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初めてのパーティー!

 「さて、今日は何の依頼を受けようかな……。」

 

 初任務から数日後、俺の姿は再び竜騎士ドラゴンナイト協会支部にあり、リアの提示した依頼書に目を通していた。


 前回の依頼での報酬は、結局父さんと母さん達にプレゼントを送ったら殆どなくなちゃったからな……。

 いや、流石に金貨2枚分の爆買いはおかしかったかもしれない。

 恐るべし、初依頼完了時の高揚感!!


 「どうしました? ウィルバルトさん」


 「あ、いや、なんでもないです。それより今回はあまり依頼がないんですね」


 大鼠の巣の駆除、魔鉱石の採掘……。どれも報酬は金貨1枚か。


 「そうですねー。近頃は冒険者さん達の数もかなり増えてますし、依頼は冒険者組合ギルドの方に流れてるんです。まぁ、竜騎士ドラゴンナイトの仕事がないのは嬉しいことではあるんですけどね」


 アリアは苦笑いを浮かべながら答えると、依頼書の中から再び俺の階級でも受けれそうな依頼書を探し始めた。


 確かにそうなんだけどさ……。

 竜騎士ドラゴンナイトに依頼がないのは平和な証拠、か。


 「ねぇねぇ。受ける依頼がないなら、私達と一緒に魔迷路ダンジョンに行かない??」

 

 俺が突然聞こえたその声に振り返ると、わずかに見覚えがある背の高い金髪の男性と、赤い髪が腰まであるのが印象的な女性の2人ががこちらを見つめていた。

 2人の顔をしばらく見つめた後、俺はその2人の事をようやく思い出す。


 この2人は俺と同じ今期の卒業生だったはず……。 確かビル―ト・フリンガーとメルディ・ホーストだったっけ?

 何度か授業で顔を見たことがある。

 それにこの2人は俺の事を悪く言ったことはなかったな。


 「……魔迷路ダンジョン? それって俺でも受けれるのか??」


 「ハハハハハ! 何? あんた授業はいつも真面目に聞いてたくせにそこは知らないんだ。ねぇ、ビルードから説明してあげなよ!」


 「仕方ないな……」


 ガリ勉で悪かったな。


 メルディは大きく笑い声を上げると、隣の男性 ビル―トに視線を移す。

 その言葉でビルードも俺に視線を向けると、面倒くさそうに頭を掻きながら説明を始めた。


 「いいか? 魔迷路ダンジョンってのはこの世界に古くからある魔族の発生源みたいなもんだ。冒険者達もレベルを上げるため何人も潜っているが、何しろそこには高レベルな魔族もいる。戻ってこれるのは一握りだけ。だから俺達竜騎士ドラゴンナイトにはその救出と、魔迷路ダンジョンの謎を探る任務を与えられているんだ」


 「そういうこと。 しかも魔迷路ダンジョンは狭いから、そこに入れるのは小型のドラゴンと契約しているか、1人でもドラゴンと渡り合える力を持つ第2級以上の竜騎士ドラゴンナイト位なの!」


 なるほど。つまり俺とヴェストニアにはうってつけの任務ってわけだ。

 あれでもそれなら……。


 2人の話を聞き終えた俺は再びアリアに視線を移す。

 アリアもその意図をくみ取り、俺に口を開いた。


 「すみません。魔迷路ダンジョンは階級制限がない代わりに、報酬もないんです。それに、普通はパーティーを組んで複数で潜るので、ウィルバルトさんには……」


 「うむ! こいつは友達がおらん落ちこぼれじゃからな! 娘の懸念も最もじゃ!!」


 くそーっ、ヴェストニアだけじゃなくアリアさんにも可愛そうなやつと思われてるのか。

 分かってるよ、俺だって好きでボッチでいるんじゃない!!


 俺はヴェストニアの言葉で床に手を付き、自身の交友関係の無さに肩を落とした。


 「あはははは、そのドラゴン面白いね!! まぁそう言うことだから、私達も仲間が欲しいんだよね」


 「……でもお前達も俺の噂は知ってるだろ??」

 

 俺はメルディの言葉にゆっくりと頭を上げると、何とか笑みを浮かべながら2人に尋ねた。

 その顔をしばらく見つめたメルディとビルードは大きく笑い声を上げながら答える。


 「ハハハハハ! ああ、知ってるぞ?? 確か竜騎士学園ナイトアカデミー始まって以来の落ちこぼれだろ??」


 「そうそう。マルティオがいつもあいつがいると腹が立つって言ってたわよね?」


 くっ、久しぶりに言われると耐性が薄まっているのかダメージが……。


 「……そんな俺と組んだらお前達もバカにされるんじゃないか??」

 

 俺が机に掴まりながらゆっくりと立ち上がると、メルディがさっきとは違い真剣な表情で答えた。

 

