(57)◇ 誰にも渡さない(アルフォンス視点)(8)
その日からクリスを手に入れるために動き、自分自身を磨いた。
惰性で生きてきたそれまでとは全く違う。
学ぶ事全てにクリスとの未来が繋がっていると思うと、
やる気が漲り、面白い程に身に付いた。
両親にはクリスに出会った夜に、
彼女と婚約し、将来結婚したいと話をした。
幼い頃からどこか冷めている息子から、
いきなりラファイエリ伯爵令嬢を妻に欲しいと懇願された両親は、とにかく驚いた。
初めて見る息子の情熱と執着に驚き、
両親はすぐに我が家の茶会にラファイエリ伯爵夫人とクリスを招待をして、
直接クリスと会った。
自分が絶賛し婚約を熱望したクリスは想像以上の令嬢だったと、
興奮気味な両親から聞き安堵した。
特に母は、自分の祖国バルマン国の言葉を片言だが話せるクリスに驚き、大変喜んだ。
亡き娘と似た金髪の幼いクリスを抱き締め、涙を滲ませていた。
父はクリスの持つ知識量とものの見方や、
控えめだが芯がしっかりとした性格をかなり気に入っていた。
クリスを見つけた自分を、久し振りに大いに誉めた。
独身の頃、バルマン国に視察に行き、
一目で母を見初めて強引に連れ帰った父に『やはりアルもフレデリーグ家の男だな』と納得され、遺伝なら仕方がない事だと自分も大いに納得した。




