(47)夜更けの侵入者(2)
「クリス」
「何をなさっているんですか!アルフォンス様!」
「………貴女に会いたかった」
音を立てずに夜風のように部屋に入ってきたアルフォンス様は、
黒いマントを羽織り、頭から足先まで黒一色だった。
暗闇の中では溶け込んでいてわからないだろう。
懐かしいアルフォンス様の香りと声に、自然と胸が高鳴る。
でも、この状況は絶対にあってはならないこと。
たとえ泣いてしまいそうな程嬉しい言葉を言われても、
今すぐに帰って頂かなくてはならない。
「っ!…………ここに居てはなりません。
誰かに見つかったらどうなさるおつもりですか?………早く、お帰りください」
「貴女は、嘘つきだ」
「!?」
「私のそばにいてくださると言ったのに………あの時、私に約束してくださいましたよね?」
「…………約束、しました」
「でも、全然そばにいてくださらない。
寧ろ、他の男と一緒にいるなんてっ………しかも、あんなに楽しそうに」
「酷い……何て言い方………他の男と一緒なんて、そんな言い方なさらないでください!」
「なら、何故今、貴女はここにいるんですか?」
「っ!」
「……サイに……王太子殿下にあんなに気に入られて、抱きしめられて」
「だっ!…………」
「しかも王宮図書館で………私達の大切なあの場所で………」
「!………見ていたんですか?」
「貴女は嘘つきだ」
「私は嘘なんかついていないわっ!!アルだって!!」
「!」
怒りが爆発した。
嘘つき呼ばわりされて、
これ以上黙っていられなかった。




