結果発表!
シュゥゥゥゥゥ……。
しばらくしてようやく俺から放たれた火弾の炎が消えると、身を隠していた卒業生とリーンベルが物影から立ち上がった。
おいおいおいおい、なんだよこの威力……。ヤバすぎだろ!!
「フフフフッ、どうだ見たか! 私の魔力を使えば低位魔法でもこのように高威力の魔法に早変わりするのだ!!」
ガハハハハハ! 驚きで声が出ない俺の頭の上でヴェストニアが大きき笑い声を上げていた。
こいつ、やっぱり腐ってもあのヴェストニアなんだな。
そこにリーンベルが血相を変え詰め寄ってきた。
「おい、火弾を使えと言っただろう!! これは炎弾ではないか!!」
「えっ!! いやちょっと待ってください!!」
「待つもくそもあるか!」
「よく考えてくださいよ、炎魔法なんて習ってもいないですし先生だって俺の噂は知っているでしょう??」
「……確か竜騎士学園始まって以来の落ちこぼれ、だったな。それにお前の言った通り炎弾は教えていないが」
俺の言葉で落ち着きを取り戻したリーンベルは口に手を当て考え込む。
そりゃ、あれだけ高威力なら疑うよな……。
出した俺でさえまだよく分かんないもん。
「……分かった確かにお前の言う通りだ。だがどうしても一つだけ聞きたいことがある……。お前にな」
「ん? 私か???」
リーンベルに指を差されたヴェストニアは突然のことに珍しく狼狽える。
「あれが炎弾でないとしたら、考えられる原因は一つ。竜の影響だ。お前は一体何者なんだ?? まずお前のような竜が何故今まで誰にも知られていないのだ!」
ま、まずい、これは下手をすれば先生にヴェストニアの正体がバレる……。
しかし次の瞬間、俺はヴェストニアの言葉に耳を疑った。
「私か?? 私の名はヴェストニアだが……」
……え??
こいつ今ヴェストニアって言った?? 言ったよね???
ガシッ!! 俺は目にも止まらぬ速さで頭の上のヴェストニアを掴むと、リーンベルから離れヴェストニアの頬を両手でつかんだ。
「なぁ、お前正体がバレたらまずいって言ったよね?? 君は馬鹿なのかな? いや、馬鹿ですよね??」
「む、むぎゅ……。わ、悪かったウィルバルト、つい口が滑っただけなんじゃ。頼むから手を離してぇぇ…」
むぎゅ、むぎゅっ……。俺はヴェストニアの謝罪の言葉など関係ないように更に頬を何度も押していく。
こいつ本当にないわ……。まぁ、俺もちゃんと言ってなかったかもしれないけどさ。
トントンッ……。 俺は突然背後から肩を叩かれると、そのはずみでヴェストニアを地面に落としてしまい、ヴェストニアは顔面を強打し、痛みのあまり地面を転げまわっていく。
「な、何でしょうかリーンベル先生……」
「そいつ今ヴェストニアと言わなかったか? いや確かにそう言ったな??」
「それはあれです! その、あの」
ハハハハハハ! 俺が竜騎士になる道を閉ざされたと思い絶望した瞬間、リーンベルが大きく笑い声を上げる。
「そうかそうか! やはりヴェストニアの子孫ということか!」
……へ??
「ヴェストニアを使役できる訳がないからな。予想はしていたが恐らく破壊竜の力を多少受け継いだ竜なのであろう。それであればこれだけの威力が出せたのも納得だ」
「そ、そうなんです! こいつあのヴェストニアの子供の子供の子供で……。そうだよな、ヴェス……、タ!」
「そ、そうじゃ!! うっかり名前を間違えてしまったんじゃ!! 私の名はヴェスタじゃ!!!」
納得したように何度も頷くリーンベルに、俺とヴェストニアは取り繕うように作り笑いを浮かべ何度も答えていく。
よ、よかった。何とかなったー!!
