(45)年長メイドのメリーナ・メイ男爵令嬢
年長のメイドさんはメリーナという名で、
22歳のメイ男爵家の令嬢とのことだった。
軍人だった祖父が昔の大戦で活躍し、
男爵位を賜ったという新興貴族だった。
父親も弟も国軍に所属している軍人一家らしい
「もしかして、メリーナのお祖父様はフィル・メイ様ですか?」
「えっ!?祖父の事を御存知でいらっしゃいますか!?」
「はい、50年程前のライナー大戦の折りに出陣なさっていた、
時の王太子殿下、前国王陛下の危機をお救いになられたと近代歴史書で読みました」
「まあっ!ラファイエリ伯爵令嬢!祖父の事をご存知でいてくださったとはなんと光栄な………恐悦至極にございます」
「わたくしの方こそ感激です………まさか、彼の有名な英雄のフィル・メイ様のご子孫の方とお会い出来るなんて!
我がブラーム国が今在るのも、フィル・メイ様の御活躍が合ってこその事。
本当に感謝の気持ちでいっぱいです」
「ああ、ラファイエリ伯爵令嬢……」
感激のあまり、メリーナは両手を胸の前で組んでクリスティーナを拝んでるようなポーズになっていた。
「しかもその素晴らしい御功績に、
当時の国王陛下は子爵位をお授けになる御意向でしたのに、
フィル・メイ様は固辞され、それでも周りから説得されて漸く男爵位を授爵されたと………」
そう。
私はこの歴史書を読んだ時にものすごく感動した。
フィル・メイ様の漢気に感動し、
挿し絵が鬼神の様な風貌で、
その素晴らしい筋肉にもクギズケになった。
前世でハマっていた地方プロレスの人気プロレスラー、
『鬼神サンダータイガー』に見た目そっくりだった。
私の内面テンションは爆上がりだった。
ちなみに、美人男爵令嬢のメリーナには鬼神の面影は全く無い。
鬼神に心の中で謝罪しながら、ほっと胸を撫で下ろした。
「はい。祖父はかなりの頑固者で、
授爵を納得させるまで周りも大変だったようです」
いつもキリッとした表情のメリーナが、
困ったような笑みでクリスティーナを見つめた。
『きゃ!メリーナ、可愛いっ!ギャップ萌える……』
「フィル・メイ様は御息災でいらっしゃいますか?」
「はい!お陰様で元気にしております。
今は領地の奥で木こりの様な生活をしております」
「木こり!」
『良いっ!鬼神が木こりに!筋肉は維持されてそうね。見たいわ………』
「いつか、フィル・メイ様にお会いできたら嬉しいです」
「はい、是非!きっと祖父も喜ぶと思います」
二人は笑顔で目を合わせた。




