(29) アルフォンス様のチャンス
「………取り乱してしまいました。申し訳ございません」
王宮図書館内のいつものソファーに二人並んで座りながら、
アルフォンス様はバツが悪そうに、
大きな身体を少し小さくしながら私に謝った。
けれど、手はしっかりと繋がれていた。
抱きついて甘えてしまった事が恥ずかしかったんだろう。
でも、男の人だって何か辛過ぎる事があったら、
悲しくて誰かに甘えたくなる時だってあるはず。
お父様はよくお母様にすがり付いて甘えて、
嘘泣きをしているくらいだ。
アルフォンス様が本当の姿を見せてくださって、とても嬉しかった。
なんだかすごく可愛くて、思わず抱きしめ返してしまった。
母性本能?母性愛?もう、何でも良いか!
「大丈夫ですよ。昔から此方での事は二人だけの秘密なんですから。気にせずに大声で泣き叫ぶとか、思いっ切り悪態つくとか、アルの好きな様にやっちゃってください」
「悪態………」
「なので私も、久しぶりに砕けた話し方で失礼しますね?」
「………ふふっ……。クリスは………やっぱりいいですね」
「………笑ってもらえて、よかった」
「………久しぶりに笑いました」
「ふふっ。なら、本当によかったです。
………わかりました!アルがもっと元気になるなら、
何か私に出来ることがあれば言ってください」
「え!?」
「私がこんなこと言うことなんてなかなか無いですよ。
ほら、チャンスです!どうぞ!」
「チャ、チャンス?ですか…………ふふっ。いいんですか?」
「いーですよ」
「なら………。二つ、お願いします」
「え。二つ?………んー、仕方がない。今日は特別ですよ?」
「ありがとうございます」
アルフォンス様は握っている私の手を自分の口元に持っていき、
私の指先に軽くキスをした。
じっと私を見つめながら。
「ちょっ!?と、あ、アル!?」




