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キミと日向葵  作者: ろばてーる
12/15

大好きな人

何も考えられなかった。

頭の中は真っ白で。

ただ涙だけはいつまでも溢れ続ける。


いっそこのまま身体の水分全部出して死んでしまおうか…。

そんな馬鹿なことさえ考えていた。


もう河原は真っ暗で今何時なのかすらわからない。

ブブっと携帯が鳴る。

きっといつまでも帰ってこない私を心配した親がかけてきているのだろう。

それぐらい今は遅い時間なのかな。


電話に出ることはなく、どれぐらい経っただろう。

今頃はきっと、冬樹君は遥花ちゃんに会えて再会を喜んでいるのかな…。


「……ん!!」

その時、少し遠くの方から誰かを呼ぶ声が聞こえた。

その声はだんだん近づいてきて、私にもその人の姿が見えた。

「…誠人?」

「ひまわりちゃん!!!」


誠人は私の姿をみると、安心したように笑顔になった。

「心配したんだよ。こんな遅くまでこんな暗いところで危ないから!」

そして少し怒った。


「ごめん…何にも考えたくなくて…」

言葉と同時にまた涙が溢れてくる。

止めようと思うと尚更。

「松永君のことだろ?」

私は少しだけ頷いた。

誠人は黙って私の隣に座る。

少しだけ沈黙が流れる。


「さっき俺がさ、遥花と話してたら突然松永君が飛び込んできたんだ。」

ボソッと誠人がまた話し始めた。

「凄い剣幕で。遥花の姿を見た瞬間、泣きはじめた。」

想像するだけでもわかる。

冬樹君の喜びが…。

「遥花もさ、驚いて固まっちゃって。俺はなんかここにいていいのかなって。それと同時にひまわりちゃんは大丈夫かなって。」

「それで探してくれたんだ。」

「お前電話繋がらないんだもん。ショックで身でも投げてるんじゃないかって焦ったわ。」

そしてまた誠人は笑顔になってくれた。

その笑顔をみて、私の心の重りも少し軽くなる。

「投げないよ。」

変なの…。

こんなに辛いのに、こんなに涙は出てくるのに、

誠人が来たら不思議と安心する。

誠人の隣はいつも暖かい。

「ありがとう誠人。私、なんか大丈夫かも。」

「無理すんなよ。」

誠人はそう言って私の頭を撫でてくれた。


次の日、私は憂鬱だった。

大丈夫だとはいえ、冬樹君と顔を合わせるのは辛いし気まづい。

私が席に座ると、後ろから追いかけるように冬樹君が教室へ入ってきた。

私と目が合うと少しだけ笑って

「おはよう。」

とだけ言った。

あれ、なんか元気ない?

私より落ち込んでるんじゃないかってぐらい、冬樹君の背中は小さい。

「おはよう。冬樹君。」

名前を呼びかける。

その私の呼びかけにも冬樹君は反応しなかった。

遥花ちゃんと何かあったんだ…。

その時、遥花ちゃんに冬樹君の話をした時のことを思い出した。

遥花ちゃんは冬樹君を覚えていなかった。


「冬樹君ちょっといい?」

余計なお世話かもしれない。

それでも冬樹君を何とか助けてあげたい。

「ごめん、日向。」

突然冬樹君は謝った。

「なんで謝るの?」

「曖昧な気持ちで日向を振り回して、結局遥花とも上手くいかなかった。日向の気持ちに応えられなかった…。」

私は振り回されたなんて思ってない。

むしろ私が二人の仲を邪魔し続けていたようなものなんだから。

「遥花ちゃん、冬樹君のこと分からなかったんでしょ?」

冬樹君が顔をあげた。

その目は腫れて赤い。

「思い出してくれるって少し期待して、沢山話したんだ。2人で行った場所、好きだった本、思い出を全部全部…。だけどさ、遥花の記憶に俺なんていなかったんだ。」

泣きそうに顔を歪ませる。

こんな冬樹君は初めてだった。


「私言ったじゃん。ひまわり畑の話したよね。遥花ちゃんは完全に忘れてなんてないよ。絶対思い出してくれるから!」

自分で言っといて胸がまた苦しくなる。

でも冬樹君のこんな顔は見たくない。

笑って欲しい。


「遥花ちゃん。冬樹君のこと、まだ思い出せない?」

放課後、私と冬樹君は2人で病室を訪れた。

「…凄く大切な人だったってことは話を聞いてわかったよ。でも…ごめんなさい。」

「冬樹君以外の人のことは覚えてるんだよね?」

遥花ちゃんが小さく頷く。

遥花ちゃんは冬樹君だけを忘れてしまっていた。

なんでよりによって冬樹君なんだろう。

「もう何年も前だし、仕方ないよ。」

冬樹君は困ったように笑った。

仕方ない?

「仕方ないって何?ずっとずっと、遥花ちゃんを探し続けてやっと再会できたのに仕方ないで済ましていいの?」

少し言い方がきつくなってしまったかもしれない。

でも大切で泣いてしまうほど大好きな人をそんな簡単に諦めようとしている冬樹君が許せなかった。

「日向…なんか怒ってる?」

「怒ってるよ。今の冬樹君は私は好きじゃない。」

「じゃあさ、これ以上どうすればいい?俺のこと何一つ思い出せないのに、お互い辛いだけだろ。」

冬樹君の口調も強くなった。

こんな冬樹君は初めてかもしれない。

「だからって諦めたら今までと何も変わらないじゃん!ずっと見つからないと思ってた遥花ちゃんにやっと会えたんだよ?」

「無理して思い出させるなんて遥花が可哀想だろ!ただでさえ病気で苦しんでるのに、俺のせいで辛い思いさせるなんて嫌なんだよ!」

「遥花ちゃん遥花ちゃん言うけどさ、私の気持ちはどーなるの?どんな気持ちで背中押したか分かる?!」

「だから前に言っただろ?俺と付き合ったところで傷つくだけなんだって!!!」


「いい加減にして!!!!!!」


そう叫んだのは遥花ちゃんだった。







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