秋葉原の探索
この本はゲームブックです。
まず1から読み始め、その項目の最後に「→2へ」のように指示があります。
そうしたら、その指示された数字の項目へ飛んで読み進めて下さい。
読み進めていくと選択肢が出て来ることがあります。
「◆分岐:~」という文章があったら、それが選択肢です。
自分が選びたいと思った選択肢の先に書いてある数字に飛んでください。
物語が進むと、何かを買ったり手に入れたりすることがあります。
その物の名前を覚えておくと、後で選択肢を選ぶ時に役に立つかも知れません。
もし忘れてしまっても大丈夫。その時はその物は大して大事ではなかったのでしょう。
それが無かった時の選択肢と同じ結果になります。
この物語はマルチエンド方式になっています。
選んだ選択肢によってエンディングを迎えることがあります。
項目の最後にどこにも飛ぶように指示がない場合は、そこでエンディングです。
もしも違うエンディングを読みたい場合は、選択肢に飛ぶ前の項目を覚えておくと簡単に戻れます。
■秋葉原の探索■ ver.1.0
この物語はフィクションです。
実在の団体、店、人物等とは関係ありません。
2024/12/31 但し書き変更。
■1
少年は快楽に飢えていた。
快楽と言っても、酒や薬、あるいは女の子と遊ぶということではない。
少年にはそんな度胸は無かったし、トラブルを起こしたいとは思ってはいなかった。
もっと単純に、少年は遊びに飢えていた。
少年の普段の行動範囲は狭かった。
家と学校、その間にある駅や商店街、その範囲内の移動がほとんどだった。
そして、その中にある遊びはほとんど全て試してしまっていた。
読書、アニメ、漫画、ゲーム、映画、ドラマ、スポーツ観戦、etc。
ゲームセンター、立ち読み、買い食い、その他雑多なお買い物。
散歩や公園での日向ぼっこ、写真撮影なんかにも出かけた。
しかし、そのどれも少年の興味を長く掴んではくれなかった。
どれも中途半端に手を付けては放り出してしまっていた。
そうして何もかもに飽き飽きした少年は、
井の中の蛙が井戸から顔を覗かせるように、久しぶりに自分の行動範囲から外に出ることにした。
何か楽しいことはないか。そう考えた少年の頭に、ある場所の名前が浮かんだ。
秋葉原。最近、何かと話題に上がるあの街だ。
少年もそこそこのマニアなので、秋葉原には何度も行ったことがある。
しかし最近は通販でもなんとかなることもあり、少しご無沙汰になっていた。
「アキバ・・・行ってみるか。」
少年はそう呟いて、秋葉原へ向かう電車の駅に向かった。
あの街なら何か楽しいことがあるだろう。
少年はあまり期待せず、おぼろげにそう考えていた。
→2へ
■2
少年は電車が苦手だった。
見ず知らずの人間と狭い車内に閉じ込められるのが嫌なのだ。
少年が秋葉原に向かったのは昼とは言えない夕方近く。
帰宅ラッシュが始まっている時間で、駅に到着した車内はごった返していた。
◆分岐:少年はそんな電車を見て・・・
それでも電車に乗ろうと思った:→3へ
諦めて帰ろうと思った:→4へ
■3
少年は意を決して、人で溢れそうな車内に体をねじ込んだ。
幾度かの乗り換えを経て秋葉原に付く頃には、少年はヘトヘトになっていた。
ギュウギュウの電車から吐き出された少年は、ふらふらと電気街口を目指した。
◆分岐:少年は電気街口が・・・
すぐに分かった:→5へ
分からなかった:→6へ
■4
少年は回れ右をした。特に用もないのに、わざわざ満員電車に乗る必要もない。
そうだ、隣町にある大きめの本屋に行って来よう。あそこにも楽しことがあるかもしれない。
そう考えて、少年は秋葉原方面とは逆のホームに向かった。丁度電車もやってきた。
逆方向なので、車内に人はまばらだ。少年は電車に乗ると適当な席に座った。
すぐに発車メロディが鳴り終わって電車は動き出す。
当初の予定とは違うが、それが悪いとも言えないだろう。
予定外の行動から収穫を得ることもある。
少年はそう考えて、隣町に行ってから何をしようか考えていた。
(代替手段のエンド)
■5
秋葉原駅電気街口。
言わずと知れた秋葉原の玄関。
秋葉原には他にもいくつも降り口があるし、そもそも電車だけが移動手段ではない。
しかし、この出口から出てすぐに目に入ってくる光景は、電気街として一番わかり易い。
目の前に広がるゲームセンター、ゲームショップ、免税店。まさしく電気街という感じだった。
少年はまずその光景に圧倒された。
店の軒先にぎっしりと並べられた商品、安さを主張する大量の値札、やかましいほどにがなり立てる客引きの声。
そして真剣な眼差しで商品を見極める老若男女入り混じった客達。そこにはエネルギーが満ち溢れていた。
少年は電車で吸い取られたエネルギーを充電し直すように、そのエネルギーに引き寄せられていった。
◆分岐:まず目についたのは・・・
黄色い看板のラヂオ会館だった:→9へ
赤い看板のゲームセンターだった:→10へ
白い看板のゲームショップだった:→11へ
■6
少年は電気街口を求めて駅の中をウロウロした。
階段を上がったり下がったり、秋葉原駅ってこんなに複雑だったか?などと思った時、
目の前にフードコートのようなものが見えた。どうやら立ち食いそば屋らしい。
肉カレーの看板がとても美味しそうに見えた。
少し休みたい。そういえばお腹も空いてきた。
◆分岐:少年はその立ち食いそば屋に・・・
