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先生との再会だが・・・。

 「はぁ、はぁ、はぁ、やっと帰ってこれた……」

 

 契約を無事終えた俺が山頂からようやくブリドア山脈の麓に到着した頃には、既に2時間以上が経過しており、陽は落ちかけ辺りは暗くなり始めていた。

 そして息を切らす俺の肩にはヴェストニアが捕まっており、笑みを浮かべ話しかけてくる。


 「いやぁ、すまんな。この姿ではお前を乗せて飛ぶことも出来んのだ。いや、全く残念だ!」


 くそ……、こいつこうなるの分かってたな?

 てかその顔止めろ、ほんと腹立つ顔だな!!


 「ま、まぁそう怒った顔をするな。それにドラゴンと契約した者はその魔力を使うことが出来るのだぞ?? 現に、あれだけの距離を走ってきた割にはさほど疲れてはいないだろう?」

 

 俺の目に自分に対する怒りを感じ取ったヴェストニアは、機嫌を取るかのように言葉を続けた。

 俺もその言葉で、ようやく自分の体に起こっている変化に気が付いたのだ。


 「そう言えばもう息も切れてないし、体も痛くないな」


 確かに体力も魔力も学園で最下位だった俺があれだけ走ってどこも痛めていないなんておかしい。

 これがドラゴンと契約を結ぶってことなのか!!


 俺は体を動きを確かめながら、その日初めてヴェストニアと契約を結んだことを喜んだ。

 

 しばらくするとそんな俺達の元へ空から大きな影が近づいてくると、その背から一人の男性が地上に下り立ちこちらへと近づいてくる。


 「……おい! ウィルバルトじゃないか!!」


 「先生!!」


 「良かった、無事だったんだなウィルバルト! もうダメかと思っていたぞ」

 

 その男性は俺に近寄ると、その姿に安堵した表情を浮かべる。


 この人は俺のクラスの担任、3級 竜騎士ドラゴンナイトのアーセム先生だ。

 落ちこぼれで他の教師からも見放されている俺を唯一気にかけてくれている人物でもある。


 そのアーセム先生は、辺りにドラゴンがいないことに気が付くと、俺の左肩へ優しく手を添えた。

 

 「無事なのは良かったが、やはり契約はだめだったか……。まぁ今回は残念だったが、また機会はある。それまでじっくりと力を蓄ればいいさ」


 「あ、違うんです。実は俺もドラゴンとの契約に成功して……」


 「な、何だと?! それは本当か?! 何でそれを早く言わないんだ!!」

 

 アーセム先生は俺の言葉に両肩を掴み口調を強める。

 だが再度辺りを見渡すも、やはり肝心のドラゴンが見当たらないため不思議そうに俺に尋ねた。


 「しかしそのドラゴンの姿が見当たらないないが、どこにいるんだ??」


 「えっと、それならここに」

 

 俺は苦笑いを浮かべながらも自身の右肩をゆっくりと指差す。

 促されるまま、そこへ視線を移したアーセム先生の先には笑みを浮かべたヴェストニアが姿を現したのだった。


 「やぁ、初めまして人間」


 「……えっとこれはドラゴン、なのか?」


 分かる、分かりますよ先生……。

 俺も最初はそうでしたから。


 ヴェストニアの姿を目の当たりにしたアーセム先生は、言葉が出てこないようだった。

 だが、自分を心配そうに見つめる俺の視線に気づいたアーセム先生しばらくして首を左右に振り気を取り直すと、作り笑いを浮かべ答える。 


 「い、いや、でもよかった! これでお前も竜騎士ドラゴンナイトの仲間入りだ!! ようやく夢が敵ったじゃないか! いやぁー、よかった!!!」


 「あ、ありがとうございます。 ……でも実際、こんな小さなドラゴンでも竜騎士ドラゴンナイト年て認めてもらえるのでしょうか??」


 「うーん、そうだなぁ」

 

 しばらくして俺の言葉で落ち着きを取り戻したアーセム先生は口に手を当て考え込んだ。 

 何しろ、今のヴェストニアの様なドラゴンは過去に例がないのだ。


 だがアーセム先生は、何度か頷いた後笑みを浮かべ口を開いた。


 「竜騎士ドラゴンナイトの規定ではドラゴンの種類は関係なかったはずだ。どんなドラゴンであろうと契約を結んだ人間は竜騎士ドラゴンナイトとして登録されるとあったはず」


 「そ、それじゃあ……」


 「ああ! 検査はあるが、それを乗り越えればお前は晴れて竜騎士ドラゴンナイトの仲間入りだ」


 「よっしゃぁぁぁぁ!!!」

 

 俺はアーセム先生の言葉に片手を天に伸ばし喜びを爆発させた。

 その姿に、アーセム先生はどこか嬉しそうな表情を浮かべる。

 しかしすぐに俺の肩に掴まっているヴェストニアへと視線を移すのだった。


────────────────────────────────────



 あのウィルバルトがドラゴンと契約できるとは。

 でもウィルバルトは才能はないが人一倍努力はしてきていたからな……。

 無事血の契約を結ぶことが出来てよかった。

 だが……、あんなドラゴンは実物はおろか文献でも見たことがない。

 というよりあれは本当にドラゴンなのか?? 

 二足歩行のドラゴンなんて聞いたことがないぞ??

