表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺たちを照らす夜明け  作者: たらふく
77/77

エピローグ



「和樹~~!行くぞ」

「ちょ・・ちょっと待って。今、行くから」


俺と和樹は、通学のため、家の玄関を出ようとしていた。


「ったく~~遅刻すんぞ!」

「はいはい、お待たせ」


和樹は急いで靴を履いていた。

そして俺は、ドアの鍵を閉め、二人で駅に向かった。


俺と和樹は今、一緒に暮らしている。

狭い部屋に大男が三人は、多少きつかったが、それでも毎日が楽しくて仕方がなかった。

俺たちは高校三年生として、同級生になっていた。


「たけちゃーん、和樹くーん」


翔が俺たちを追いかけてきた。


「ようー」

「翔くん、おはようー」


和樹はアル中も無事克服し、もちろん体重も元通りになり、すっかり以前の和樹に戻っていた。

そして和樹は、跡目から解放されたこともあり、性格も多少、変化していた。


「和樹くん、新刊読んだ?」

「あっ!あれ、もう終わるんだよね」

「そうなんだよ~、僕、淋しくってさあ」


翔と和樹は、あの、ヤクザ漫画の話をしていた。

どうやら、もうじき、話が完結するようだ。

俺はその話を聞いてて、やっぱりどこか、和樹と重なる気がしていた。


「一輝ってやつは、その後、どうなってんだ?」


俺が翔に訊いた。


「めでたく組長になったんだよ」

「へぇー、そうか」


そこは、和樹と違うんだな。

そりゃ、そうだ。


やがて校門に着くと、紫苑が立っていた。


「紫苑、おはよ~」


俺は紫苑の頭を撫でて、からかった。


「時雨くん、触るなと何度言えばわかるんだ」

「だって~、お前、かわいいもん」

「ばっ・・バカなっ!」

「紫苑くん、おはよう~」


翔がそう言った。


「紫苑くん、今日もご苦労様」


和樹がそう言った。

というのも、紫苑は生徒会長になり、毎朝こうして、生徒の登校を「監視」しているのだ。


「きみたち。今月の目標を心得ているのだろうな」

「っんな・・堅苦しいこと言うなって」

「時雨くん・・きみって人は、全く・・」

「はーい、今月の目標ね。それは和樹くんがとっくに達成してるよ」


紫苑の言う「今月の目標」とは、全教科に於いて出される小テストの点数が満点であること、なのだ。

いかにも、成績優秀に拘る紫苑らしい目標設定だった。


「それは知っている。僕はきみたち二人に忠告しているのだ」

「きみこそ、どうなの?」


和樹がそう言った。


「そ・・それは・・」


紫苑が口籠った。


「頑張ってね、会長!」


和樹はそう言って、先を歩いて行った。


「ふふ・・紫苑。おめぇは和樹には適わねぇな」

「う・・うるさい!僕は、二教科落としただけだ」

「お前って、ほんと変わってるよな」

「なんだと」

「だってさ、もう~探偵ごっこやらせたら、右に出るもんはいねぇのに、勉強は・・」

「探偵ごっこだと?心外だな。あれはだな・・」

「はいはい、紫苑くん、そこまでね」


翔がそう言い、俺を引っ張って歩いた。

振り向くと紫苑は「イ~ッ」という顔をしていた。

あはは、子供かよ。


紫苑がなぜ、探偵ごっこに長けていたかというと、紫苑の親父は警察官僚なのだ。

和樹の件で、親父の力を借りたわけではないが、ノウハウは知っていたらしい。

俺はそれを聞いて、ものすごく納得した。

紫苑はやがて、その道へ進むのだろう。


俺の将来か・・


今は漠然とした考えしかないけど、俺は、親のいない子供たちのために、何かをしたいと思っていた。



------------------------------------


最後までお読みくださり、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