入った:→7へ
入らなかった:→8へ
■7
ここで食事をして行ったほうが、落ち着いてアキバ巡りが出来るだろう。
少年はそう考えて立ち食いそば屋の暖簾をくぐった。
暖簾をくぐったとは言え、駅の立ち食いそば屋に暖簾は無いが、まあ気分だ。
少年は食券の機械の前で少し悩み、先ほどの看板にあった肉カレーを選んだ。
店員に食券を渡して数分ですぐにカレーが出てきた。早い。
立ち食いそば屋とはいえちゃんと席も用意されているので、休憩も出来そうだ。
少年は席についてすぐにカレーを頬張る。・・・美味い。
粉っぽい安いカレーに、やたらと味と油が濃い肉がよく合う。
夢中で食べている内に、すぐにカレーは無くなってしまった。
ちょっと足りないが、外食でお腹いっぱい食べるのも高くつく。
そうだ、カレーの材料を買って帰って、今日はカレーを作ろう。
そう思いついて、少年は店を出た。
少年はすぐに電気街口を出て、駅から少し遠い業務用スーパーに向かった。
秋葉原は電気街といいつつ、少し外れればそんな店もあったのを少年は思い出していた。
歩いて20分ほどで、黄色い看板の業務用スーパーに到着した。
少年はすぐにカレー粉やたまねぎや肉といった材料をカゴに入れて会計に向かった。
今日はちょっと拘ったカレーを作ろう。そう考えると少年の心はわくわくしてきた。
電気街ではなかったが、秋葉原でわくわくするものに出会えた少年は、足取りも軽く帰路に着いた。
少年にひとつ、料理という趣味が増えそうな予感がしていた。
(料理人のエンド)
■8
時間は夕食には丁度いいが、ここで食事をして休んでいると、
肝心の電気街の店が閉まってしまう時間になるかもしれない。
少年は食欲をお腹の底に押し込めて、その店を素通りした。
その後、しばらく駅の中をぐるぐると回って、少年はやっと電気街口に到着したのだった。
→5へ
■9
少年は駅前のゲームセンターの数件隣にあるラヂオ会館に向かった。
秋葉原と言えばラヂオ会館というイメージもあるが、実際の所、少年はラヂオ会館があまり好きでは無かった。
ラヂオ会館が夜8時という早い時間に閉店してしまう事と、
そのためにさらに早く店じまいされるのが少年には好きではなかった。
それでも見るだけならタダだと考えて、ラヂオ会館に向かった。
→24
■10
少年は赤い看板のゲームセンターへ向かった。
有名なゲーム会社の名前がついたその店は、店に入る前から活気が溢れていた。
店先の店員はマイクを使ってギャーギャーと何かを言っている。
よく聞くと、どうやらくじ商品の販売のようだ。店頭に机を出し、販売スペースを作っている。
店の周りになんとなく集まっている人達はそのくじ目当てのようで、
販売スペースの前に行儀よく行列を作っていた。
行列の先頭でくじを引く度に、喜びの声やら落胆の声が上がっている。
どうせ当たりクジなんてごくわずかなのに、よく引く気になるなと少年は思った。
少年はくじ引きや宝くじといったものが好きでは無かった。
外れることの方が多いし、そもそも当たりでも自分の希望するものでなければハズレに近い。
ああいったものは、スリルを売り物にしているだけだ。そう思っていた。
どうしても欲しい景品があれば、それ単体を買えばいい。アキバにはそういう店がいくつもある。
◆分岐:そう思って少年はくじ売り場を・・・
通り過ぎた:→14へ
通りすぎようとした:→15へ
■11
少年は駅前のゲームショップを覗いた。
畳数畳ほどの店内は、数人立っただけで満員になるような狭さだった。
そこに新旧さまざまなゲームハードとソフトが並んでいる。
その中のひとつに少年の目が止まった。最近発売されたゲームソフトだ。
それは魚になって敵と銃で撃ち合うゲームだった。
少年が持っているゲーム機では動かないので、買っていなかったものだった。
そのゲームとセットでゲーム機も売っている。さすがにゲーム機はそこそこの値がする。
◆分岐:少年はそのゲームを・・・
買おうと思った:→12へ
買わなかった:→13へ
■12
前から気になっていたゲームだし、丁度いいからゲーム機ごと買ってしまおう。
今日は幸いにも持ち合わせがある。これも何かの巡り合わせだろう。
少年は少し迷った後に、そのゲームソフトとゲーム機のタグを持ってレジに向かった。
会計30000円。その金額が固まったかのように、ゲーム機の入った紙袋はずしりと重かった。
こんなに重いのなら、帰りに買うべきだったか。少年は少し後悔した。
買ったゲームをすぐにやりたいし、今日はもう家に帰ろう。
まだ秋葉原に着いたばかりだが、少年は店を出るとそのまま駅に向かった。
今日は帰ってからゲーム機の設置をして、すぐにゲームを始めよう。
新しいおもちゃはいつもわくわくさせてくれる。少年は期待に胸を膨らませて帰路に着いた。
(ゲーマーのエンド)
■13
欲しいがやはりゲーム機ごと買うのは高価だ。
それにまだ秋葉原に着いたばかりで、他のところにも行ってみたい。
少年は一旦そのゲームの事を忘れて、店を後にした。
→9へ
■14
くじなんて買っても当たりはしない。そのお金で美味しいものでも食べたほうが良い。
少年は足早にくじ売り場を後にした。
→9へ
■15
しかしそこで、はたと足を止めた。
・・・今日は新しい刺激を求めてここ秋葉原に来たんだ。
今までと同じことをしていたら、同じことにしか出会えないんじゃないか?
