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俺たちを照らす夜明け  作者: たらふく
26/77

二十六、大垣店長



それから二日後、早速、成弥から電話がかかってきた。


「あのな、仕事が終わったら、C公園へ来い」


成弥の話しぶりは、それまでとは違い、俺を子分にしたとたん、命令口調になっていた。


「わかった」

「何時に終わるんだよ」

「三時」

「そうか。いいか、必ず来いよ」

「ああ」


くそっ・・なんだこいつ・・

マジで人間、腐ってんじゃねぇのか。


「時雨くん」


店長の大垣が話しかけてきた。


「はい、なんすか」

「悪いんだけどね、残業できないかな・・」


残業って・・どうしよう、俺、成弥に三時に終わるって言っちまった。


「誰か休みなんすか」

「うん。昆田さんが急用でね、来れなくなっちゃって」

「いや・・俺も無理っす」

「そこを何とかならないかな・・他の人も都合が悪くて、頼めるのきみだけなんだよ」

「でも・・」

「お願い。時給、割増しさせてもらうから」

「それって、どれくらい残業すればいいんすか」

「三時間でいいんだ」


三時間か・・成弥に電話して六時にしてもらうか・・


「ちょい、待ってもらえますか」


俺はそう言って、外に出て成弥に電話をかけた。


「なんだ」

「三時って言ったけど、六時になる」

「六時?ダメだ。三時だ」

「残業入ったんだよ」

「六時は俺の都合が悪い」

「じゃ、今日は無しでいいんじゃね」

「お前、誰に向かって口きいてんだ。俺たちは対等じゃないんだよ」

「・・・」

「いいか、三時だ。必ず来い」

「・・わかった」


そして成弥は電話を切った。

くそっ・・ぶっ殺してやりてぇ・・


「店長・・やっぱり無理っす」


俺は中へ戻り、店長にそう言った。


「そうなんだ・・わかった」

「すんません」


それから三時が近づくにつれて、皮肉にもお客が増えだした。

レジにもたくさん並んで待っている・・

こんな状態で帰れるかよ・・


店長は必死になって、対応していた。

マジ、かわいそうだ・・

げっ・・変な不良みたいなやつも来たし。


高校生らしきそいつらは、缶コーヒーを買って、店の前に座り込み、明らかに他の客の邪魔になっていた。

一人は長身、一人はがたいのいいやつ、一人は中肉中背。


「きみたち・・そこに座っていると、他のお客さんの迷惑になるから移動してくれないかな」


店長が高校生たちに、諭していた。


「はあ?どこへ座ろうと、俺たちの勝手。指図される覚えはないね」

「あっはっは。迷惑だってさー」

「うっぜーの。このチビおっさんがっ」


三人連れのそいつらは、店長をバカにしてそう言った。


「ちょっとーレジいないの?」


中の客がそう言って店長を呼んだ。


「あ、はい。今行きます」


店長は急いでレジについた。


「あっはっは。必死だな」

「マジうぜー。汗かいててキモイんだよ」

「これ食おうぜ」


一人が鞄の中からポテチの袋を出し、他の二人もそれに手を出していた。


「だから、きみたち、ここは飲食の場じゃないんだよ。食べるなら他へ行ってくれないかな」


店長は、また戻ってきて、そう言った。


「うるせーんだよ、おっさん」


ポテチを広げたやつが、そう言った。

店の中では、またレジを待っている客が並んでいた。


「店長、ここは俺に任せて、レジへ行ってください」


俺は店長にそう言った。


「でも・・帰る時間が過ぎてるよ」

「いいから。行ってください」


そして店長はレジへ戻った。


「お前ら、どっか行け」


俺は高校生たちに、そう言った。


「はっ。誰だよ、お前」


中肉中背が、俺を睨みつけてそう言った。


「行けっつってんだよ」


俺も睨み返した。


「はあ?」

「聞こえねぇのか・・」

「だからお前、なんなんだよ。関係ねぇだろ」


長身がそう言った。


「俺はここの従業員だよ」

「はっ。それがどーした」

「どーしたも、こーしたもねぇ!お前らみたいなのがいると、迷惑だって言ってんだよ!聞こえねぇのか、バカめ!」

「なんだ、やるってのか」


がたいのいいやつが、自分の身体を自慢するようにそう言った。


「ちょっと待って。時雨くん」


店長が急いで出て来た。


「時雨くん、きみはもういいから、帰りなさい」

「でも・・」

「ここは僕がなんとかするから」


「ああっ?やるのか、やんねーのか、どっちなんだよ!」


がたいのいいやつが、再びそう言った。


「迷惑だと言ってるのが、わからねぇようだな」


え・・店長・・なんだっっ??

店長は、それまでの優しい店長とは思えないほど、ド迫力満点で高校生たちに迫った。


「なっ・・なんだよっ!」


がたいのいいやつは、少し怯んだ様子だった。


「聞こえねぇか・・?迷惑なんだよ」


店長は更に睨みつけ、もはや眼力だけで威嚇していた。


「ふんっ!うぜーんだよ!」


そう言って、がたいのいいやつは走って逃げ、他の二人も後に続いた。


「ふぅ・・やっと帰ってくれたね」


店長は、ニコッと微笑み、俺を見た。

今のは・・今の迫力はなんなんだ・・


「店長・・」

「さっ、時雨くん、帰りなさい」

「は・・はあ・・」

「また明日、よろしくね」


そう言って店長は、中へ戻って行った。

店長って・・何者??

もしかしたら・・元ヤクザとか・・

俺は戸惑いながらもC公園へ向かった。



公園へ着くと、成弥が鬼のような形相で俺を待っていた。


「三時って言ったよな」

「だから、遅れるって言ったじゃねぇか」

「誰に向かって口きいてるんだと言ったはずだ。分を弁えろ」

「・・・」

「まあいい。お前に訊きたいことがある」

「なんだ・・」

「なんですか、だ!」

「なんですか・・」

「お前は東雲の跡目と、どういう関係なんだ」

「別に、関係なんてねぇよ」

「ないです、だ!」

「ないです・・」

「関係ないのに、替え玉やったと言うのか」

「・・・」

「どうなんだ、答えろ!」

「頼まれたんだよ・・」

「頼まれたんです、だ!」

「頼まれたんです・・」


俺がタメ口をきくたびに、成弥は血相を変えて怒っていた。


「なんで頼まれたんだ」

「和樹は入院してて・・退院するまでと・・頼まれたんです・・」

「そうか。それで今は退院したのか」

「はい・・」

「じゃ、もうお前は、東雲とは無関係なのか」

「はい・・」

「跡目とも無関係なのか」

「はい・・」

「そうか。それではお前に指令を言い渡す」

「・・・」

「お前は再び東雲に近づき、内部に入るんだ」

「え・・」

「最近まで関係があったんだから、それくらい造作ないはずだ」

「・・・」

「返事をしろ、返事を!」

「それで・・俺は何をすればいいんすか」

「いいんですか、だ!」

「いいんですか・・」

「商店街との関係を壊せ」

「なっ・・」


なに言ってんだ・・こいつ・・


「それも、あからさまにやるのではない。商店街の住人たちに、少しずつ疑念を抱かせるんだ」

「え・・」

「東雲に対して、疑念を抱かせるんだよ」

「・・・」

「わかったか!」

「はい・・」


あり得ねぇ・・こいつマジで東雲を潰そうとしている。

くそっ・・俺はどうすればいいんだ・・

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