相思相愛
「ひまわりちゃん!」
「誠人…。」
そこには誠人が手を振って立っていた。
別に悪いことをしてる訳では無い。
だから動揺する必要だってない。
なのに…
何故か早くなる鼓動が止まらなかった。
まるでなにか良くないことが起こる前触れのように。
「初めまして。ひまわりちゃんの友達の神崎誠人です。」
誠人は笑顔で冬樹君に右手を差し出した。
冬樹君は軽く会釈するとその手を握り返す。
「松永冬樹です。」
冬樹君は戸惑っているのか、表情は固い。
しかしその裏腹、誠人は嬉しそうに笑顔だ。
「ひまわりちゃんから話はよく聞いてるよ。会ってみたかったんだ。」
「…あの、日向とはどういう関係で?」
あ…。
私と誠人との関係。
きっかけは遥花ちゃんだ。きっかけを話したら遥花ちゃんの存在を知られてしまう!
「あぁあのっっ!!ほら、私達急いでるから今日はこれで!!」
2人の驚いたような視線が私に向けられる。
「…そっか。これからデートっぽいもんね。急に邪魔してごめんな。また今度ゆっくり話そうよ。」
誠人はそれ以上何も言わず、笑顔で去っていった。
きっと誠人は分かっているんだろう。
私が遥花ちゃんのことを知られたくないということ。
それが誠人なりの優しさなのか、他に何か企んでいるのか。
私にはまだ誠人のことが分からなかった。
「あの人がさっき女子達が言ってた友達?」
「う、うん…。」
「随分、仲がいいんだね。」
冬樹君の顔が見れない。
「仲がいいって言うか…少しフレンドリー過ぎるんだよ誠人は。」
「誠人、か…。」
ボソッとつぶやく。
冬樹君は今、何を考えてる?
どんな顔をしてる?
「よし、行こうか。もう映画始まっちゃうよ。」
冬樹君が私の手を引いて歩き出した。
さっきまでとは明らかに高くなった声のトーン。
無理してるのかな。もう、冬樹君を不安にはさせたくない。
「うん、楽しみだね!」
私の顔をみて、また冬樹君は笑ってくれた。
「誠人、少し話があるんだけど。」
翌日、私は病院の前で誠人を待った。
誠人は案の定遥花ちゃんのお見舞いに来ていた。
「ひまわりちゃん、昨日ぶりだね。」
誠人が笑顔になる。私はこの笑顔に弱い。
だからこの笑顔が怖いんだ。
「誠人、あのね…。」
「昨日のこと、でしょ?」
誠人は私の伝えたいことが何となく分かっていたようだ。
「昨日は急に話しかけてごめんね。松永君に何か誤解とかされてない?」
「誤解とかは…ないけど…。」
「不愉快にさせたかな。」
不愉快…だったのかな。
「わかんないけど、不安とか、不愉快…とか、させたくない。」
「ひまわりちゃんは冬樹君が本当に好きなんだね。」
「好きだよ!!」
大好きだよ。前だって、今だって。
「松永君も、ひまわりちゃんのこと好き?」
「…好きじゃなきゃ付き合わないでしょ…。」
自信のない答え。
冬樹君が私を好き、それは前に冬樹君だって言ってくれた。
その言葉を信じたい。
「俺さ、ひまわりちゃんには幸せになって欲しい。俺なんかが言えることじゃないのかもしれない。けど、なんでかな。ひまわりちゃんの笑顔が好きなんだよ。」
「でも誠人が本当に好きなのは遥花ちゃんじゃん。…もし、遥花ちゃんのことを冬樹君が知ったらどーなると思う?」
この言葉は自分に問いかけたものだ。
冬樹君はどーなると思う?
「きっと、私なんて捨てて、私なんて忘れて、遥花ちゃんの所へ走るよ。」
分かってるじゃん。私。
「じゃあ、試してみなよ。」
え?
「松永君に全部全部打ち明けて、どんな反応するのか試してみなよ。」
「でも、もし遥花ちゃんのところへ行ってしまったら私は…。」
きっと、絶望して、どーなる?
わからない。けど、嫌だ。
「ひまわりちゃんが辛いなら、俺はひまわりちゃんが笑ってくれるまで傍にいる。」
誠人のことが分からない。
誠人は遥花ちゃんが好きなのに。
冬樹君が遥花ちゃんを見つけてしまったらきっと遥花ちゃんだって…。
それでも誠人はいいのだろうか。
「誠人は馬鹿だね。」
誠人と別れた後、私は遥花ちゃんの所へ行った。
「遥花ちゃん。」
私の方をみた遥花ちゃんは嬉しそうに微笑む。
「葵ちゃん…来てくれてありがとう。」
初めてあった頃に比べてだいぶ笑顔も増えた。
その事が嬉しい。凄く。
「さっきまで誠人もいたんだけど、会わなかった?」
「…会ってないよ。」
別に隠す必要はないんだけど、それでも何故か会ったことは言えなかった。
「ねぇ、葵ちゃん。今日ね夢をみたの。」
「夢?」
「うん。私がね、真っ青な青空の下、ひろーいひまわり畑の真ん中でかくれんぼをしてるの。
それでね、隠れた私を小さな男の子が見つけてくれた。」
どくん。
「凄く懐かしくて、暖かくて、悲しかった…。」
息が出来ない。
幸せそうな遥花ちゃんの笑顔が今は辛い。
「遥花ちゃん。」
松永冬樹って、知ってる?