くじの賞品をみると、少年がそこそこ好きなアニメのグッズだった。丁度いいかもしれない。
そう思いついてしばらく立ち止まって考えた後、少年はくじびきの列に並んだ。
→16
■16
ささやかだが新しい挑戦に踏み出したのもつかの間、
待ち時間に少年は少し後悔していた。
少年は待つのが嫌いだった。
ある調査によると、人が一生の内で待つのに使う時間は数年分もあるらしい。
そんな話を聞いてから、待ち時間は死の時間、そう考えていた。
◆分岐:やっぱり列を離れようか?迷った少年は・・・
列を離れようと思った:→17へ
それでも列に並び続けた。:→18へ
■17
並んでいる時間が勿体無い。次の店に行こう。
そう考えて少年は行列を抜けた。
結果としてお金も使わずに済んだし、これでよかったのだと納得した。
→9へ
■18
いやいや、これも挑戦だ。少年は我慢した。
そうして視線を彷徨わせている内に、くじ引きが見える所までやってきた。
くじ引きの行列は見た目ほど時間を取られるものではなかった。
少年はもう列を離れることは考えず、来るべき挑戦にわくわくしていた。
少年の番が訪れた。代金は800円。結構高いな。
またちょっと後悔しつつ、1000円札を差し出す。
お釣りを受け取っていよいよくじ引き。箱の中から券を引く形式のようだ。
箱の中に手を突っ込んで、中身をぐるぐると触る。
◆分岐:少年はくじを・・・
祈りながら引いた:19
当たりクジの特徴を推理した:→20へ
適当に引いた:→22へ
■19
どうか当たりますように。少年は祈る気持ちでくじを引いた。
店員に引いたくじを渡す。開封すると結果はE賞。
E賞は何だろうと思っていると、店員が景品を差し出した。
「E賞のグラスです!」
どうやらE賞はグラスらしい。中を覗くと、キャラが印刷されている。
自分が一番欲しいものではなかったが、800円でキャラクターグラスならまあまあか。
少年がそう考えて売り場から離れた所で、ふと前にいる若い女から声を掛けられた。
「あの・・・そのグラス、良かったら交換してもらえませんか?」
どうやらこの景品が欲しいらしい。どうしよう。
◆分岐:少年はその女の申し出に対して・・・
あげてしまおう:→21へ
もっと良い景品と交換してもらおう:→23へ
■20
当たりくじは管理上、ハズレくじとは別の扱いだろう。
もしかしたら店員が後から追加するタイプかもしれないし、組になっている物かもしれない。
いずれにせよ、抜けが無いように確認しやすくしてあるはずだ。
それなら、他のくじとは違う特徴があるはず。
そう考えて、少年は箱の中のくじを引っ掻き回した。
箱の中のくじを何度も触って確認する。紙のようなくじは四角くて、どれも同じに感じる。
しばらくそうしていて、そろそろ店員の顔が引きつって来た頃、
他とは違う感触を感じたような気がした。これだけ新しい・・・?
そう感じた瞬間、少年はさっとくじを引いた。
店員はそれを受け取って開く。そして・・・
「おめでとうございます!B賞、赤髪キャラのフィギュアが当たりです!」
高らかに声を上げると、カランカランと鐘を鳴らした。
景品の箱が差し出される。周りの人たちはその様子をじっと見ている。
少年は嬉しさ半分、恥ずかしさ半分で景品の箱を受け取った。
まさか当たるとは思わなかった。
少年はほくほく顔で駅に向かった。
はやく帰って撮影したい。なんなら高く売ってしまっても良いだろう。
少年はわくわくして足早に駅に向かい、帰路に着いたのだった。
(ギャンブラーのエンド)
■21
それほど欲しい景品でもないし、荷物にもなる。
「もしよかったら使って下さい」
少年はそう言ってグラスの入った箱を差し出した。
「良いんですか?ありがとうございます!」
その女は嬉しそうにぴょこんとお辞儀をして、グラスの箱を受け取った。
「それじゃあこの黄髪キャラのタオルをあげますね」
「いや、いらないよ。そんなに欲しかった物じゃないから」
「でもそれじゃ悪いです」
「いいって」
食い下がる女に、少年は面倒くさそうに女の顔を見ずに返事をした。
「でもそれじゃ本当に悪いので・・・そうだ、これあげます」
そういって女が差し出してきたのは、青髪キャラのストラップだった。
少年が持つにはかわいすぎるし、そのキャラのファンでもなかったが、
これ以上断るのも面倒なので、少年はそれを受け取った。
そこで少年は初めて相手の顔を見る。学生位だろうか、自分と同じくらいの年代の少女だった。
茶色のニット帽を被ったその少女は、お礼にもう一度おじぎをすると、人の波に消えていった。
少年は他人と話をして少し疲れを感じたが、次の店に移動することにした。
→9へ
■22
お手製のくじなら当たりくじとハズレくじで特徴があるだろうが、これは機械印刷。
特に何の手がかりも得られずにくじを引いた。
店員の男はそれを受け取るとベリッと開封した。
・・・I賞?
