(46)夜更けの侵入者(1)
かなり打ち解けたメリーナに着替えを手伝ってもらい、
湯浴みを済ませて新しい夜着に着替えた。
何となく、夕方に着せて頂いていた夜着より更にゴージャス仕様になっている気がする。
とりあえず、余り深く考えずに今夜はもう寝よう。
時計を見ると、もうすぐ深夜0時。
窓の向こうは暗闇でとても静かだ。
ベッドの中でゴロゴロしているけれど、
号泣したお陰か、何だか頭も身体もスッキリしていて眠れない。
こんな王宮のゴージャス客室でなんて、緊張してすぐに眠れるわけがない………と思ったら、既に私は夕方まで爆睡していた。
今夜はサイファー王太子殿下やメリーナと話せて楽しかった。
やっぱりたまには思いっきり泣いたり人と喋ったりして、
ストレス発散をした方良いのかもしれない。
前世では無理矢理悲しいドラマや映画を見ては、泣いてスッキリしていた。
アニメも結構泣けた。
愚痴をこぼせる友達もいた。
ゆかり………元気かな。
と、色々と物思いに耽っていたら、
バルコニーに続くガラスドアから、
小さなノックの音が聞こえた。
突然のことに酷く驚いた。
「誰っ!?誰かいるの!?」
「………クリス。私です」
「えっ!?………アル、フォンス様?」
聞き間違える筈は無い。
何度も夢見た、低く下腹に響くアルフォンス様の声がした。
「………はい」
「な、何故!?こんな夜更けに、何ですかっ!?」
「………入ってもいいですか?」
「だっ、駄目に決まってるでしょ!?」
「入ります」
「えっ!?ちょっと待って、入ってきたら駄目っ!きゃっ!」
静かにガラスの窓が開いて、
音をさせずに全身黒ずくめの大きな人間が部屋に入って来た。
初めは恐怖心しか無かったけれど、
すぐに少しだけ落ち着いた。
懐かしいアルフォンス様の香りがしたから。




