室をクリスは気に入ってくれたようだった。
日中、自分はクリスの休憩室に入ることを控えた。
父の言う通り、やはり人前でのクリスの伯爵令嬢としての立場は絶対に護らなければならない。
自分が買って来た室内履きも使ってくれているらしいが、残念ながら実際に履いているところを見たことが無かった。
じっと見つめられて、笑顔でお礼を言ってもらえて満足した。
贈り物を喜んでくれるのはやはり嬉しいが、本心はやはり履いているクリスを見たかった。
欲を言えば自分が履かせたかった。




