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空を飛べるのか??

 「それでは次の方どうぞ!」

 

 受付の女性の言葉でようやく順番の回ってきた俺は、受付まで進み事前に記載した受付紙を提出する。

 そんな俺に、受付をしている女性が声をかけて来た。

 

 「あら、ウィルバルトさん。無事、ドラゴンとの契約が出来たんですね!! 私、心配してたんですよ?」

 

 「あ、ありがとうございますアリアさん。何とか無事に帰ってこれました!」

 

 俺は受付の妖精族エルフ アリアの言葉に笑みを浮かべながら答えた。

 アリアはいつものように満面の笑みで俺を迎えてくれるが、俺の周りを何度か見渡した後、少し不思議そうに尋ねてくる。


 「……それで、契約したドラゴンはどこです??」


 「えっ?? それならここにいますけど……」

 

 「へっ……??」

 

 俺が頭の上にいるヴェストニアを指差すと、その姿を確認したアリアは驚きのあまり、開いた口が塞がらない様子だった。

 その表情に、ヴェストニアは大きく笑いながら得意げに口を開く。


 「何じゃ、間抜けな顔じゃな! そんなに私の姿に見とれておるのか??」


 「あっ、すみません! えっと、これどうしたらいいのかな。ウィルバルトさん、これはドラゴン……、でいいんですよね??」

 

 ヴェストニアの言葉で気を取り直したアリアは、困ったように俺に尋ねる。


 アリアさん、分かりますよその気持ち。

 こいつ、どう見てもドラゴンに見えないですもんね……。

 よくて大きな鼠みたいですもん。


 「……はい、その通りです」


 「なんじゃ! お主、私がドラゴンに見えないのか? それならいいだろう、証拠をみせてやる!!」

 

 俺がアリアの気持ちを察し、申し訳なさそうに答えていると、頭の上のヴェストニアはそれが癪に障ったのだろう。

 証拠と言わんばかりに口を開くと、その内部が青白く光始めた。


 お、おい! まさかお前炎を吐くつもりじゃないだろうな。

 こんなとこで炎なんか吐いたらただじゃすまないぞ!!


 「お、おい待てヴェスト……」


 俺はヴェストニアのしようとしていることに気が付き、何とかそれを止めようと口を開いたが、その瞬間、ヴェストニアの口から青白い高温の炎が放たれた。

 ……が、その炎は拳大の大きさでゆらゆらと空中を漂った後、アリアの目の前で弱弱しく消えていったのだった。

 

 それを見ていたアリアと俺、そして周りの人々は黙り込み辺りを沈黙が包み込んだが、そのような事はヴェストニアには関係ない。

 ヴェストニアは、自慢げに笑みを浮かべアリアへと話を続けていたのだ。

 

 「ゲフッ……。どうじゃ私の竜炎ドラゴンブレスは!」


 「…す、すごーい! さ、流石はドラゴン、見事な炎でした!!」 


 「ガハハハハッ、そうであろう、そうであろう!!!」

 

 アリアのどう見てもお世辞と言えるその言葉に、ヴェストニアは大きく笑い声を上げる。

 その姿にアリアは急いで俺が提出した書類に何かを記入し、そこへ魔法印を力強く押した。


 おいヴェストニア、お前気を使われてるんだぞ??

 まぁ、機嫌もいいみたいだし、今は黙っておくとしよう。

 周りの目も痛いし、早くここから離れたい。


 「それじゃあウィルバルトさん、こちらを持って次の飛行場へと向かってくれますか??」


 「分かりました! 何か色々とすみませんでした」


 「いえいえ! 検査、頑張ってくださいね!! では、次の方どうぞ!!」

 

 アリアは申し訳そうに答える俺に、笑みを浮かべ答えると、俺の後ろに並ぶ次の卒業生を受付に呼んでいくのだった。

 

 受付を無事終えた俺達は、書類に記載されてる最初の検査場となる飛行場へと向かうため、竜騎士学園ナイトアカデミーの南側へと向かい始める。

 

 「……えっと、次は飛行場で飛行診断か」


 「何じゃそれは??」


 「えっとだな、ドラゴンと契約したと言っても、本当に心を通わせていないとドラゴンの背に乗ることは出来ないんだ。飛行は竜騎士ドラゴンナイトには必須の能力スキルだからな、その判断をするんだろうな」

 

 俺は手に持つ書類を見つめながら、頭の上のヴェストニアに答える。

 だが次のヴェストニアの突然の言葉に、ウィルバルトは足元にあった段差から右足を滑らせ危うく転びそうになる。


 「なるほどな。それよりもウィルバルト! 先ほどのエルフとはどういう関係なんじゃ??」


 「うっ……!! き、急に何だよ!? アリアさんはただ、よく授業の相談に乗ってもらってただけだ。エルフは魔法に長けているからな」


 「ほーう……。てっきり私は好き合っておるのかと思ったがな。あのエルフのお前を見る目、他の者を見るときとは明らかに違っておった」


 は、はぁ?? アリアさんが俺を好きだって??

