(41)サイファー王太子殿下との夕食(2)
リアル王子様に引き摺られながら連れて来られたこの部屋は、
意外とこじんまりとした素敵な部屋だった。
家族で食事をするための部屋なんだとサラッと説明され、
良く考えたらこのお方の御両親って………。
椅子から飛び上がりかけたら、
『国王陛下と王妃殿下は明日の夕方まで戻らないから。
今夜は二人だけだから安心してね!』と、殿下にバチっとウインクされた。
安心できる………わけがない!
「ほら、この鮭のテリーヌも美味しいよ」
「いただきます」
テリーヌ系は私の三大大好物の一つだ。
うん!やっぱり美味しーい!
はあっ。王宮のテリーヌってめちゃくちゃ美味しいんだなあ……。
「よかった……」
「?」
「クリスティーナが元気になって、本当によかった」
「………」
「僕ね、あんなに涙を流して泣いている女の子を、初めて見たよ」
「………申し訳ございませんでした」
「クリスティーナ、謝らなくていいんだよ。
しかも、泣いてる本人は涙が出てることに全く気が付いていなかったんだ」
「!………」
「何て悲しいことだろうね。こんなに可愛い少女が気を失うほど泣いて辛いなんて」
「………」
「泣いていた理由は聞かないよ。知りたいけど、無理には聞かない。
けれど、辛くなったり悲しくなって、今日みたいに泣きたい時は僕を呼んで」
「!?」
「クリスティーナを一人で泣かせたくないんだ。
その時は僕がそばにいて抱きしめてあげるから」
「殿下……」
「ね、だからいつでも呼んでね?」
「………ありがとうございます」
何て優しい王子様なんだろうと、
こんなにキラキライケメンなのに心まで優しい、
こんなに素晴らしい人がいるんだと、なんだか心がほっこりした。
はにかみながら私はお礼を言った。
悲しくなったら殿下を呼び出す事なんて現実には絶対無理だけど、
今の私にはその優しいお気持ちが本当に嬉しくて、心に染みた。
「!………クリスティーナ」
「殿下、本当にありがとうございます。
そう言って頂けてとても心強いです。
お返しに、殿下がお辛くて泣きたい時はわたくしを呼び出してくださいね」
「え!?」
「なあんて。ふふっ」
「………うん。そうする。僕は君を………呼び出すよ」




