(33) マキシム国とアルフォンス様
アルフォンス様と最後に会った日から数ヶ月が経った頃。
お父様からアルフォンス様が国を代表して、
隣国のマキシム国を訪問されていたことを聞いた。
もちろん、私は初耳だった。
アルフォンス様の存在が本当に遠く感じた。
この数ヶ月間、淋しくて勝手に涙が出たり胸がぎゅっと痛くなった。
もう既に帰国されているらしいけれど、
私の方からは会いたいなんて言えるはずもなかった。
マキシム国は我がブラーム国の石炭と原油の主要輸出国であり、
友好国の一つだ。
私が幼い頃覚えた外国語の一つが、マキシム語だった。
我が国は近隣諸国に比べて石炭と原油の産出量が圧倒的に多いが、
残念ながらまだこの世界では天然資源を上手く使った産業が発展していない。
マキシム国は国土は我が国の半分程で、
採れる天然資源は殆ど無いが、
その代わりに海の多い地形を生かした漁業と、
生真面目な国民性から開発力や技術力に優れていた。
この二か国が手を組んで、
きっと何か大きなプロジェクトが進んでいるのかもしれない。
一伯爵令嬢には関係の無いことだ。
それよりも私は、
我がラファイエリ家の行く末の方を無理矢理気にするようにした。
そうじゃないと、この話の最後に聞いたお父様の言葉に、
頭を殴られたような衝撃を受けて倒れそうだからだ。
『マキシム国の第二王女様が、
訪問していたフレデリーグ公爵を甚く気に入って、
是非とも結婚したいとマキシム王に懇願したらしい。
マキシム王も国王陛下も乗り気らしい。
両国王が奨めているならば、
フレデリーグ公爵もこの縁談を断ることは出来ないだろう』




