(124)王妃殿下のお茶会(6)
「っ!」
リリアンヌ王女様は、アルフォンス様の首に両腕をしっかりと巻き付けて、首もとに顔を埋めた。
「………ラファイエリ伯爵令嬢。失礼します」
アルフォンス様はリリアンヌ王女様を見つめ、もう一度厳しい目付きで私を見た後、リリアンヌ王女様を大切そうに抱き締めながら、去っていった。
私はその背中を、ただ見ていた。
風が吹き、
私の心と身体を冷やしていく。
明るい青空の下のはずなのに、
暗闇の中にいるようだ。
「……。……………………っ!!」
心の中で悲鳴を上げた。
耳鳴りがする。
喉が熱い。
涙が勝手に流れた。
アルフォンス様に置いていかれた私は、
真っ暗闇の中にひとりぼっちだった。
暫くの間、茫然と座っていた私に、
お一人で戻って来られたお母様が話し掛けた。
「お待たせしたわね、ティーナ。リリアンヌ王女様はお部屋に戻られたの?」
「………………」
「どうしたの、ティーナ?」
「……………………っ!」
「もしかして、声が出ないの!?だ、誰かっ!すぐに医師を呼んでっ!早くっ!!」
喉に手を当てて涙を流しながら取り乱す私を、お母様は強く抱きしめて叫んだ。
「クリスティーナ!!」
「サイ殿下!ティーナがっ!」
「すぐに部屋に連れて行きましょう」
走って来たサイファー王太子殿下は涙が止まらない私を抱き上げ、急いで王宮に運んでくださった。
「……っ、……っ………」
「………クリスティーナ、大丈夫だよ。僕がいるからね」
サイファー王太子殿下は私を運びながら、優しい声で慰めてくださった。
声が出せない私はただ泣いていた。
私は王太子殿下の前で泣いてばかりだ。
もう、何だか疲れてしまい、ゆっくりと王太子殿下に頭を寄せた。
ふっと微笑んだ王太子殿下は、私の髪にそっとキスをした。
目を瞑り止まらない涙を流しながら下を向いていた私は、そのキスには気付かなかった。
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