I賞って何だ?
景品の表を見ると、上位賞のフィギュアやらパネルやらの下にひっそりと、I賞:シールとあった。
渡されたのは、その辺で配ってそうなちっさなシール。キャラの笑顔が憎らしい。
少年はI賞のシールを手にすると、最初の挑戦に敗れ肩を落として売り場を離れた。
やっぱりくじ引きなんてやるものじゃない。スリルが目当てでやるだけだ。
売り場の周りでは、くじを引いたが目当ての商品が当たらなかった人達が集まり、ちょっとした交換市になっていた。
それを見て少年は、人々のたくましさにちょっと感心した。
しかし最下賞の少年に声をかける人はおらず、少年も声をかけること無く、その場を後にした。
→9へ
■23
少年はそう考えて、女に切り返した。
「もっといい景品と交換ならあげてもいいよ」
その時に相手の顔を初めてちゃんと見たが、自分と同世代の少女だった。
少女はしばらく迷った後で、持っていた紙袋から大きめの筒を取り出した。
「これでもいいですか?このポスターなんですけど」
そう言って差し出したのは、少年がそこそこ好きな、桜髪キャラのポスターだった。
「ああいいね、それと交換しよう」
しめた、これは得をした。少年はそう考えて、交換を受け入れた。
少女はグラスを嬉しそうに眺めて、そのまま人の波に消えていった。
少年がその後姿を眺めていると、今度は別の若い男に声をかけられた。
「すいません、そのポスター、何かと交換出来ませんか?」
少年はそれに対して、こう答えた。
「何と交換できます?」
そんなやり取りを何人かと続けていく内に、少年の手にはいつの間にか、
A賞の緑髪キャラのフィギュアが握られていた。
景品のトレードを続けた結果、少年は一番欲しかった景品を手に入れていたのだ。
少年はほくほく顔で駅に向かった。早く帰ってこのフィギュアを開けたかった。
帰ったら撮影してみよう。いくらぐらいの価値があるんだろう。
少年はわくわくしながら家に帰ったのだった。
(わらしべ長者のエンド)
■24
かつてゲームの題材にもなったラヂオ会館は、近年の立て替えですっかりその姿を変えていた。
面影といえば、時代遅れの黄色いネオン看板くらいなもので、中は真新しいビルになっていた。
1階の出入り口付近には、観光地らしくおみやげ屋。
その横にはカードゲームショップなど、観光客にはほとんど縁が無さそうな店が並んでる。
まるで観光地になることに抵抗しているようにも見える。
少年はその抵抗に共感を覚えつつ、カードゲームショップを覗いてみた。
高価なシングルカードが並べられている横で、初心者用のカードセットも並んでいる。
◆分岐:そのカードショップでカードを・・・
買ってみる:→25へ
買わない:→26へ
■25
これも何かの縁だ。買ってみよう。初心者用カードセットの一つをレジで指定した。
折角買ったんだから、対戦したい。しかしその店の対戦ブースは小さく、すでに満員だった。
しようがない。ルールも分からないし、家に帰って調べてみよう。
そのまま少年は駅へと向かった。
新しいおもちゃを手に入れた少年は、わくわくしながら帰路に着いたのだった。
(カードゲーマーのエンド)
■26
しかし少年は既にカードゲームを止めていたので、新しく買おうとは思わなかった。
その後はカードゲームショップを軽く流して奥へと進んだ。
→27へ
■27
一人用の狭いんだか広いんだか分からないエスカレーターに乗って上へ。
2階にあるレンタルケースショップが見えてきた。
レンタルケースショップとは、透明なアクリルのロッカーのようなものが並んでいて、
各スペースを貸し出してフリーマーケットのような事をしている店だ。
秋葉原にはラヂオ会館以外にも数店あって、この店は特に盛況な方だった。
言葉や外見から海外から来たと思われる男女が、興味深そうにケースを覗いている。
ケースの中身は秋葉原の客の需要を見越して、フィギュアやゲーム、アイドルグッズなんかが多い。
値段はまちまちだが総じて定価よりも高い。歩きまわって探す労力を金で買うといった値段。
既に普通の店では売り切れたものもすぐに買えるのはいいが、それも観光客の方が恩恵は大きい。
少年は買う予定は無く、文字通りのウィンドウショッピングをした。
買い逃していたフィギュアなんかが、びっくりするような値段で売られている。
箱の中で笑っているフィギュアが、昆虫採集の標本のようだ。
ただの転売ではなく、プラモデルやガレージキットの完成品の販売もある。
まるでプラモデル屋の見本のように精巧に作られているが、
数千円のプラモデルが数万円になっている値段で、はたして売れることはあるのだろうかと少年は思った。
ガレージキット製作代行なんてのもあるが、こちらは実際に完成品を見てから買える。
自分でキットを持ち込むことは出来ないが、物を見てから買えるのは便利だ。
かつて少年は旧ラヂオ会館時代、同じようなレンタルケースショップで完成品ガレージキットを買い逃した事があった。
少年が好きなキャラクターの水着姿のもので、値段は6万円以上だったと記憶している。
値段に躊躇している内にその商品が無くなってしまい、元のガレージキット自体も見かけなくなったのだった。
数年前の買い逃しをまだ覚えている辺り、無理をしてでも買った方が良かったのかもしれない。
