(115)リリアンヌ王女の決意(3)
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※ご注意※
この回は人を叩く、堕胎薬、堕胎に対する表現があります。
苦手な方はご注意ください。
「な、何?私のこと………?」
「申せ。ルベルテ」
「はい、陛下。………ジョアンナ様、陛下に何か重要な事を隠しておられませんか?」
「……重要な、こと?………」
「はい。……ここ三月程、月のものが訪れていないと」
「はっ!?無礼なっ!ひ、控えなさいっ、ルベルテ!そんな事をっ」
「我が国にとって、大変重要な話でございます」
「っ!………」
「ジョアンナ様、御子を身籠っておられますね?」
「!?」
「なっ!?み、身籠ってなんか、な、無いわっ!いきなり何っ!?つ、月のものが来ないのは、そう、よ、よくあることよ!
今回はいつもより少し、体調が悪かっただけだわ!」
「医師は既に診断済みでございます」
「診断済み!?どういう事っ………あっ!」
「昨朝、ジョアンナ様が起床時に体調不良との申し出が有り、診た女性医師が診断いたしました。確実に妊娠しておられると。
ああ、あの女医は妊娠出産が専門の医師でございます」
「そ、そんなっ!絶対嘘よっ!ルベルテ、貴方、私を嵌めようと嘘を言ってるんでしょっ!あ、あんな脈を測っただけの医者なんて、信用出来ないわっ!」
「では、今すぐ別の医師を呼び、更に詳細な診断させましょう」
「っ!」
「結果は同じ事かと」
「そ、そんな………」
顔面蒼白なジョアンナお姉様は、ぐったりと項垂れた。
「……ジョアンナ。お前は………まだ未婚の身で………マキシム国の王女でありながら、何とふしだらなっ!!!」
バシッ!!
「きゃあっ!!い、痛いっ!!」
お父様がジョアンナお姉様の頬を叩いた。
「お父様っ!お止めください!!」
私は無我夢中でお父様の背中にしがみつき、必死に止めた。
怒りからなのか、しがみついたお父様の背中が震えている。
「…………この、大馬鹿者がっ!!」
「ひっ!お、お父様っ!」
「相手は誰だ?」
「っ!?あっ、あの……………」
お姉様は酷く目を泳がせ、明らかに狼狽している。
「………ルベルテ、申せ」
「はい。ジョアンナ様、私共は全て存じております。
以前から関係を持たれていた複数の男共の事も」
「う、嘘っ………」
「ここ数か月は、同時期に数人の男達と関係を持っていた事も。
ジョアンナ様が秘かに堕胎薬を手に入れている事も存じております」
「なっ!?だ、誰がそれをっ!」
「密かに堕胎薬を飲もうと思っておられたと言う事は、妊娠を自覚されていたということですね?」
「っ!………」
「ジョアンナ様。お相手はスタッズ男爵ですか?それともラツィオ子爵ですか?」
「………そ、それは………」
「答えられないのでしょうか?ああ、分からないが正解ですか。ジョアンナ様」
「っ!」
「………ジョアンナ。お前には、心底失望した」
「お父様っ!ち、違うのですっ!!」
「今すぐ、その堕胎薬を飲め」
「っ!?」
「ロッシュ子爵がお前との縁組を望むかもしれん…………今すぐ飲んで堕ろせ。
子爵に選ばれなくとも、もし薬が効かずに産まれた子は即刻国外に出し、お前は降嫁させる」
「そっ、そんな!」
「有無は言わさん!親子共、生かせておくだけでも有り難いと思え!
お前は……マキシム国第一王女とあろう者が、未婚で親が誰とも分からぬ子を宿すなど……なんと下劣な…………それが国を脅かす新たな火種なるとは考えなかったのかっ!!」
「っ!お、お父様っ!」
「明日、正式にロッシュ子爵との縁組にリリアンヌを申し入れる。
万が一、ジョアンナとの希望があり、薬が効かなかった場合は、そなたに無理矢理にでも処置をする」
「ひっ!や、やめて………」
「それ程、此度の縁組は我が国にとって重要なのだっ!!
今すぐにブラーム国との強い繋がりを持たなければ、我がマキシム国は………」
「陛下」
「…………下がれ、ジョアンナ。そなたの顔は見たくはない。薬を飲ませて暫く部屋に閉じ込めておけ」
「待って!お待ちくださいませっ、お父様っ!これは何かの間違いですわっ!そうっ、これはリ、リリアンヌの陰謀ですわっ!リリアンヌが私を嵌めたのですわっ!わたくしは悪くないっ!助けて!お父様っ!うぐっ────」
美しく妖艶な容貌は変わり果て、赤髪を振り乱し叫び続けるお姉様は取り憑かれた魔もののようだった。
お姉様はルベルテ宰相が部屋に呼び入れた騎士達に口枷をされ、大きな布を被せられそのまま担がれて外へ連れて行かれた。
部屋が静かになり、呆然とした私はお父様に椅子に座らされ、お父様も向かいの椅子に座った。
ルベルテ宰相も少し離れた椅子に座った。
「………リリアンヌ、大丈夫か?」
「お父様………はい、大丈夫です」
「………すまなかった、リリアンヌ」
「………」
「長く辛い思いをさせてしまった。ルベルテに言われながらも、私は深く考えず、自分の目で確かめようともしなかった………本当にすまなかった。
そなたには、幸せになって欲しい。リリアンヌ」
「………お父様、ありがとう、ございます」
お父様は悔恨を込めた眼差しで私を見つめながら、優しく話してくださった。
今までの事を謝られ、私の幸せを願ってくださった。
胸がいっぱいになり、しばらく涙が止まらなかった。
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