(12) わたくしの得意技、失敗
座っていた椅子に座るように促された私は、
自身も机を挟んで真正面に座った黒の美少年にガン見されながらも、必死に説明した。
初めは恐怖で就職面接中の女子大生の様にキチンと座って説明していた私は、話している内に段々とその場に慣れて来た。
床につかない脚を少しぶらんぶらんさせる余裕も出てきた。
黒の美少年は合間に質問を挟みながら、
私の話を小さく頷きながら聞いていた。
「………ということで、この矢印は…………は……は……はっくしゅん!あーあ。…………きゃ!し、失礼いたしました!」
「………」
日が傾き少し肌寒くなった私は、くしゃみをした。
持っていたハンカチで口元は押さえたものの止められず、
最後はおっさんのような『あーあ。』の声まで出ていた。
伯爵令嬢としては最低である。
黒の美少年は美しい黒い瞳の目を見開いてクリスティーナを凝視した。
「も、もうしわけございませんっ!
くしゃみを止めるのはわたくしの得意技ですのに、
こんかいは止められませんでしたっ!」
「は?…………ぶふっ!」
「!?」
「く、くしゃみを止めるのが、得意技……あーあ、って。ぶふっ!」
「……………」
『コイツ……何かすごく感じ悪いんだけど!?ムカつくわー!
乙女の失態を思いっ切り笑いやがったわ。
顔が良いかなんだか知らないけど、
まだ少年でもいっぱしの貴族の紳士ならば、
そこはスルーするべきでしょう!?腹立つわねっ!!』
チビの私は頬を膨らまし、
ムスッとした顔で黒の美少年をジト目で下から睨み見上げると、
黒の美少年はハッとした顔で固まった。
その後、段々と耳と頬が赤くなっている。
『あれ?顔、お耳……赤い??』




