008 土用の丑の日
今日は餃子の日。
常連である大学生達がランチに来ていた。
「そういえばジンさん、ココは土用の丑の日でも鰻は出さないんですね!」
「ウチは大衆店だから1品で3000円とか5000円のメニューを出してもお客様は来ないからね」
そう、いつも1000円位のメニューを出しているこの店でそんな値段を出しても誰も食べない。
「串打ち3年、裂き8年、焼き一生って言って鰻職人の仕事は奥が深い。素人の私が焼いても美味しくないだろうからね」
「はぁー、そんなもんですかねー」
それに池袋には老舗の鰻店もあればデパートもある。大抵の人は買って自宅で食べるだろう。
「しっかし、なぜ土用の丑の日に鰻なんですか?」
「色々あるけど有名なのは江戸時代に平賀源内に鰻屋が夏に脂っこい鰻が売れずに相談したら、店に『本日、丑の日』って紙を貼っておけと言い渡されて試したところバカ売れし出したって話しだね」
「あれ?土用が抜けてる?」
「土用っていうのは節分の後に来る土用入り、土用終わりも期間のことだね。この時期は土をいじると良くないって言って農家の休日にしてたのさ。土用波とかいうだろう?」
「節分っていうと3月3日の?」
「それは桃の節句。2月3日が節分。まぁ、本来節分は年4回あるんだよ。季節を分ける日だからね」
「じゃあ、丑の日ってのは?」
「暦上の日付さ。1日ごとに子(鼠) 丑(牛) 寅(虎) 卯(兎) 辰(竜) 巳(蛇) 午(馬) 未( 羊) 申(猿) 酉(鳥) 戌(犬) 亥(猪)ってつけているのさ」
「年だけじゃないんだ!」
「おいおい、大丈夫か大学生?時間にもあるだろう?」
「時間?」
「丑三つ時とか子の刻とか…。江戸時代の時代劇とかに出て来るだろう?」
「ああ、それってそういう意味だったんだ!」
「まぁともかく、夏の土用期間の丑の日が土用の丑の日な訳だ。毎年違うのはそのせいで、年によっては丑の日が2回あることもある」
「なるほど!」
「ちなみにジンさんは今日は鰻食べる?」
「食べない」
「えー、何で?夏バテしちゃうよ?」
「…、企業秘密って事で」
土用の丑の日のうなぎと、クリスマスのケーキは実はその時期の1週間前後は冷凍モノなのだ!専門店はともかく、スーパーやデパート、コンビニ。大衆店の鰻は大量に使うため冷凍モノになる。コレはジンがデパートにいる知り合いの鰻屋に聞いた事でコレが広まると売れなくなってしまうので、おおっぴらにはできない情報なのだ。日本産でも冷凍だとどうしても味が落ちる。美味しいのはその1週間前か後に食べるモノの方らしい。
なのでジンの今日の賄いは店メニューである餃子であった。日本人なのでホントは食べたいが、味が落ちると言われたモノを高い値段で食べるのもどうかと思うので我慢する。