そう思って中を覗いた少年は、展示されている完成品ガレージキットのひとつに目を奪われた。
以前買い逃したものとは違うが、同じアニメの女の子が水着で座っているキットだ。
これもいいな、少年はそう思った。
◆分岐:少年はその完成品ガレージキットを・・・
買ってから後悔する:→28へ
買わずに後悔する:→29へ
■28
ゲーム機でも買えそうな値段だが、既にキットも見なくなって久しいものだった。
ここで買い逃したらまた何年も後悔することになる。
それなら買って後悔しよう。少年は注文用紙を記入し、店員に差し出した。
しばらくの梱包作業の後、会計は終わり少年の手には先ほどのガレージキットがあった。
意外とかさばるので、今日はもう帰ろう。少年はそのまま駅に向かった。
そこでふと気がついた。ICカードのチャージが足りない。
財布の中を見る。さっきの買い物でほぼ空になっている。
なんてこった!電車に乗るお金がない。少年は家まで歩きで帰ることになってしまった。
恐らく1時間以上、あるいはもっと掛かるかもしれない。
少年はわくわく半分、後悔しながら帰路についた。
(すっからかんのエンド)
■29
確かに欲しいが、そのお金でもっと楽しいことが出来るかもしれない。
また数年間後悔することになっても、同じように我慢できるだろう。
そう考えて少年は次の階に向かった。
→30へ
■30
3階と4階はD-GOODSというグッズ屋兼本屋が連続している。
少年はこのショップはサービスが悪くて苦手だった。
しかし見るのはタダだと自分に言い聞かせ、店内に進んだ。
3階は本屋で、漫画やライトノベル、画集が並んでいた。
しかし少年はそれらにはほとんど目もくれず、店の奥まったコーナーに進んだ。
そこは同人系メインのコーナー。
ここは本屋だがこのコーナーでは中古品も扱っていて、
さらには本だけでなく、グッズやゲームなども扱っていた。
同人グッズのタペストリーが、縁日の出店のごとくあちこちに吊るされている。
ガラスケースにはアニメ絵枕カバーがぎっしりつめ込まれていた。
それらをガラス越しに眺める。かわいい、しかし高い。
少年はその中で、展示されている抱き枕カバーの一つに目を奪われていた。
少し前に放送が終わった、黒いツインテールの少女の絵柄だった。
悩ましい表情をしたそれは、少年にはとても魅力的に見えた。
◆分岐:抱きまくらカバーを・・・
買う:→31へ
買わない:→32へ
■31
抱き枕なんて使ったこともないが、だからこそ新しい発見があるかもしれない。
少し高いが元々カバーは結構値が張る物だ。
自分にそう言い訳して、少年は店員を呼んだ。
店員はガラスケースの鍵を開け、指定の抱き枕カバーを出してくれた。
会計を済ませる。そこで計算外のことが起きた。
店員が入れた袋は明らかに小さく、抱き枕カバーが半ば外から見えていた。
少年はそのことを指摘したが、この店にはこれより大きな袋は無いらしい。
やっぱりこの店は苦手だ。少年は仕方なくそれを受け取った。
いくらアキバとはいえ、悩ましい姿の少女が印刷された物を持ってうろうろしたくない。
少年はそのまま駅に向かった。
しかし駅の中から家までは普通の街、少年は注目を浴びまくっていた。
恥ずかしさに下を向きながら、少年はわくわく2割、恥ずかしさ8割で帰路に着いたのだった。
(羞恥のエンド)
■32
少年は抱き枕どころか布団にも不自由する生活だったので、
またしてもウィンドウショッピングをするだけだった。
10000円以上もする抱きまくらカバーは、冒険するには高すぎた。
→33へ
■33
同人誌コーナーにも足を運ぶ。壁の様にそびえ立つ本棚に、ぎっしりと詰め込まれている。
本棚の隙間のような通路で、客が熱心に本棚の本を確認している。
基本的に男性向けの内容だが、意外にも女性客もそこそこいる。
古い同人誌は中古でしか手に入らないし、絵の勉強だろうかなどと少年は思っていた。
同人誌コーナーにもガラスケースがあって、中には有名作家の本がびっくりするような値段で売られている。
お金を出しても買えないよりはましだが、またしても少年には高すぎる売り物だった。
それらに比べるとまだ中古ゲームの方が安く感じられる。
しかし少年のおんぼろパソコンでは、最近のゲームは少々荷が重い。
どちらも買うこともなく、少年は次の階へ向かった。
→34へ
■34
4階も3階と同じD-GOODS、こちらは古本と中古グッズがメインのフロア。
店内は大勢の客で賑わっていて、キーホルダーやグッズが袋に入れられて所狭しと釣られている。
人気のマスアイやライブラヴ、コレ艦だけでなく、比較的古い作品のグッズも多い。
それを目当ての観光客らしき人も多数見受けられる。
中古グッズは品数や値段で作品やキャラの人気がわかるので、少年は好きだった。
買うことはなくても、見ているだけでも人の気持ちが感じられるようだった。
自分が好きな作品やキャラのグッズが多かったり高いとちょっと嬉しい。
逆に安いとがっかり半分、自分にとっては良いかもしれないと思う。
数日前まで安かったものが、放送中のアニメの展開次第で値段や品動きがころころ変わるのも面白かった。
少年は何かひとつ買おうかと思って店内をふらふらした。
そこで目についたのは、今放送中の人気アニメのキーホルダーだった。
