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破壊竜ヴェストニア??

コメディ色の強い作品です( ・∇・)


 ブォォォォォォ……。

 竜の巣と呼ばれるここ、ブリドア山脈にはその名の通り無数のドラゴンが生息しており、大小様々なドラゴンが日々縄張り争いを繰り広げていた。

 空を飛び、空中より地上を焼き尽くす火竜フレイムドラゴン。水中より獲物を待ち受ける水竜ウォータードラゴン

 人間界と隔絶されたこの地は人間にとっては過酷な地であり、気を抜けば一秒たりとも生き残ることが出来ない死の世界。

 しかしその世界にあえて足を踏み入れる者達がいる。


 竜騎士ドラゴンナイト。それはドラゴンと血の契約を結び、ドラゴンを使役する者達。

 そこへ到達するのはあまりにも狭き門であり、竜騎士ドラゴンナイト見習いと呼ばれる竜騎士学園ナイトアカデミー卒業者の最終試験として、このブリドア山脈にてドラゴンと契約を結んで初めて竜騎士ドラゴンナイトを名乗る事が許される。


 しかし、ブリドア山脈は山頂へと進むほどドラゴンのレベルが上がり、成績の優秀な者から順にブリドア山脈に踏み入れる権利が与えられる事と相まって、成績の悪い者は麓の比較的おとなしいドラゴンと契約を結ぶことが出来ず、山頂付近の高レベルのドラゴンに出くわし命を落とすことが大半だ。


今年も新たな卒業生達が竜騎士ドラゴンナイトになるべくブリドア山脈に足を踏み入れ、多くの者が命を落としていた。


 そして、最後にブリドア山脈に踏み入れる権利を得た学園始まって以来の落ちこぼれ、ウィルバルト・アストリアの行く手を阻むように、ひと際巨大な黒竜ドラゴンが鎮座していた。


 「人間、なぜこのような所にいる???」


 「いや、えっと……。ドラゴンと契約を結びたいなと、思いまして」


 「ほう……、竜騎士ドラゴンナイト見習いか」

 

 黒竜は笑みを浮かべると俺の目の前に体を下ろす。

 そのあまりに突然の出来事に、俺の額からは汗が噴き出していく。


 ど、ど、どうしたらいいんだ!

 麓からここまで既に契約され残っていないのか全くドラゴンが見当たらず、そこら中に転がっている死体を見ないように走っていたら、いつの間にか山頂まで来てしまっていた。

 それどころか、まさかこんな化け物 ドラゴンに出くわしてしまうなんて。


 「まぁまぁ、そう怯えずともよい。私もここに住み着いてから300年、誰とも会話をしていなかったのでな。少しゆっくりとしていけ」


 「は、はい……!!」


 黒竜は大気を震わすほどの笑い声を発すると、更に話を続けた。


 「しかし、何故に竜騎士ドラゴンナイト見習いがこのような所まで来ておるのだ・・。使役するドラゴンにするのはもっと低位のドラゴンなのだから、奴らが生息する麓に行けばよいであろう」


 「そ、それはですね。既に契約されたのか、麓にはドラゴンが全く見当たらなくて気がついたらこんなとこまで来てしまっていて」


 「ガハハハハハ!!! そういうことか!! つまりお前は最底辺の見習いというだな?! ……いや待てよ。そう言えばこの前、山の中腹にいた火竜フレイムドラゴン共をまとめて殺してしまっていたな。そうか、だからお前のような者がここまで来ることが出来たのだな」


 黒竜は俺のの言葉に、何かを思いだし納得したかのように何度も頷く。

 そう、俺がここまでドラゴンと出会わなかったのは、こいつのせいであるらしいのだ。


 あぁー、俺ここで死ぬのかなー。

 やっぱり俺なんかが竜騎士ドラゴンナイトになるなんて無理だったのかな。

 父さん、母さん、爺ちゃん、コロ! ごめんよ!!

 ベッドの下に隠してあるエロ本はどうか破いて捨ててくれ!!


 何かを考えているのかいつの間にか笑うのをやめ、しばらく俺の姿を見つめる黒竜に、俺は諦めたように目を閉じる。

 だが黒竜から出た言葉は俺の予想だにしないものだったのだ。


 「……よし! お前、名前は何という??」


 「へ?? 名前ですか!? えっと、名前はウィルバルトと言いますが」

 

 「ではウィルバルト。お前は使役するドラゴンを探しておったのだな??」


 「そ、そうですが」


 「ではそのドラゴン、私がなってやろうではないか!!! この破壊竜 ヴェストニアがな!!!」

 

 ヴェストニア……? どっかで聞いたような……。

 破壊竜、神殺し……。


 はっ!! 俺はしばらく考えた後、その名前、そして破壊竜と神殺しという言葉にあることを思い出す。


 「ヴェストニアってまさかあの神殺しのヴェストニアか?!」


 「ガハハハハハハ! そう言えばそのようなこともあったな!! 忘れておったわ!!!」


 神殺しのヴェストニア。

 300年前、天界に単身乗り込み当時の12神の内、4神を殺したというあの破壊竜!


