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生還、そして次は・・?

間が空いてしまい申し訳ありません(;^ω^)

 次の日。

 俺達は魔迷路ダンジョンを朝早くに出発し、既に街のすぐ近くの空まで戻ってきていた。

 メルディとビルードは昨夜の出来事には触れず、遠くに見えて来た街の姿に声を上げるのだった。


 「やっと街が見えて来たな」


 「そうね! でも私達がオークを倒したって報告したら、全員昇級するんじゃない??」


 「おいおい、オークを倒したのはウィルバルトだろ?? 俺達はあまり役に立てなかったじゃないか。」


 「そんなことないわよ! ねぇ、ウィルバルト??」


 メルディはドゥードを俺の隣まで移動させると笑みを浮かべながら尋ねる。


 「当たり前だよ! 2人の協力がなければオークは倒せなかったし、俺も魔迷路ダンジョンで倒れたまま死んでたかもしれない……。オーク討伐は3人の功績だ!」


 「ほら見なさい! 全く、ビル―トもウィルバルトを見習ってもう少し素直になりなさい?」


 「なんだとこの野郎! お前こそあまり調子に乗るなよ?!」


 ギャア、ギャア!! 2人はいつものように言い争いを始めると、ついには俺の周りを飛びまわり始める。

 そんな2人の姿に、俺の背にいるヴェストニアも大きく笑い声を上げた。


 「ガハハハハッ! この2人は相変わらずだな!!!」


 「ハハハハッ! ああ、そうだな」 


 「私は長く生きてきたが、あの2人の様に私の存在をすんなりと受け入れることが出来る者はそうはおらん。ウィルバルトよ。ビル―トとメルディを大切にするのだぞ? これは私からの助言だ!」


 ああ、分かってるよヴェストニア。

 あの2人は皆が好機の目、疑惑の目、軽蔑の目……、そんな風に見られている俺に手を差しのべてくれた。

 俺にはもったいないくらいの友人だ。ただ……。


 「……お前に言われると、少し腹が立つのは何でだろう?」


 「何?! お前少し可愛げが無くなってきたのではないか??」


 「ハハハハッ、そうかもしれないな。……ほら、街に到着したぞ!」

 

 シュゥゥゥゥ……。俺の言葉を受け、ヴェストニアは何か不満を口にしながらも少しずつ高度を下げ始め街へと降りていく。

 ただ、メルディとビルードがいなくなった俺に気づき急いで街に降り立つのはもう少し先の事であった。













 俺達が暮らす街 ミストリア市。

 ここは竜騎士学園ナイトアカデミーを有する街であり、そのため竜騎士を相手とした武具屋や魔法薬店などが多くある。 

 そのため王国から税の免除などの優遇措置もされており、その賑わいは王都と遜色ない程であった。


 その中にある竜騎士ドラゴンナイト協会支部では戻ってきた俺、メルディ、ビル―トの3人が初の魔迷路ダンジョン探索、その上オーク2体相手に生きて帰ってきたという話題で持ちきりだった。


 「おい、聞いたか?? 何でも10級の奴と7級の奴が魔迷路ダンジョンでオーク2体を相手に生きて帰ってきたらしいぞ??」


 「まじかよ!? オーク2体っていうと5級の竜騎士ドラゴンナイトでようやく勝てる相手じゃないか?? それを駆け出しの奴らが倒したのか?? 一体どんな奴らなんだ??」


 「ほら、この前から有名な奴だよ! あの竜騎士学園ナイトアカデミーの魔力検査で過去最高点記録した……」


 「あいつか……。確かウィルバルト・アストリア……」


 「そいつならあそこにいるぜ?」


 男達はそう話し終えると、酒が入ったグラスを口に運びながら奥の席で食事をとっている俺、ビル―ト、メルディへと視線を移すのだった。

 他の竜騎士達も噂を聞き俺達に視線を向けているが、俺達3人はまったく気にしていない様子で食事を続けていた。

 あくまで気にしていない様子を装ってだけど。


 「それにしてもやっぱり俺達の話題で持ち切りだな」


 「そりゃ、オーク2体を相手に生きて帰ってきたんですもの、話題にもなるでしょうよ。すみませーん! お酒追加で!!」


 「はぁ? お前まだ飲むのかよ!! 相変わらずの酒豪っぷりだな……」


 「うるさいわね。今日はお金もあるもの! 浴びるほど飲んでやるわ!!」


 ドンッ!! メルディはグラスに入った酒を一気に口の中に流し込むと、呆れるビル―トに満面の笑みを浮かべるのだった。

 

 確かにメルディは全く酔わないな……。もう酒樽一つくらい飲んでるんじゃないか??