何の景品なのか少年には分からなかったが、値段も1000円程で高くないように見える。
◆分岐:そのキーホルダーを・・・
買う:→35へ
買わない:→36へ
■35
お気に入りの紫髪キャラのキーホルダーをひとつ取ってレジへ向かった。
実はそれもくじの景品で、どちらかというとハズレ商品の範疇だったが、
そうとは知らない少年は知らぬが仏だった。
少年はそのキーホルダを鞄にしまい、次の階へ向かった。
→37へ
■36
しかし少年は考えなおした。
1000円もあれば立派な食事ができる金額だ。それに置き場所も必要になる。
少年はそう考えて冷静さを取り戻し、次の階へ向かった。
→37へ
■37
5階には老舗の山脈堂のショップがある。
以前はラヂオ会館の中でもメインに近いショップだったが、
新しくなったラヂオ会館では、他のショップの裏側になって通路から見にくい場所になり、
また最近は派手な売り方もしていないのもあって、こじんまりとしていた。
少年にとって初めてのフィギュアはここ山脈堂だったが、
この手の専門店特有のとっつきにくさで、最近はとんとご無沙汰だった。
店内は商品が積み上げられていて、半分倉庫のようにも見える。
壁際にぎっしりとガチャガチャが積まれている。中身は怪獣か何かの豆フィギュアのようだ。
少年はガチャガチャを普段は全くやらない。
しかし不思議なもので、他人が引いているのを見るとやりたくなってくる。
◆分岐:ガチャガチャを・・・
やる:→38へ
やらない:→39へ
I賞のシールを持っている:→40
■38
少年は数あるガチャガチャの中で、海洋生物ガチャガチャに興味を持った。
財布の小銭を取り出し、ガチャガチャにセットする。
ガチャガチャと名前の由来であろう音をさせて、機械が景品を吐き出した。
中身はマグロのようなイルカのような、魚の豆フィギュアだった。
・・・やっぱりガチャガチャは景品を引くまでを楽しむゲームだな。
少年はガチャガチャの景品に微塵もわくわくを感じず、次の階に向かった。
→41へ
■39
数百円でも不要な景品に払うのは勿体無い。
こういうのはあれだ、確か射幸心とか言うんだ。
少年は覚えたての射幸心なんて言葉を使ってひとり納得すると、足早に次の階に向かった。
→41へ
■40
少年はガチャガチャを回そうとして、さっきのゲームセンターでの事を思い出した。
・・・慣れないくじで痛い目を見たばかりだった。
少年は取り出した小銭を仕舞い、ガチャガチャを引かずに店を後にした。
→41へ
■41
6階にはグリーンキャリアーというホビーショップがある。
フィギュアとプラモデルとカードで店内が3等分されていて、どこも人で賑わっていた。
特にカンタムプラモデル、略してカンプラコーナーは最近いつも外国人で盛況だった。
ポイント分を考えると、ここで買うよりもヒックカメラやmamazonで買う方が安いが、
払う現金が少なくて済むのは外国人観光客にとっては都合がいいのだろうと、少年は理解していた。
少年はプラモデルを多少は作るが、どちらかというと子供の時の方が夢中だった。
しかしプラモデルは値上げが穏やかなのもあって、最近はフィギュア趣味に食い込んでいた。
店内の外国人観光客に混じって少年も商品を見てまわる。
カンプラも現在放送中の内容に伴って売れ行きが変化するのが面白い。
今は最新作の主人公機が活躍しているのもあって、そのカンプラはよく売れていた。
◆分岐:最近、カンプラを買ったことが・・・
ある:→42へ
ない:→43へ
■42
少年も真似をしてそれを買おうかと手に取ってから、ふと思い出した。
半年ほど前に放送していた別作品のカンプラを買ってすぐに、
それの完成形の様な物が登場してえらい損をしたことがあったのだった。
その時の事を考えて、少年は手に取ったカンプラを元に戻した。
もう少しして完成形が出てから買おう。大人のずるさも少年は身に付けつつあった。
少年は次の階に向かった。
→44へ
■43
近頃カンプラを作ってないし、久しぶりに組んでみるのもいいかもしれない。
少年はそう考えて、新製品とポップの貼られたカンプラをレジに持って行った。
レジは観光客とおぼしき人達で混んでいたが、そんなに待たされることもなく買うことが出来た。
早く帰って買ったカンプラを組みたい。少年はそのまま駅へ向かった。
久しぶりのカンプラにわくわくしながら、少年は帰路についたのだった。
後日。
少年が買ったカンプラは、変形機構や追加武装の付いた完全版が発売され、
それを知った少年はえらい損をしたと、うなだれるのだった。
(カンプラビルダーのエンド)
■44
7階にはBZONEというドールメーカーの直営ショップがある。
エスカレーターを上った目の前にショーケースがあり、小振りなドールが多数展示されている。
それを見て店内に足を運ぶ観光客も多いのだろう。店内は人で賑わっている。
少年はドールにそこまで興味があるわけではないが、フィギュアの延長として興味はあった。
店内に入ると、さらにいくつものショーケースが並んでいて、
中には季節ものの衣装に身を包んだドールたちが並んでいる。
もしかして、自分よりも高くてセンスの良い服を着ているかもしれない、少年はそんな風に思った。
