(35) サイファー王太子殿下との出会い(1)
朝から目が腫れまくってるこんな日に限って、
月2回のお父様とお母様が王宮に行く日だった。
私は仮病でも使って家で寝てれば良いものの、
根が真面目な元日本人の私は、
つい『大丈夫です。行きます』と言ってしまった。
生まれ変わっても社畜根性は消えてはいなかった。
朝食時、私の腫れた目を見て大騒ぎになった両親と執事やメイド達。
寝る前に読んだ小説に感動して泣いただけだからと説明して、
その場は何とか落ち着いた。
王宮に着いて、
私は下を向きながらそそくさと王宮図書館に向かった。
誰もいないこの場所は本当に落ち着く。
小さい頃から大好きな場所。
ここでアルフォンス様にも出会った。
いつもの意見交換会のソファーのある場所には行かなかった。
当分はあの場所には近寄りたくなかった。
あのソファーを見るのは、まだ辛すぎる。
未だアルフォンス様からは何の知らせも無い。
マキシム国からは既に帰国している筈なのに。
意見交換会に誘われても断らなきゃ、と思いつつも、
アルフォンス様からの連絡を待っている。
未練だらけだ。
でももう、諦めないといけない。
失恋って、
本当にしんどいな。
いつものソファーよりももっとずっと奥にある、
ブラーム国の古い歴史書があるコーナーに行った。
ここなら本当に誰も来ない。
二冊ほど古い歴史書を手に取り、窓辺の椅子に腰掛けた。
一冊目を夢中で読んだ。
30分程読んだところで、誰かに声を掛けられた。
「君、大丈夫?」
ぱっと顔を上げると、
金髪碧眼のとても美しく若い男性が立っていた。
「あ……」
私は硬直した。
声を掛けてきたのは、
我が国の第一王子、サイファー王太子殿下だった。




