表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/130

(36) サイファー王太子殿下との出会い(2)


「!?」


「君、涙が……」


「え?」



サイファー王太子殿下に指摘されて、

頬に手を当てると、涙でびちゃびちゃだった。

涙の量が多くて顎から(しずく)が落ちている。



「わっ!」



貴重な本に涙が落ちていないか慌てて見たら、

本には落ちてはおらず、自分のドレスの胸元に落ちていた。

胸元はびちゃびちゃだ。



「よかった、本は濡れてなかった…………はっ!」



サイファー王太子殿下は安堵している私を凝視していた。

それにに気付いた私は慌てて椅子から立ち上がり、

思いっきり頭を下げた。

頬に残っていた涙が床に落ちる。


余りのパニック状態に貴族の挨拶のシルトがすっかり抜け落ちて、

日本人的な深いお辞儀をしてしまった。

慌ててシルトを取りながら挨拶をした。

もう、グダグダだ。



「サ、サイファー王太子殿下、大変失礼いたしました。

私はク、クリスティーナ・ドゥム・ラファイエリでございます。

お見苦しいところをお見せしてしまいまして、本当に申し訳ございません。

直ぐに御前を失礼いたしま」

「待って!」

「!?」



借りていた2冊本を持ち、慌ててその場を去ろうとした私は、

いきなり殿下に手首を掴まれた。



「本を貸して」



言われるがまま本を渡すと、

殿下は受け取った本を傍の小さなテーブルに置いた。



「?」



手首を掴まれたまま固まっている私に、

殿下は上着のポケットから御自身のハンカチを出して、

私の頬の涙を優しく拭いた。



「!?」

「………こんなに泣いて。そんなにあの本は感動的だったの?」

「………えっ?……………ふぁい。涙が、ひっく、とまりません、でした」



殿下に優しくされて、パニックから解き放たれて、

でもまだ昨日の失恋のショックも引きずっていて。

何がなんだかわからなくなって、また涙がとまらなくなった。

泣き過ぎて引き泣きになってきた。



「ど、どうしよう、も、も、もうしわけ、ございませんっ、ひっく、涙が、と、とまらなく、なってし、まい、ました」

「ふふっ。いいよ、好きなだけ泣いてスッキリするんだ。おいで」



フワッとした感触が身体を包み込んだと思ったら、

私はサイファー王太子殿下に抱きしめられていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