 少し調べてみるか……。


 (……おい、お前の力少し借りるぞ)

 

 【別にいいが、どうしたんだ??】

 

 ヴェストニアへの事をしばらく考えた後、アーセムは後ろにいる黒爪竜ブラックテイルドラゴンと思念によってウィルバルト達に気づかれないように会話を始める。


 (いや、少し気になることがあるんだ)


 【まぁそう言うことなら止めはしないが】


 (ありがとう。恩に着るよ……)

  

 魔力探知マジック・ディテクション!!

 背後の自分のドラゴンとの会話を終えたアーセムはが大きく息を吸った後に目を開けると、そこにはそれまでと違い青い瞳が現れる。


 特殊能力ドラゴンスキル 魔力探知マジック・ディテクション

 これは黒爪竜ブラックテイルドラゴン固有の能力であり、相手の魔力量、隠された能力など全ての情報を見ることが出来る。

 元はブリドア山脈内ではさほど高レベルでない黒爪竜ブラックテイルドラゴンが向かってくるドラゴンの正体をいち早く察知し、生き残るために身に着けた能力であるが、便利な能力であるため竜騎士ドラゴンナイト見習いの中で黒爪竜ブラックテイルドラゴンが多く選ばれる理由の一つとなっている。

 


 ど、どういうことだ!!

 アーセムはしばらくヴェストニアに魔力探知マジック・ディテクションを使用するが、何も盗み見ることが出来なかった。

 いや、それこそが考えられないことなのである。


 「これは一体……、ッ!!!」

 

 何も見えないなんてことはあり得ない!

 一体どういうことなんだ?!

 

 目の前の光景に、更に深層を覗こうとしたアーセム。

 だが次の瞬間、ヴェストニアの中にとてつもない【何か】を感じたため、急ぎ魔力探知マジック・ディテクションを解除したのだった。


 「はぁ、はぁ、さっきのは一体……」


 あれほどの威圧感となると……、まさかあの伝説のヴェストニア?

 いや、まさかな、そんなことはあるはずがない……。破壊竜を使役する者なんているはずがないんだからな。

 ふぅ、俺も少し疲れているのかもしれない。


 アーセムは先ほど感じたとてつもない何かによって大量に噴き出した汗をぬぐい息を整えると、未だはしゃぎ続けているウィルバルトへ口を開いた。


 「おいウィルバルト! そろそろ竜騎士学園アカデミーに戻るぞ! 早くしないと死亡扱いになるからな。 特別に黒尾竜ブラックテイルドラゴンに乗せてやるから早く行くぞ」

 

 「えぇぇ! いいんですか?! それならお言葉に甘えて!!」

 

 ドラゴンの背に乗れるなんて!!


 ウィルバルトがその言葉に甘え、急いでアーセム先生の乗った黒爪竜ブラックテイルドラゴンに同じように飛び乗ると、黒爪竜ブラックテイルドラゴンは空へと舞い上がり、竜騎士学園アカデミーのある方向へととてつもない速さで飛んでいくのだった。


────────────────────────────────────












 竜騎士学園アカデミー

 ここはカンサーレ王国にある唯一の竜騎士ドラゴンナイト育成機関である。

 入学後一年目はドラゴンの高速移動に耐えうる体を作るための基礎体力作りと初歩的な魔法を覚ることから始まり、2~3年目は高等魔法の習得、実践を交えた魔法の実技試験などが行われ、それらを経て行われる最終試験の得点順にドラゴンとの契約を行う権利が与えられるのである。

 

 俺は座学以外は壊滅的な点数であったことから、竜騎士学園アカデミー始まって以来の落ちこぼれと言われている。

 しかしその俺が災悪と恐れられる破壊竜ヴェストニアと血の契約を結んだことを誰も知る由もなかった。




 バサッ、バサッ……。。

 既に月上りが照らす竜騎士学園アカデミーの上空に現れた黒爪竜ブラックテイルドラゴンの背から俺は地面へと降り立つ。


 「先生、ありがとうございました!!」


 「ああ、今日は早く休むんだぞ! それと早く管理課でドラゴンの登録を済ませるのも忘れないように!!」


 アーセム先生は笑みを浮かべながら俺に答えると、再び空へと舞い上がっていった。

 その姿を見つめていた俺だったが、肩に掴まっているヴェストニアの言葉で気を取り直す。


 「それでこれからどうするんじゃ??」


 「あっ、そうだな。まずはお前の登録をしないとな」


 「ほう、登録とはいろいろと面倒くさいじゃな、竜騎士ドラゴンナイトになるというのは。……ではことが済んだら起こしてくれ。私はしばらく眠ることにする」

 

 面倒くさいってお前なぁ……、ってもう眠っているし。

 

 大きく欠伸をするヴェストニア。

 そのヴェストニアの言葉に応えようと俺が右肩へと視線を移した時には、既にヴェストニアは俺の頭の上に移動し体を丸め眠りについていたのだった。


 「はぁ……、器用な奴だな……。こんな無防備に寝るなんて、こいつ本当にあの破壊竜ヴェストニアなのか?? 俺にはもう信じられなくなってきたんだが……」

 

 俺は、頭の上で寝息を立てているヴェストニアの姿にに更に大きくため息をつくと、管理課のある南棟へと歩き始めた。

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