(120)王妃殿下のお茶会(2)
「わたくし、今日は本当に楽しみで昨夜はあまり眠れなかったのよ!エルに笑われてしまったわ」
「ふふふ。リー様、本日はクリスティーナ共々お招きくださいましてありがとうございます。
リリアンヌ王女様、私と娘のクリスティーナもご一緒させて頂きましてありがとうございます」
私はお母様と一緒に、王妃殿下とリリアンヌ王女様に頭を下げた。
「今日は良い天気で本当に良かったわ。丁度、香りの良いバラが見頃だったから、今日のお茶会はこの四阿でしたかったの。
そうだわ、クリスティーナ。これからはわたくしのことを殿下と呼ばないでね。エレンの様に名前で呼んで欲しいの」
「!?」
王妃殿下。無理です。
誰よりもお美しくこの国で一番高貴な御方を、こんな小娘が気安くお名前では呼べません。
それにお母様は『リー様』とあだ名で呼んでいます。絶対、無理!です!
でも、どうしよう。
王妃殿下の圧!強い!
「ふふふ。リー様、それはまだ無理ですわ。緊張しているティーナが余計に固まってしまいますわ」
お母様、ナイスアシストです!
最強お母様は、神でもあった。
少し困った風な笑顔で私を見つめる(圧を掛ける)王妃殿下。
首を左右に振りたいけれど振るわけにもいかず、プルプルと小さく震えながら固まるしかない私。
「あら、そう?残念だわ………では、慣れてきたらエレンと同じ様にリーって呼んでね?仕方がないから今は王妃で我慢するわ」
「………はい、ありがとうございます。王妃様(あだ名呼びなんて、余計に、無理ー!)」
「そう!それでよろしくてよ!」
とりあえず満足してくださった王妃様は、品の良いモスグリーン色のシルク生地の上に、同じ色の総レースが重なったとても素敵な昼用ドレスを御召しになっていた。
ブロンドの髪を上品なシニヨン風に纏められ、後れ毛が風に揺れている。
本日も溜め息が出る程、完璧にお美しい。
この場にスマホがあれば全方向で連写したかった。
「リー様、今日のモスグリーンのドレス、精緻なレースがとても素敵ですわね」
「ありがとう!エレンに褒めてもらえると、わたくし本当に嬉しいの!貴女はとても正直だから」
え。
お母様、王妃殿下にも容赦無しなの?
お母様最強説は今、実証された。
「ふふふ。ありがとうございます。その様に仰っていただけますと光栄ですわ。
リリアンヌ王女様もとてもお美しい黒髪に今日の青色のドレスが映えて……本当に素敵でございますわね」
「ありがとうございます、ラファイエリ伯爵夫人。アルフォンス様が青色がお好きだとの事ですので、今日のドレスはこの色を選びましたの」
リリアンヌ王女様は艶々の黒髪をアップにして、清楚な明るい青色のドレスが可憐さを引き立てていた。
頬を少し朱く染めて照れながら話すリリアンヌ王女様は、初々しく幸せそうでとても可愛らしかった。
私は微笑みを顔に貼り付けながら、黙って話を聞いていた。
そうなんだ。アルフォンス様は明るい青色が好きなんだ。
知らなかったな。
もう少し濃い青色が好きなんだと思ってた。
持ち物や服の差し色は濃い青色が多かったから………。
「………」
「…さようでございますか。フレデリーグ公爵様と本当に仲睦まじくていらっしゃるのですね。素敵でございますわ」
「そんな……アルフォンス様は今、サイファー王太子殿下の御公務にお付き添いされていて………終わられましたらお二人で此方におみえになるそうですわ」
「…さようでございますか」
お母様も微笑みを絶やさず、リリアンヌ王女様のお話を聞いておられた。
でも、何だかちょっと……いつもと違うような?
気のせい、かな。
リリアンヌ王女様と私の横には一脚ずつ椅子があった。
サイファー王太子殿下とアルフォンス様用の椅子らしい。
ここに来るんだ………アルフォンス様。
会いたくないな。
※もし、少しでも面白いかも!と思っていただけましたら、下にある☆を押してくださると、とてもとても嬉しいです。めちゃくちゃ励みになります!
どうぞよろしくお願いいたします。