 そんなことがある訳……、ぬぁ!!

 

 ヴェストニアの言葉に動揺した俺は、更に次の段差で足を滑らせ側にあった柵に腹部を強打する。

 だがその痛みも、ヴェストニアの放った言葉が気になりさほど気にはならない。


 「痛ててて。お、おいヴェストニア! それは本当か?!」


 「ガハハハハッ、私の目に間違いはない……、はずだがお前が気づいていないとすれば私の勘違いかも知れんな」

 

 ヴェストニアは俺の頭の上で胡坐をくみ大きく笑いながら答える。


 なんだよそれ。つい喜んでしまったじゃないか……!

 でもそうだよな、アリアさんは可愛いし、おっぱいもでか……、いやこれはいいか。

 まぁ、竜騎士学園アカデミー一の人気者、俺なんかに好意を抱くわけないよな……。


 落ち込むように、大きくため息をつく俺にヴェストニアは笑みを浮かべると、更に大きく笑い声を上げた。

 その姿は、更に俺の心の傷を抉るのに十分だった。

 

 「そんなに笑うなよな。はぁ……、何か無駄に傷ついた気がする」


 「ガハハハハハッ、人間というのは面白いな! 短い命でこうして異性と交配し子孫を残すためとはいえ、面倒な事をするものだ」


 「交配言うな。このくそトカゲ! それよりもほら、飛行場が見えて来たぞ?」


 「トカゲだと? 何を失礼な。だがまぁいい、今回だけは大目に見てやるわ! ……ほう、あれが飛行場か、既に多くの者達がいるようだな」


 「ああ。ほら俺達も急ぐぞ!」


 よし、今だ!!


 俺の言葉に前方に見えた飛行場を見ようと立ち上がったヴェストニア。

 その瞬間、俺はタイミングを見計らって勢いよく走り出し、その反動でヴェストニアは頭の上から転げ落ちた。


 地面に落ちたヴェストには、まるでボールのように跳ね上がり、強打した後頭部を押えのたうち回っていたが、そんなことは俺には関係なかった。


 「ぐふっ!! ま、待つのだウィルバルト! 私を置いていくな!!」


 「さっき俺を笑った仕返しだ! そこからは自分で付いてくるんだな!!」


 「待つのだウィルバルトー! もうしないからー!!」 

 

 俺は声を上げるヴェストニアに振り返るが笑みを浮かべ答えるだけでその足を止めることは無い。

 そのためヴェストニアは、何とか立ち上がるが、その小さな足で俺の後を懸命に追いかけるのだった。












 「はい、次の者!!」

 

 俺達が到着した飛行場では、竜騎士学園ナイトアカデミーの教師、3級 竜騎士ドラゴンナイトのルディアス・ミルリアが卒業生達の前に立ち、卒業生達の飛行状況を書類に書き込んでいく。


 「……それだけ飛べれば問題ないだろう。合格だ」


 「あ、ありがとうございます!! やったわね、赤尾竜レッドテイルドラゴン!!」

 

 ガァァァァァ!! 飛行を終えルディアスの合格の言葉を聞き喜びの声を上げる卒業生の言葉で、彼女が乗っている赤尾竜レッドテイルドラゴンが声を上げる。

 その姿にルディアスは顔色一つ変えることは無かったが、内心では今年の卒業生達の出来に満足していた。


 今年の卒業生達は中々優秀な者が多いな。

 ここまで飛行できなかった者が一人もいない……。

 それどころか少し前に来たマルティオなどは既に10級 竜騎士ドラゴンナイトの域を超えていた。

 流石は竜騎士学園ナイトアカデミー始まって以来の天才だったな。


 「では次の者、前へ!!」

 

 ルディアスは目の前に並ぶ卒業生に向かい声を上げると次の卒業生のデータの乗っている書類に目を向ける。


 さて、次の者は……。


 「ウィルバルト・アストリアです! お願いします!!」


 ……こいつか! 確か座学以外はいつも最下位。

 マルティオとは逆の竜騎士学園ナイトアカデミー始まって以来の落ちこぼれ……。

 無事血の契約を結ん結ぶことが出来たとは聞いていたが、本当だったとは……。


 ルディアスは書類に書かれているデータに小さくため息を付くが、すぐに気を取り直し咳ばらいをすると、目の前のウィルバルトに視線を向ける。


 「ではウィルバルト! 早速、お前の契約したドラゴンを呼ぶのだ」


 「わ、分かりました! おい、ヴェスト……、あれ? あいつどこ行った???」


 「ウィ、ウィルバルト、待ってくれ……」

 

