(52)◇ 誰にも渡さない(アルフォンス視点)(3)
貴族は美形が多く、
美しい女性には大概見慣れている。
しかし、この少女を見た瞬間、
その全てから目が離せなくなった。
緩くウェーブした、長く美しい白金に近い金髪。
深い碧色の目に引き込まれる。
宝石の様に輝く碧色の目は、怯えながらも真っ直ぐに自分の事を見ていた。
自分は何も疚しいことはしていないのに、
何故かこの碧色の目には心の奥まで見透かされるような気がして、怯みかけた。
スパイの疑いを思い出し、すぐに気を引き締めた。
『…………お前、スパイか?』
『ひいいっ!!ち、ちがいますっ!!』
自分の動揺と緊張感を隠すために、わざと低く声を出した。
普段殆ど動揺などする事が無かった自分が、
内心狼狽えている。
少女は怯えながらも気丈に自分の質問に答えた。
本当は恐怖でこの場からすぐにでも逃げ出したいだろうが、
貴族の令嬢らしく凛とした佇まいで気丈に話した。
しかし、華奢な指先が僅かに震えていた。
思わずその手を握りそうになった。
一瞬も目を逸らさずに少女を見つめた。
話す様子も内容も不自然さは見当たらなかった。
寧ろ、話を聞けば聞く程その内容に驚きが隠せない。
スパイの疑いは、すぐに間違いだとわかった。




