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(10) 7歳でスパイ容疑

「…………お前、スパイか?」

「ひいいっ!!ち、ちがいますっ!!」



7歳になった私は、

何時ものように人が殆どいない王宮図書館で一人机に向かい、本を読んではうんうんと考えながら気になったことをメモしていた。

余りにも夢中になっていたため、

傍に人が居たことに全く気が付いていなかった。


自分が覚書のように書いたブラーム国の地図と各都市の主要産業、港の位置、矢印で示した流通経路、父の領地の現状と今年見込まれる収益と損益や、領地に合った新しい農業や産業の案などをはしっこにメモした紙をいきなり取り上げられ、スパイ容疑を掛けられた。



『し、し、しまったっ!

秘書の時からのクセでついつい何でもメモってたー!

誰もいないと思ってたのに!

やばいよやばいよ!って、この黒髪美少年、誰!?』



私は椅子から勢いよく立ち上がり、

碧色の大きな目を見開き恐怖に震えながら、目の前の少年を凝視した。



『すごい美少年だ。中学生……くらい?

黒目黒髪って久し振りに見た!

めちゃくちゃかっこいい………。

この図書館に入れるなら高位貴族の子供だろうけど、

私、友達いないから全然知らないし………って、この状況、かなり危険じゃない!?』



「お前、誰だ」

「っ!ク、クリスティーナ・ドゥム・ラファイエリでございます」

「ラファイエリ?……ラファイエリ伯爵令嬢か?」

「は、はい。さようでございます……」

「これは、お前が書いたのか?」

「ひっ!」



自分より年上の黒目黒髪の美少年に冷たい目で睨まれ、

低い声で詰められ、恐怖でおもらししそうな程びびった。

7歳でもいっぱしの伯爵令嬢の矜持と内面アラフォーが何とか勝り、ギリギリもらさず平静を装った。

危なかった。



「……全て正直に言え。さもないとお前は即刻牢屋行きだ」

「(ひーーーっ!コイツの目、かなりヤバい!ほんとに実行するタイプだ!)おはなしいたします」



心の中では恐怖でえぐえぐ泣きながら、

少し潤む瞳を黒の美少年に向け、説明した。



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