「…おいウィルバルト。こいつもしかしてアホなんじゃないか??」
「ちょっ……! 聞こえたらどうすんだよ!!!」
「大丈夫じゃ。ほら前を見てみろ」
ヴェストニアの言葉で俺がリーンベルに視線を移すと、既に何かを書類に書き込んでいる。
そして笑みを浮かべその書類を手渡してきたのだった
「……これで検査は全て終わりだ。これを持って最初に来た受付に行け。そこで問題がなければ竜騎士協会に登録されるはずだ。全く、お前はよい竜と契約できたな! これでもう誰もお前のことを落ちこぼれとは言わないだろう。あれを見てみろ」
リーンベルは親指を立て後ろを指差すと、そこには俺の陰口を言っていた卒業生達が怯えたようにこちらを見ている姿があった。
おぉぉぉぉ。何か化け物でも見たような目をしてるじゃないか……。
まぁ、分からないでもない。
「お前もこいつと契約してくれたこと、礼を言うぞ」
「うむ! 人間、お主良い奴だったのだな!! 私はてっきりムカつく奴だと思っていたぞ!」
ガハハハハ!!! リーンベルは俺の頭の上に座るヴェストニアの言葉に大きく笑い声を上げた。
「よく誤解されるのだが、私はただ才能の無い奴が嫌いなだけだ。だがお前の様な奴は好きだぞ!?」
「うむうむ!! 私もお主が気に入ったぞ! 特別に部下にしてやろうではないか!!!」
さらに大きくなった二人の笑い声は、しばらくの間今にも崩れそうな射撃場の中に響き渡るのだった。
「それでは卒業生の皆さんは集まってくださーい!!」
日も傾きかけてきたころ、アリアが受付の前に現れると、卒業生達がその前へと集まってくる。
「ふぅ。なんか緊張してきたな……」
「そうか?? 私は何も思わんがな……」
ヴェストニアは相変わらず俺の頭の上で鼻に指を入れながら答える。
くそ、そりゃお前は興味ないかも知れないけど、俺にとっては幼少期からの夢なんだ!!
緊張して当然だろ……。
手を合わせて祈る俺の周りにいる卒業生達はいつものように陰口を話し始めるが、その言葉はこれまでとは全く違う内容のものだった。
「おい。聞いたか?? 俺のやつ、あのリーンベル先生が驚くくらいの結果だったらしいぞ」
「俺は飛行訓練で最高評価だったって聞いたけど……」
「私、同じ組だったけど見たことも無いような魔法だったわ!」
しかし陰口の内容が変わろうと、俺はいつものように全く気にしていない。
それよりも合格を願い手を合わせ結果発表に頭がいっぱいなのだ。
「卒業生の諸君!! 本日はご苦労であった!!! 私はこの竜騎士学園学園長 オースティン・アリスターである!!!」
ザワザワッ!! しばらく時間が経過した後卒業生達の前に現れた大男の姿に驚きの声が上がっていく。
「何じゃ? あいつ何かすごい奴なのか??」
「ああ! あれは1級竜騎士、オースティン学園長だ。1級竜騎士は王国にも10人しかいない、まさに選ばれた竜騎士だよ!!」
「そ、そうなのか……」
俺のあまりの興奮ぶりにヴェストニアは若干の温度差を感じながらも目の前のオースティンに視線を移していく。
すごい、あのオースティン学園長自ら来てくれるなんて!
「今回の卒業生21名の内、新たに竜騎士となったのは21名! つまり全員だ!!」
そう言うオースティンが両手を広げると、卒業生達の興奮は絶頂に達していく。
それはオースティンの次の言葉でさらに爆発した。
「しかし!! 本来なら10級からとなる竜騎士だが、今回はそうでない者がいる。マルティオ・エステニーゼ! 前へ!!」
おぉぉぉぉぉぉ!!! 名前を呼ばれたマルティオは卒業生達の声を浴びながら両手を上げ前に進んでいく。
「彼は本当に素晴らしいことに、8級竜騎士からの出発となる! これは100年ぶりの事だ!!」
「お褒めにあずかり光栄です学園長」
マルティオが頭を下げると、卒業生達かあらは割れんばかりの拍手が送られた。
だがその次のオースティン学園長の言葉に、マルティオの顔色が曇った
「……しかし!! 今回は更に上、7級竜騎士の任命された者がいる!!」
「何だって!?」
「ウィルバルト・アストリア! 前へ!!」
「は、はい!!」
嘘だろおい、俺が7級竜騎士だって?
俺が呼ばれ、先ほどとは打って変わり卒業生達からは騒めきが巻き起こった。
その中でもマルティオはオースティン学園長へと詰め寄る。
「な、なんでこいつが俺よりも上なんですか!! 納得いきません!!!」
「何を言うか。彼は全ての検査項目で学園の最高記録を全て塗り替えた。本当は6級からでもよかったのだが規定上7級という形になったのだ」
「そ、そんな……」
マルティオはオースティンの言葉に納得がいかないのか前に進んでくる俺を睨みつけるが、俺は気にせずオースティンの前に進み出た。
「君の様な生徒がいるとは知らなかった。これからさらに上に進むことを願っているぞ!」
「あ、ありがとうございます!!!」
オースティンが俺の肩に手を置いた後拍手を送ると、卒業生達からも拍手が起き始め、ついにはマルティオ以外のすべての人達が拍手を送るのだった。
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