(40) サイファー王太子殿下との夕食(1)
サイファー王太子殿下は笑顔のまま部屋の中に入ってきて、
優しく私の手を取り、甲にギリギリ触れないキスをした。
本当に映画のワンシーンのようだ。
まだ社交界デビューをしていない私は、
大人同士の挨拶は見たことはあるが、実際に自分がされたことは無い。
まさか、お初がリアル王子様とは………緊張する。
「ラファイエリ伯爵令嬢、ご気分はいかがですか?」
「だ、大丈夫です。サイファー王太子殿下にも、こちらのメイドの皆様にも沢山ご迷惑をお掛けしてしまい、大変申し訳ございませんでした。
本当に何とお詫びすればよろしいか、また日を改め」
「では、お詫びに私と夕食を御一緒してください」
「え?」
「さあ、準備は出来ています。参りましょう」
「え、いや、ちょっと、え?ちょっと、待って」
リアル王子様にいきなり腕を組まれ、
慌ててメイドさん達に助けを請おうと振り返ると、
素敵な笑顔で頷きながら見送られた。
『うそ!?ちょっと、無理だって!待ってー!』
美味しい…。
この鴨のロースト、最高だわ。
おかわりいけちゃうくらい美味しい。
「ふふっ!クリスティーナ、そんなに美味しい?」
「え!?わたくし、声に出ていましたか?」
「ううん。顔に書いてた」
「か!?…………さようでございましたか(恥ずかしすぎるー!どんだけ笑いながら食べてたのよ、私!?)」
食いしん坊がバレた気がして、思いっきり恥ずかしくなり、
自分の顔が赤くなるのがわかり、スッと俯いた。
「……」
「あはは!クリスティーナは本当に可愛いね」
「……可愛くはないです。もう、からかうのはおやめください」
「からかって無いよ。本当だよ。
僕が選んだそのドレスも、本当に似合っている。綺麗だ」
えっ!うそっ!?このドレス、殿下セレクトなの?
……どうしよう。とにかくお礼を言わなきゃ。
「殿下、素敵なドレスをありがとうございます。
わたくしの着ておりましたドレスは……」
「うん、あれね。涙で胸元辺りが濡れていたから、新しいドレスを用意したよ。本当に良く似合ってる。………クリスティーナ、可愛いよ」
「もっ、申し訳ございませんでした!」
「いいんだよ?手入れをして返すから、少し待ってね」
「………本当に、何から何までご迷惑ばかりお掛けして本当に」
「クリスティーナ」
「は、はい」
「謝りすぎだよ?謝罪はもう十分受けたから大丈夫」
「………はい。ありがとうございます」
「うん。さあ、続きを食べよう!」
気が付けばこの王子様、
いつの間にかクリスティーナ呼びをしている。
下から目線を上げるとキラキラのシャンデリアの光を浴びた、
キラッキラのリアル王子様が微笑んでいた。
眩しい。目がチカチカする。