 「そんな事ないわよ。私達が嫌いなのはそういう陰口を言う奴らと、それに反抗しない奴よ! あなた、今は私達の中で一番上の階級なのよ? もっと自信を持ちなさい。」


 「そうだな。俺も見習いの時にお前を助けなかったのは、その地位をお前が受け入れてたからだ。またそんな奴に戻ったら、すぐにでもパーティーから追い出すからな!」


 ……そうだったのか。いや、2人のいう通りだ。

 俺はもう竜騎士ドラゴンナイトなんだ。 

 それに誰にも恥じるようなことはしていないじゃないか。


 「……ふふ、そうよ。そういう顔をすればいいのよ」


 俺の表情を見たメルディは小さく笑みを浮かべると、その右肩に手を置く。

 こうして、俺は生まれて初めてパーティーを組み、旅に出ることになったのだった。













 ヒュゥゥゥゥゥゥ……。

 竜騎士学園ナイトアカデミーを出発して数時間、俺、メルディ、ビルードの姿は空の上にあった。

 3人が目指すのは王国西部にあるアースト遺跡、その内部にある魔迷路ダンジョンである。


 「それにしても、お前のドラゴンって種類は何なんだ?? 何度見ても分かんねぇ」


 先頭を進むビルードは後ろの俺に視線を移すと、その背中に掴まるヴェストニアを見つめな方首をひねる。


 「さ、さぁ。俺もよく分かんないんだよね。それよりもさ! 2人のドラゴンの事を教えてよ」


 「……それもそうだな」

 

 「それならまずは私からね!!」


 ビュゥゥゥゥ。 話を聞いていたメルディは一気に先頭まで進みドラゴンの背に立つと手を腰に当て胸を張りながら話始める。


 「この子は鳥竜バード・ドラゴンのドゥードよ! 空を飛ぶことにおいてはどのドラゴンにも負けないわ。ねっ、ドゥード??」


 「ピィィィィ!!!」

 

 ドゥードはメルディの言葉で大きく鳴くと、とてつもない速さで俺達の周りを飛び始める。

 メルディはそのスピードの中でも、ドゥードの背の上で笑みを浮かべながら俺達を見つめていた。


 すごい、あのスピードでも体勢が全くブレないなんて。

 ヴェストニアも珍しくかなり興奮しているみたいだ。嫌な予感しかしないが……。


 「おぉ、やるではないか!! しかし私だって負けておらんぞ!!」


 「お、おい! お前まさか……!! あぁぁぁぁぁ!!!!」


 案の定ヴェストニアはドゥードの速さに触発されたのか、俺にゆっくりと飛ぶように命令されていたのも忘れ、メルディ達の後を追い一気に速度を速めていった。


 「あら、やるじゃない!! ドゥード! 負けるんじゃないわよ!!」


 「ピィィィィィ!!」


 「ハハハハハハ!! なんのまだまだこれからじゃ!!」


 ひぃぃぃ!! もうやめてくれー……。

 しかし俺の願いも虚しく、メルディ達が速度を上げるとヴェストニアもそれに続き更に速度を上げていく。

 俺がその地獄の様な時間から解放されるのは、メルディとドゥードの体力が尽き2人が川辺に降り立った日が暮れるころだった。



 「うっ! はぁ、はぁ……」


 「大丈夫かウィルバルト? ほら、これでも飲んで休んでろ」


 「あ、ありがとうビルード」

 

 俺はなんとか岩の上から体を起こすとビルードが差し出した水袋に口をつけた。


 「全く、メルディも調子に乗り過ぎだ。お前もドゥードも魔力が殆ど残ってないじゃないか」


 「ふっ、ふふ……。人には誰しも負けられない戦いがあるのよ……」


 「ピ、ピィィ、ィ……」

 

 メルディはドゥードの上から力なく体を起こすと、親指を立てながら笑みを浮かべるがすぐに力尽きドゥードの背に体を預ける。

 それに続くようにドゥードも鳴き声を発した後、すぐに地面に頭を下ろした。


 「はぁ……、世話の焼ける奴らだ。ロー、あいつらに回復魔法を」


 「了解」

 

 ビルードがため息を付きながら口を開くと、その後ろにいた細長いドラゴンがメルディとドゥードの周囲を取り囲む。

 するとその内部が緑色に光りを放ち始めた。


 「ビルード。あれは君の……?」


 「ああ、紹介がまだだったな。あいつは俺が契約した蛇竜スネーク・ドラゴンのローだ。見ての通り回復系の魔法が使える」


 なるほど……。確かにメルディ達の顔色が良くなってきたな。

 俺はしばらくメルディとドゥードを見つめていると回復したのかメルディが勢いよく起き上がり、いつものように大きな声で俺とビルードの元に駆け寄ってきた。


 「ありがとうね、ビルード! これでもう全快したわ!! すぐにでも魔迷路ダンジョンに行きましょう!!」


 「あのな……、夜は高位の魔族もいるし、今日はここで野宿だ。明日朝一で魔迷路ダンジョンに向かう」


 「えぇ!! そんなことしてたら」


 「いいな?」


 「……はい」

 

 この2人の力関係がなんとなく分かってきた気がするな……。


 「ウィルバルトよ、お前何やら楽しそうだな」


 「へ……? 急に何言ってんだよ」


 俺は頭の上のヴェストニアの言葉に否定するが、自分の顔を触ると口角が上がっていることに気が付いた。

 あれ? もしかして俺笑ってるのか??

 そうか、これ……。


 「……俺、2人といるのが楽しいのか」


 はぁ……。ヴェストニアは俺の言葉に大きく息を吐くと、俺と共に笑い声を上げているメルディとビルードに視線を向けるのだった。



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