店の中央のレジの前、一番目立つ位置のショーケース内では、
サンタ衣装に身を包んだドールたちが並んでいた。
その横ではもう晴れ着を着たドールまで用意されている。
◆分岐:少年はそうしたドールの衣装に興味が・・・
あった:→45へ
なかった:→46へ
■45
ドール本体は値が張るが、衣装だけだったらフィギュアと同じくらいの値段で買えそうだった。
そうだ、家にあるお気に入りのフィギュアに着せるドール服を買っていこう。
少年はそう思いついて、晴れ着のドール用衣装の中から適当なサイズの物を選んだ。
家にあるフィギュアの幾つかを思い浮かべる。似合いそうな物がいくつかある。
そう考えると、メイドさんの服も着せてみたくなる。
少年は更に他の衣装にも手を伸ばした。
そうしている内に、少年は自分の服よりも高いドール服を何着も買っていた。
「・・・自分の服も買っていくか」
そうひとりつぶやくと、少年はラヂオ会館を出て駅の商業施設にあるウニクロに向かった。
そこで売っている服は案の定、さっき買ったドール服よりも安いものだった。
少年はなんだかフィギュアやドールの召使いにでもなった気になりながら、
セール品であろうお手頃価格のコーナーから、自分の服を見繕った。
そうして少年は大小何着もの服を抱えて店を出た。
この建物には直接ホームに向かえる改札があるのだった。
改札をくぐりながら少年は、今日買った服をフィギュアに着せるコーディネートを考えていた。
・・・ついでに自分のコーディネートも考えよう。
少年はわくわくしながら帰路に着いたのだった。
(おしゃれエンド)
■46
こうして着せ替えるのは楽しいが、自分の服よりも高いような服を何着も買えるものではない。
少年はプライドとして、フィギュアや模型の装飾に、自分の衣服以上の金額はつぎ込まないと決めていた。
少年は店内のショーケースを軽く見て店を出て、次の階に向かった。
→47へ
■47
8階にはホークスがある。こちらもBZONEと同じくドールの老舗だ。
BZONEとは違い、ホークスは大きめのドールがメイン。
そしてプラモやフィギュア、モデルガンや鉄道模型なんかも並んでいる。
少年はまず店内入り口のドールコーナーを見てまわる。小型犬ほどの大きさのドールが並んでいる。
アニメコラボのドールも多く、少年の知っているキャラクターのドールもあった。
大きさのせいか、ドールの服は完全に少年の服よりも高価なものだった。
少年はその中のひとつに目が止まった。
それは少年が好きなアニメのヒロインを意識したドールで、
ヒロインをイメージした白い肌のドール本体に、黒いドレスがセットになったものだった。
以前に発売されて、少年が買い逃したもののリメイクのようだった。
ただいま受注予約受け付け中。案内板にはそう書いてあった。
この店の人気商品は抽選販売であることが多く、買いたくても買えない事が多い。
それが今回は受注生産、つまり予約すれば買えるということのようだ。
◆少年はそのドールがどうしても・・・
欲しい:→48へ
欲しくない:→49へ
■48
少年はしばらく考えた。すごく欲しいが、そのドールセットは数万円もする。
その金額なら新しいパソコンが買えてしまう。どうしよう。
さらに少年は考える。案内板を見ると、納期は来年の秋、つまり半年以上先だった。
それなら、月に1万円ずつでも溜めておけば、十分に買えるのではないか。
まるで通信販売の売り文句のようなことを事を考えると、急に買える金額のように思われた。
意を決して、少年はレジに行って予約の手続きをしたのだった。
ドールの予約を終えて予約券を受け取った少年は、そのまま駅に向かった。
考えすぎて疲れてしまったので、今日はもう帰ろうと思った。
しかしその疲れは心地の良い疲れだった。
あと数カ月後には、憧れだったあのドールが手元にやってくる。
そうしたら何をしよう。他のアニメヒロインの衣装を着せて写真を撮ろうか。
そう考えると少年は、とてもわくわくしながら帰路に着いたのだった。
その時点で少年は、毎月1万円ずつ溜める生活がどういうものか、
それが半年続くとどうなるのか、予想だにしていなかった。
(分割払いのエンド)
■49
いや、欲しくないことはない。
しかし、ドールセットはちょっとしたパソコンを買える金額で、簡単に買える金額では無かった。
少年は諦めて、展示されているドールから離れた。
他にも自前のドールを撮影するためのブースもあり、常連客らしき人で賑わっていた。
ドールを持っていれば、そこで撮影をさせてもらえて楽しいだろうなと思う。
しかし少年は何も持っていないし、そこに知り合いがいるでもないので居場所はなかった。
→50へ
■50
続いてプラモデルコーナーを覗く。戦闘機や軍艦の物が多い。
見本がショーケース内にあって、どれも緻密に組み上げられて塗装されている。
子供の頃は軍艦のプラモデルを作ったりもしたが、最近はご無沙汰だった。
軍艦のプラモデルは難易度も高いので、手軽なカンプラコーナーを覗いてみる。
やはり最近の物が多い。そしてこの店はポイント制のせいか、グリーンキャリアーよりも高い。
◆分岐:買うなら・・・
安い店:→51へ
高い店:→52へ
■51
当然だ。同じ物を買うなら安いほうが良い。
買うなら後でグリーンキャリアーに行ってみよう。
