(5) サイファー王太子殿下
ただ、此処ブラーム国は、
近隣諸国に比べ平民でも能力がある者を公務員的な地位に就け、活躍の場を与えていた。
貴族に比べるとまだまだ人数は少ないが、
この世界ではかなり革新的な事だった。
賢王と呼ばれる現国王陛下の長子、
サイファー王太子殿下がこれまた明哲で、
デキる平民の登用を推し進めている素晴らしい御方だ。
王太子殿下には先日の王宮の舞踏会で、
またダンスを一曲踊って頂いた。
今年に入って三度目だ。
周りの御令嬢達の目が怖いから、ほんともういいのに。
地味に目立たず過ごしたいのに!
金髪碧眼で完璧な王太子然りなサイファー殿下は、
ダンスも完璧だった。
ダンスはまあまあ得意な私もさすがに緊張しながら踊っていると、
今回もやたらと話しかけられた。
黙って踊らせてよと少しイラッとしたが、
一伯爵令嬢の私は逆らう根性も無く、
令嬢らしく小さく微笑みながら質問に答えた。
『我が国の憲法をどう思うか』、『都市の環境整備について意見を聞きたい』との固い質問に思うまま簡潔に答えたら、ぐいっと顔を近付けられ『ラファイエリ伯爵令嬢、やはりダンス中だけでは足りない。もっと貴女と話したい。続きは別室で』と、腰を引き寄せられ拉致られそうになった。
これはマジでヤバい!と逃げようとした、その時。
「ラファイエリ伯爵令嬢、次は私と踊って頂けますか?」
「っ!?」
「アル!来ていたのか!?」
助け船を出してくださったのが、アルフォンス様だった。