 「な、なんでそんな奴が使役竜になろうなんて思うんだ」


 「そうだな、ここに一人でいるのにもう飽きたのだ。だから人間界に行ってみるのも悪くないと思ってな。それになんだかお前のことが気の毒になったのだ。まぁただの気まぐれ、気にするな」

 

 俺の言葉にヴェストニアは大きく笑いながら答える。

 だが、それとは正反対に俺の表情はみるみる悪いものへと変化していった。


 「いやいやいや! 分かってるのか?? もし血の契約を結べば一生俺と離れることは出来なくなるんだぞ?? 俺の命令にも従わないといけないし」


 「分かっておるわ、私を誰と思っている。 ……ほらどうするのだ、契約するのかしないのか??」

 

 ヴェストニアは前足の人差し指を俺に向け、笑みを浮かべた。


 「ほ、本当にいいのか?? そういうことなら本当に契約するぞ??」


 「よいよい、私の気が変わらぬ内に早くせよ」


 あぁ、もう!! この際破壊竜だろうが何だろうが関係ない!


 俺はようやく決心した。

 そして震える手で腰の短剣を抜き自分の手のひらを切ると、ヴェストニアにも同様の切り傷を付ける。


 「ふぅ……。それじゃあいくぞ。我、ウィルバルト・アストリアは破壊竜 ヴェストニアと血の契りを結ぶ。この契りは今後いかなる時も破棄することは出来ない。ヴェストニアに再度問う。我と血の契りを結ぶことを受け入れるか??」


 「受け入れよう」


 「それではこれにて儀式は終了とする。最後に互いの血を混じらせることで血の契約は不変の契りとなろう」


 俺が契約の言葉を終え、自身の手のひらをヴェストニアの切り傷に重ねお互いの血を混ぜ合わせる。

 するとその部分が光を放ち始め二人の首には同様の紋章が浮かび上がった。


 「これで契約は終了だ」


 「ふむ……。意外と呆気ないんだな。何も変わった気がしない」


 俺の言葉に、ヴェストニアは何やら不満そうだ。

 だが俺は激しいな眩暈と吐き気を催し、その場へと膝を付く。


 俺からしたらもの凄く変わったんだけどな。

 それに契約によってヴェストニアの魔力が流れ込んできたが、その量が多すぎて気持ち悪い……。


 俺は何とか逆流する胃液を飲み込み、ゆっくりと立ち上がり視線をヴェストニアへと戻した。


 「それじゃあ、そろそろ学園に戻るとするか。ヴェストニアの事も連盟に登録しないといけないし」

 

 しかし俺はここである重大なことに気が付いた。


 いや待て……、そもそもヴェストニアって人間界に連れて行ってもいいのか???

 神を殺すほどの魔力の持ち主だろ??

 あれ、これ無理じゃね!?!?


 「あ、あの、ヴェストニアさん……」


 「何だ気持ち悪いな。呼び方はヴェストニアでよい。それでどうしたのだ??」


 「じゃあヴェストニア。もしかしたらお前を人間界に連れて行くのは出来ないかもしれない……。お前って、神殺しなんだろ?」


 「……あっ」

 

 ヴェストニアはその言葉に、人間のように前足を口に当てると低い声で声を漏らす。


 いや、どんなキャラだよ!!!

 でもしまったなー。既に契約は成立しちゃってるし。


 緊急事態に2人はしばらく考えた込む。

 だが突然ヴェストニアは何かを思いついたのか、両手を叩き俺へと口を開いた。


 「そうだ! 私がヴェストニアとバレなければよいのだウィルバルトよ!!」


 「それはそうだけど、お前みたいなドラゴン他に見たことがないし、文献を知っている大人達ならすぐに気づくんじゃないか??」


 「フフフフフ。心配ご無用、こうすれば気づかれはしないのだ!!!」

 

 ブオォォォォォォ!!!

 大きく笑い声を上げたヴェストニア。

 彼が翼を広げると、とてつもない突風が辺りに吹き荒れヴェストニアの体は見る見るうちに小さくなっていった。


 しばらくして風が止み、俺がようやく目を開けることが出来た時には、先ほどまでの巨大な黒竜の姿はなく、地面に50センチほどの丸々とした二足歩行の小さな生き物が立っていた。


 「え、なにこれ可愛い……」


 「な、なにを!! ウィルバルト、このヴェストニアに向かってそのような物言いは許さんぞ!!」

 

 腹を立てたのか、ヴェストニアは俺の足元まで駆け寄ると、何度も前足で俺を殴るがすぐに息切れを起こし地面に座り込む。

 どうやらこの体は体力があまりないらしい。


 「だ、大丈夫か??」


 「はぁ、はぁ。む、無論じゃ。ただこの姿だとこの通りゴブリン以下の力しか出せないんじゃ。まぁこれで私がヴェストニアだとは誰も思うまい」


 確かにそうだが……。

 これって俺 竜騎士ドラゴンナイトって認められないんじゃないか??? 

 だってどう見たって乗れないだろこいつには。


 「はぁ、まぁいいか。今後のことはこれから考えるとしよう」


 「何をブツブツ申しておる。 だがウィルバルトよ、これからよろしく頼むぞ!」


 「……ああ、分かったよ」


 ヴェストニアの姿に小さくため息を付いた俺は、腰を下ろすとヴェストニアの差し出した小さな手を掴み握手に応えた。


 こうして、俺は晴れてドラゴン?との契約に成功し、夢の竜騎士ドラゴンナイトへの道を踏み出したのだった。

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