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(28) 私のそばにいて


「クリス………お願いです、私のそばにいて」

「………」



美しく、いつも自信に満ち溢れ、

圧倒的な存在感のアルフォンス様が、

小さな震える声で私に懇願している。



この時、私は『私がアルフォンス様を護らなければ』と、強く思った。



不慮の事故で公爵夫妻を亡くされ、

若くして突如公爵を継ぐ事になったアルフォンス様。


御両親の死を悲しむ時間も無く、

フレデリーグ公爵として領地領民のため、家のため、国のための仕事は山程ある。

弱音を吐く相手はいないのかもしれない。

他の貴族から弱味を握られ、

いきなり足をすくわれる可能性だってある。

貴族社会は一見煌びやかに見えるが、中身はドロドロ。

妬みそねみの渦巻く汚い世界でもある。


既に授爵されていた子爵とは立場が全く違う。

フレデリーグ公爵家はこの国の貴族の中でも最高位だ。

いくら見た目も頭脳も素晴らしいアルフォンス様でも、

その若さで重責を引き継がれたプレッシャーは計り知れない。



アルフォンス様が私にそばにいて欲しいと仰るなら、

そばにいよう。

私みたいな女でもいいなら、

ギリギリまでおそばにいよう。

少しでも気持ちが楽になられるなら本望だ。


だって、

本当は私がそばにいたいから。


アルフォンス様から『もういい』と、言われるまで、

そばにいさせて頂こう。




すがり付くように私を抱きしめるアルフォンス様の、

広く大きな背中に恐る恐る手を回した。


アルフォンス様の身体がビクッと動いた。



「おそばに、いますよ………アル」

「!………ク、リス……」



アルフォンス様は小さく震えながら、

更にわたしをぎゅっと抱きしめた。


ずっとこのままいられたらいいのに。

本当にずっと、おそばにいられたらいいのに。


願いは叶わないことばかりで、

涙が出そうだった。








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