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(130) ガイア王子の恋(2)


『………下!殿下!ガイア殿下!』

『!………うるさい。聞こえている』

『はあ?嘘ばっかり!ずっと呼んでたのに、全然反応しなかったじゃないですかー!』

『……うるさい、黙れクヌート』

『もうすぐマキシム国との国境ですよ!そんな呆けた顔でいたら馬から落ちますよ!しっかり頼みますよ、ほんっとに!』

『あ?俺の何処が呆けてるだと!?』

『ほらー!レスロエンドのご・令・嬢と出会ってから、殿下なんだかおかしいんですよねー。さっきみたいにぼーっとしたり……しかしまあ、あのご令嬢、めちゃくちゃ綺麗だったですよねー!俺、あんな美少女初めて見ましたよ!我がグスタフ共和国にはなかなかいないタイプの儚げな美少女!キラキラ輝いててまるで森の妖精みたいで、俺思わず捕まえたくなって……痛でっ!!!うおっ!!ちょっと、待って、痛いですってば!殿下!落ち着いてっ!うおーっ!?』


部下のクヌート・ヴェルナーの言葉に頭にきた俺は、馬で並走するクヌートの太股目掛けて何度か蹴りを入れた。

もちろん馬には直接危害を加えてはいないが、少しの衝撃を嫌がった馬は悲鳴を上げるクヌートを乗せたまま猛スピードで走り出した。

あの馬は賢いから、まあ大丈夫であろう。


『本当にアイツは……とことん馬鹿な奴だな』

『殿下。間も無くマキシム国に入ります。念のためにご注意を』

『わかった』


他の部下からの言葉に気を引き締めた俺は、一行と共にマキシム国の王都を目指した。



先頃よりマキシム国から再三の訪問依頼が有り、父王、兄達と相談して漸く受けることにした。

以前父王がマキシム国に『(戦を避けたければ)王女を(人質として)嫁に寄越せ』と打診したが断られ、『馬鹿にされた!侵略する!戦争だ!』と息巻く父王を何とか兄達と共に宥めた。


今までの戦とは違い、マキシム国の後ろには大国ブラーム国がいる。


ブラーム国の国軍は強い。

あの国との戦で勝つにはかなりの時間と兵力を使い、かなりの数を失う。それでも勝てるかは微妙だ。


それに、今のグスタフ共和国にはこれ以上国土を広げる余裕は無かった。

今までに侵略した国の(くすぶ)りは今も有り、国全体が盤石とは言い難い。

しかし、マキシム国の質が良く豊富に採れる農作物や、魚介類等は捨てがたい。

北に位置する我が国は冬が長く一年を通して作物は採れない。冬の荒波時には漁に出られない日が続く。

ここで飢饉などが発生したら取り返しがつかない。

国土が大きくなり民も増えた今、マキシム国の豊富な食糧をどうにか確保したい。


これからの事を考えると(いささ)か気が重く、気が進まなかったマキシム国訪問だったが、妖精に出会えたので今は感謝すらしたくなる。

さっさと交渉を済ませて早急にレスロエンドに戻り、我が妖精に会いに行かなければ。


俺のレッドダイヤモンドを妖精に渡しておいて良かった。


宝石国であるグスタフの男が生まれた時、親から授けられる物は自分の名前と自分の色の宝石である。

その宝石は自分を護る石であり、肌身離さず持ち共に過ごす。

成年になりその宝石を心に決めた女に渡す行為の意味を、ブラーム国の妖精は知らないであろう。


美しく完璧な貴族の挨拶をこなす聡明な少女。

早くあの光輝く美しい妖精を娶りに行かなければ。


誰にも奪われない内に。



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どうぞよろしくお願いいたします。

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