(44) いきなり王宮でお泊まり
まず、驚いた。
私が泊まらせて頂く部屋が、
サイファー王太子殿下の私室とめちゃくちゃ近かった。
すぐ目の前の角を曲がった奥の部屋が殿下の私室らしい。
と、いう事は、ここは王族のプライベートエリアだ。
私は一伯爵令嬢。
私が滞在して良い場所ではないはず。
お父様は何故断…………れないか。
サイファー王太子殿下との楽しい夕食の時間が終わり、
部屋の前まで送って頂いた。
とにかく殿下は甘い。
さすが生まれた時から王子様だ。
あの見た目であの扱いをされたら、
どんな女性でも勘違いしてしまうだろう。
イケメン天然タラシは恐ろしい。
イケメンには要注意だ。
明日の昼食と夕食もご一緒することになった。
他は自由に過ごして良いらしい。
王宮のセキュリティ、大丈夫なのかな?
とりあえず、明日も朝から王宮図書館に行くことを殿下に伝えた。
『クリスティーナ、おやすみ』
と、言いながら頬を指で優しく触られた。
固い剣だこが男の人の指だと変に意識してしまう。
更に、あの美しい碧い目で流し目しながらのおやすみは反則だ。
天然タラシ王子様は、おやすみの挨拶もめちゃくちゃ色っぽい。
とにかく要注意だ。
私は顔を赤くしながら「おやすみなさいませ。殿下」と、
なんとか噛まずに言えた。
頷いた殿下と少し目が合ったまま立っていると、
後ろに控えている執事の咳払いで我に返った。
殿下が廊下の角を曲がるまで見送り、
年長のメイドさんに案内されて部屋に入った。




