(123)王妃殿下のお茶会(5)
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今日はもう一話掲載しました。
よろしければお楽しみくださいませ!
き、気まずい。
微妙な空気が流れている。
リリアンヌ王女様は美しい仕草でお茶を飲んでおられる。
とりあえず私も飲んでいたら、先にリリアンヌ王女様が話し掛けてくださった。
『クリスティーナ様は、本当にお綺麗でいらっしゃいますわね。全てがきらきらと……プラチナの光を纏ったように美しく輝いておられますわ……』
『!……ありがとうございます……過分のお褒めをいただきまして、身にあまる光栄でございます』
『いいえ、本当の事ですもの。お母様と……ラファイエリ伯爵夫人と本当に似ておられますわね……まるで姉妹の様ですわ』
『……ありがとうございます。リリアンヌ王女様こそ、とてもお美しく可憐で、まるで白百合の花の様に清楚な御方だと思いました』
『白百合……嬉しいですわ。亡き母が好きな花でした』
『……さようで、ございますか……』
どうしよう。
気まずすぎて、ものすごく話がしにくい。
このままだと褒め殺しされそうだ。
お茶会さえ殆んど出たことが無いから、こういう時に何を話せば良いのかまだわからない。お母様に事前のOJTをお願いしておくんだった。
で、屋敷の書庫にあった『コミュ障でも大丈夫!貴族会話のコツ』をもっと読み込んでおくべきだった!
全く会いたく無かったリリアンヌ王女様とのサシでの会話。
無理だ。もたない……お母様、早く帰ってきてー!
と、思っていたら。
『エマ。他の者も。少しクリスティーナ様と二人だけで話したいの。大丈夫だから下がっていて』
いきなりリリアンヌ王女様が人払いをした。
『!?』
『リリアンヌ様!?それでは私だけでもお側に…』
『いいから、エマ。下がりなさい』
『………畏まりました。あちらにおりますので……。失礼いたします』
エマと呼ばれた年配の侍女は不服そうな面持ちで下がり、他のメイド達も一礼をして下がっていった。
徐にリリアンヌ王女様が立ち上がり、空いている私の隣の椅子に座った。
とても近い距離で、真剣な表情で見つめられて驚いた。
『リ、リリアンヌ王女様?』
『…………私……クリスティーナ様に、お願いがございます』
『お願い、でございますか?』
『ええ………』
『?………』
『クリスティーナ様、お願いいたします。
………アルフォンス様を私から奪わないで』
急に爆弾が投下された。
リリアンヌ王女様が頭を下げている。
今、何て言った?
『お、お止めくださいませ、お顔をお上げくださいませ!』
『貴女が了承してくださるまで、わたくしは諦めません!』
『っ!?』
顔を上げたリリアンヌ王女様は必死の形相だった。
驚いた私は動けなくなった。
リリアンヌ王女様は強く私の両腕を掴み、話し続けた。
『……私は、わかっています。アルフォンス様が……クリスティーナ様を深く……とても深く、想っておられる事を』
『!?』
『そして……クリスティーナ様も……アルフォンス様を………。
お互いに深く想い合っておられる事を、私はわかっております』
『……それはございません。フレデリーグ公爵様はリリアンヌ王女様の婚約者でございます。公爵様はリリアンヌ王女様のことを』
『いいえ、お二人を見ていたらわかりますわ』
『!………』
『私が、アルフォンス様をお慕いしているから……わかるのです』
『…………』
『………ずっと見ているから、わかってしまったのです』
『………リリアンヌ王女様、違いますわ』
『私はっ!………アルフォンス様を、心からお慕いいたしております』
『っ!………』
『初めて、あの御方のお姿を見た瞬間に……私と同じ、黒髪の美しいアルフォンス様を見た瞬間に……好きに、なりました。あの時、恋とは本当に落ちるものなんだと知りました』
『………』
『何一つ、何の取り柄も無い不出来な私を……美しい姉の蔭で、息をひそめて生きていただけの私を……アルフォンス様は、妻に選んでくださったのです』
『………』
『そして、貴女はそのままで良いと、仰ってくださった……』
『………』
『マキシム国の王女として、政略結婚は覚悟の上でした。
でも、まさか、あんなにも素敵な御方と……ひと目見て好きになってしまったあの御方の妻になれるなんて』
『!…………』
『お願いです!私には、アルフォンス様しかいないのです。
アルフォンス様の為なら、この命も惜しくありません。
どうか、どうかお願い!……アルフォンス様を諦めて………』
『リリアンヌ王女様………』
『これ程までに美しく、聡明なクリスティーナ様なら、これから幾らでも素晴らしいご縁がおありですわ!サイファー王太子殿下もクリスティーナ様をとても気に入っておられます!』
『………』
『それに……私たちの結婚は、ブラーム国とマキシム国の繁栄が約束されています。………両陛下が、み、認められた重要な婚約……縁組なのです。
………聡明なクリスティーナ様なら、この意味をお分かりでいらっしゃいますわよね?もうすぐ私たちは結婚して、夫婦になるのです……お願いです、もう、私たちの邪魔をしないで!お願いっ!ううっ……』
『リリアンヌ王女様っ!』
『リリアンヌ王女!』
懐かしい声がした。
懐かしい香りも。
駆け寄ったアルフォンス様は泣きながら取り乱すリリアンヌ王女を抱き上げ、此方を向いた。
その眉間には皺が寄り、
苦悶の表情で私を睨んでいた。
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