(3) 桐生里奈からクリスティーナ・ドゥム・ラファイエリになった
あれから16年。
前世は桐生里奈だったが、
今はクリスティーナ・ドゥム・ラファイエリだ。
名前が長い。
書道で半紙に名前を書いたら、
確実に左端は真っ黒だろう。
ブラーム国の伯爵家であるラファイエリ家の一人娘。
我がラファイエリ伯爵家は裕福でも貧しくもなく、
取り立てて特化したところが全く無い中庸の貴族だ。
里奈の時には真っ黒剛毛だった髪は、
背中まである美しいプラチナブロンド。
肌は透き通るように白く、深い海のような碧い瞳を持つ。
自分でも恐ろしく感じる程の美少女だ。
かなりイケオジなお父様譲りの碧い瞳以外は、
美魔女お母様とクローンの様にクリソツだ。
ちなみに、お母様の瞳は若草の様な瑞々しい緑色だ。
「「ティーナ!」」
「おはようございます。お父様、お母様。
うっ!お父様っ……く、くるしっ!ちょっ、お離しっ、ください!」
「おはようティーナ!今朝もエレンに似て何て美しい娘なんだ!
お父様の目を君の輝く美しさで潰す気かい?」
「ティーナ!可愛い過ぎて出産の時のあの感動を思い出して、
お母様は涙が出てしまうわ……」
「ああエレン!何て愛おしい……君のお陰で僕には宝物が二つになったんだよ。泣かないで、さあ愛する僕の妻、その美しいお顔を見せておくれ!」
「あなたっ!」
「いただきます」
毎朝繰り広げられる両親の愛の交歓には特に触れず、
今朝も料理長が腕を振るった美味しそうな朝食を、
完璧な美しい所作で頂いた。
周りにいる執事やメイド達の感嘆の溜息が聞こえる。
父カールと母エレンのイチャイチャは止まらなかったようで、
私の事はお気になさらずと無表情でさっさとお先にダイニングルームを後にした。
頬を染め、恥ずかしがる仕草の一つでも出来ればいいが、
見た目的には16歳な私は、中身は既に46歳だ。
残念ながら思考的には
熟女ど真ん中だった。