 いくら魔迷路ダンジョンで手に入れた財宝があるからって、あれじゃあすぐ無くなりそうだ。


 俺はいつものように言い争いを続ける2人に少し呆れながらも自分は黙々と食事を続けていく。

 すると、メルディが注文したお酒の入ったグラスを持っていつもアリアが3人の元へとやってきた。


 「どうぞ、お待たせいたしました!」


 「ありがと……、あれ? なんでアリアさんが??」

 

 「今日は本当は非番だったんですけど、俺さん達が帰ってきたと聞いて無事生還されたお祝いをと思いまして!」


 はぁ~、アリアさんはいつ見ても可愛いなぁ。

 本当にこれだけで生きて帰ってこれた価値があるよ……。


 アリアはグラスをメルディの前に置くと、空いていた俺の隣の席に座った。

 だが、アリアとの再会を喜ぶ俺とは正反対に机の上で食事をとるヴェストニアはアリアの姿に何故か身体が固まっている。





 ──────────────────────────────────── 



 またしても現れたなこの娘……! 俺のアホはこの娘の本性には気づいていないようだが、私はそうはいかんぞ!! ウィルバルトの事はこのヴェストニア様が守ってやる!! 


 キィィィン!! ヴェストニアは急ぎ食事を口の中にかき込むと、心眼マインド・アイを発動。

 俺を見つめるアリアの心の中を覗くのだった。


 (ああ、ウィルバルトさん……、今日も食べちゃいたいくらい可愛い……)

 (このまま連れ帰って、エルフの里の大樹で一生一緒にいたいわぁ……)


 ゾクッ!!! ヴェストニアはその瞬間、背中に凄まじい寒気が走り心眼マインド・アイを解除。

 二度とアリアの心の中を覗くまいと誓ったのであった。


 すまんウィルバルト!! この娘、私の手に負えるものではなかった……。

 あとはお前で何とかするのだな!!


──────────────────────────────






 「あ、そういえばアリアさん聞きたいことがあるのですが……。」


 「な、何でしょうか?!?!」


 そんなヴェストニアの気持ちなど知る由もない俺は、いつものようにアリアに話しかける。

 アリアも俺に話しかけられたことがよほど嬉しかったのか協会支部内に響き渡るほど大きな声で答えたため、一瞬周りにいた者達が一斉に話をやめ俺達に注目するのであった。


 「あ、いえ大したことではないのですが……。これを武器にしたいので、どこか腕のいい武具屋を紹介してほしいんです。確か協会の仕事の中には武具屋の紹介もありましたよね??」


 「あ、なるほどそう言うことですか。うーん、これはもしかして魔迷路ダンジョンで倒したというオークの牙ですか???」


 「そうです! 初めて魔迷路ダンジョンで手に入れた物なので、記念にこれで魔法武器を作りたいのですが……」


 「オークの牙ですか……」


 俺の言葉に、アリアは珍しく考え込む。 

 魔法武器を作るとなると、通常の武器を作るよりも数倍、下手をすれば数十倍の値がかかる。

 そのためそれだけのお金を俺が持っているとは思えず、武具屋の紹介をためらうのも理解できた。

 しかしアリアは俺の隣にいるヴェストニア、その頭につけられている宝石を見つたようで、たちまち表情を和らげ俺の答えるのだった。


 「分かりました! ではこの街で一番の武具屋を紹介いたします! 魔法武器を製作するには莫大な費用が掛かるのですが、俺さんのドラゴンが身に着けてらっしゃるその宝石があれば大丈夫でしょう!」


 「な、なに?! これはだめだ!! これは魔迷路ダンジョンで苦労して私が手に入れたもの! 宝石の殆どは俺に渡したではないか!! これ以上このか弱いドラゴンを苛めて楽しいのか?!」


 ヴェストニアは頭の宝石を両手で隠すと、アリアに声を荒げた。


 「苦労って……。お前、俺そっちのけで壁から出てきた宝石を拾ってただけじゃないか」


 「そうよ! 私より真っ先に宝石に向かっていったくせに」


 「う、うるさいぞビル―ト、メルディ!! そんなことは今言わなくても……、はっ!!」

 

 そこでヴェストニアは、自分の後ろから刺すような視線を感じ恐る恐る振り返る。

 すると笑顔ではあるが、目は笑っていない俺とアリアが徐々にヴェストニアへと顔を近づけていく。


 「へぇ……、お前そんな薄情なことをしてたのか……」


 「ま、待てウィルバルト……。話せば分かるぞ……」


 「ドラゴンさん……? あなたウィルバルトさんよりも宝石が大事だったのですか??」


 「そ、そのような事は断じてないぞ?! 娘も少し落ち着くのだ……」


 はぁ……。俺は焦りを隠せないヴェストニアの姿に大きく息を吐くも、すぐにいつもの表情に戻しアリアへと口を開いた。


 「まぁ、今回は許すとしましょうかアリアさん」


 「俺さんがそう仰るのなら、私はこれ以上何も言いません」


 「か、かたじけない!!」


 「でも、その宝石は後で没収だからな」


 ヴェストニアは俺のその言葉が本当にショックだったのか、顔を真っ青にし机の上にまるで棒のように倒れ込むのだった。


 「それでアリアさん。その武具屋というのは一体何という方がされているのですか??」


 「えっと、確かですね……」

 

 バラバラッ……。アリアはいつもいる受付に戻ると一冊の本を取り出し、それを俺の元で広げると、何枚もページをめくり、ある場所を指差し答えるのだった。


 「あった、これだ……。えっと場所は街の南のはずれ。店主の名前は……、ギューリウス・マクワイア、ですね」


 『なぁにぃぃぃぃ???』


 その瞬間、ビル―トとメルディは同時に声を上げたため、俺は驚きのあまり椅子ごと後ろへと転げてしまうのであった。


 

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