 しばらくすると、ウィルバルトの元にヴェストニアが息を切らしながら到着。

 ただ既にヴェストニアはその体力の殆どを失っている様子であり、俺の足元へと勢いよく倒れ込む有様だった。


 その姿に、流石のルディアスも呆気に取られている様子である。


 「それがお前の契約したドラゴンなのか??」


 「そ、そうですが……」


 「そ、そうか。珍妙なドラゴンがこの世にいるのだな」

 

 「はぁ、はぁ……。何じゃ人間! この私がドラゴンに見えぬと申すのか!?」


 だが、2人の会話を聞いていたヴェストニアは、何とか息を整えるとゆっくりと立ち上がり、前方のルディアスへと詰め寄る。

 しかしヴェストニアのその言葉言葉を聞いた他の卒業生達からは、大きく笑い声を上がるのだった。


 「まじかよ、あれがドラゴン?! ありえないだろ!!!」


 「あんなドラゴン見たことないわ!! スライムの方が少しはマシなんじゃない??」


 笑い声を上げる卒業生達。

 その光景にルディアスも大きくため息をつきながらもウィルバルトへと尋ねる。


 「いいだろう。だがここは飛行診断の場だぞ? そいつはお前を乗せて空を飛べるのか? どう見ても無理そうだが」


 「何を!? こんな小僧位簡単だ!! おいウィルバルト、早く私の背に乗れ!!」


 「え、大丈夫か? 流石にそれは無理なんじゃ……」


 「いいから乗れい!!」


 本当に大丈夫なのか……?

 で、でも一応こいつは破壊竜だし、もしかしたらこの体でも……

 

 ルディアスの言葉に、顔を紅潮さながら声を上げたヴェストニア。

 俺もそんなヴェストニアの言葉に不安を感じながらもその背に跨った、が……。


 「むぎゅう」

 

 ……やっぱり無理じゃないか!!!

 

 言葉通り俺はヴェストニアに跨った。

 だがその重みで全く身動きが取れず、ただ足をバタバタさせるしかないヴェストニアの姿に、周りの卒業生達は更に笑い声を上げた。


 ルディアスも俺達の姿に、頭を押さえ呆れながら書類に何かを書き込もうとペンを取る。

 

 「はぁ……。もういいぞ。次の者!!」


 「ま、待て! 飛行と言うのはどういう形であれ空を飛べばいいのか??」


 「……ん? ああ、それならいいだろう」


 「よし! それなら手はある。ウィルバルト、行くぞ!!」

 

 俺の下から抜け出したヴェストニアはルディアスの答えに、笑みを浮かべる。 

 そして、ヴェストニアは急ぎ俺の元へと駆け寄りその背にしがみつくと、背中の小さな翼を元の大きさまで巨大化させたのだった。


 「えっ?!」


 「行くぞ、ウィルバルト!!!」


 「い、いや、ちょっと待って……、あぁぁぁぁ!!!!」

 

 だが俺の制止も関係なく、ヴェストニアは一気に空へと舞い上がった。


 ひぃぃぃぃぃ!!!

 ……あれ?? これ、慣れれば案外悪くないな。

 いや、てかこれどうなってるんだ???


 「おい、ヴェストニア! 空を飛べるんなら最初から教えろよな!」


 「ハハハハハ! すまんな! こうして一部だけ巨大化させるだけなら何とかこの姿を保っていられるのだ。まぁ、確証はなかったが、上手くいってよかったわ!!」

 

 いや、よかったじゃねーよ!!

 一言位言ってから飛ぶもんだろ?? 死ぬかと思ったわ!!

 

俺の背中にしがみつくヴェストニアは、しばらく空を舞った後、ルディアス達のいる飛行場へと戻っていく。


 地上に到着すると、ヴェストニアは翼を戻し、再び俺の頭の上へと上る。

 だが並みのドラゴンでは出せないほどの高速で空を飛行した俺達に、先ほどまで笑い声を上げていた卒業生達は開いた口が塞がらない様子だった。

 それはウィルバルトの目の前にいるルディアスも同様である。


 「どうでした、先生?!」


 「……あ、あぁ。これなら、も、申し分ない。いや、十分すぎるくらいだ」

 

 俺の言葉でようやく気を取り直したルディアスは、止まっていたペンを持つ手を動かし始め書類に何かを書き込むと、それを俺に手渡して来た。

 それは飛行検査合格を示す彼の署名であり、その上からは受付で押された物とは違う魔法院が押されている。

 

 「次は魔法診断だ。闘技場へと向かうがいい」


 「はい! では失礼します。ありがとうございました、ルディアス先生」


 ルディアスと卒業生達は、笑みを浮かべながら軽い足取りでその場から去るウィルバルトの後姿から、しばらくの間、目を離すことが出来なかったのだった。

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