そう考えて、少年はプラモデルコーナーを後にした。
後はモデルガンと鉄道模型コーナーだが、少年はそのどちらもさして興味はないので通り過ぎた。
次の階に向かおう。
→55へ
■52
高いとは言っても定価で、さして差のある金額では無かった。
それに店ごとにポイントも付くし、長い目で見れば損をするわけでもない。
むしろ気になったものを後回しにすると忘れてしまったりする。
気になったものは気になった時に買ったほうが良い。
少年は値段を気にすること無く、欲しくなったカンプラを持ってレジに向かった。
そうして会計を終えて財布を見ると、完全に予算をオーバーしていた。
それを見て、少年はちょっと損した気分になっていた。
荷物も増えたし、もう帰ろうとエスカレーターを下っていくと、
先ほどのグリーンキャリアーのフロアにやってきた。
軽く中を覗くと、さっき買ったカンプラがもっと安い値段で売られていた。
しまった、やはりこちらで買うんだったか。少年はちょっと後悔した。
ポイントで支払った分にはポイントが付かない。
つまりポイント制は長い目で見ると損だと分かったのだった。
少年は欲しいものを買えた反面、下手なお金の使い方に反省して、
わくわく半分自戒半分で帰路についたのだった。
(買い物下手のエンド)
■53
9階にはカードゲームショップがある。
カードゲームは代表的なものを昔やっていたが、対戦する相手がいなくなったこともあって、最近はやっていなかった。
以前ならカードゲームの対戦相手は学校で見つけるのが常だったが、
最近はカードゲームショップにフリー対戦スペースが設置されていることが多く、
そこで見ず知らずの人と対戦したり、あるいは店員が相手をしてくれることもあるようだ。
そのカードゲームショップにも奥に対戦コーナーがあり、
直接は見えないが声の感じから人がたくさんいるようだった。
シングルカードのショーケースにも人が何人もいて賑わっている。
自分がやっていた時にこういう対戦ブースがあれば、あるいは今もやっていたかもしれないと少年は思った。
◆分岐:今からでも始めてみようか、少年は・・・
そう考えた:→54へ
躊躇した:→55へ
■54
友達が出来るかもしれないし、カード代金くらい安いものかもしれない。
最近のひとりでやるゲームよりも、人と面と向かってやるゲームのほうが、
人と接するので楽しいのではないかと考えたのだった。
レジで初心者用らしいMTCというカードセットを注文する。そして対戦ブースに向かった。
誰か相手になってくれる人はいるだろうか。
少年はわくわくしながら店の奥に進んでいった。
・・・そしてしばらく時間が経った後、相変わらず少年は1人で店に佇んでいた。
そもそもルールも知らないような、見ず知らずの初心者の相手なんているわけもなかった。
仕方なく少年は、他の人のプレイを見学してから店を後にした。
→56へ
■55
しかし今更もう始める気にはなれず、ショーケースを適当に見て回った。
その中のひとつ、高額商品のショーケースの前で足を止めた。
昔からあるレアカードの実物が並んでいて、中には600000円の値段が付いている物もあった。
少年は0の数を何度も数えた。・・・やっぱり600000、60万円だ。
こんな不用心なショーケースに、そのカード以外にも数十万円のカードが何枚も入れられている。
もっともこんなレアカード、換金するのにも足がついてしまうだろうけど。
最近は古いカードゲームのパックに、何百万円もの値段がついているんだとか聞いたことがあった。
カード単体の値段を見るに、その噂はあながち嘘でも無いんだろうと思った。
少年は金額の大きさにため息を付いて、次の階へ向かった。
→56へ
■56
10階はイベントスペースと倉庫になっている。現在、イベントは開催されていないようだ。
そして小さなベンチがあり、瓶のコーラが売っている。
少年は立ち止まって、ふぅと一息ついた。少し休憩していこう。
瓶のコーラを買ってベンチに向かう。
先客がいるようなので、ベンチの逆側に腰を下ろした。
◆分岐:
青髪キャラのストラップを持っている:→57
青髪キャラのストラップは無いが、魚の豆フィギュアを持っている:→58へ
青髪キャラのストラップも魚の豆フィギュアも無いが、MTCカードセットを持っている:→59へ
特に何も持っていない:→60へ
■57
これだけまわっても、何も楽しいことが見つからないなんて。
少年はがっかりして、ついため息を漏らした。
「「ふぅ」」
ため息がシンクロする。隣の先客もため息を付いたようだった。
ふと見ると、その人物は茶色のニット帽を被っている。
ここに来る前にゲームセンターで景品を交換した少女のようだ。
「あ・・・」
向こうもそれに気がついたらしい。
その少女はさっき交換した景品以外、特に荷物が増えているようではなかった。
自分と同じく、何かを探すでもなくここにやってきたんだろうか。
・・・気になる。声を掛けてみようか。
◆分岐:少年は声を・・・
掛けた:→61へ
掛けなかった:→62へ
■58
少年はかばんの中を見た。
中にはさっきガチャガチャで買った、魚の豆フィギュアがあった。
これ自体には全くわくわくを感じないが、確かに今日の収穫と言える物ではあった。
今日は興味を感じないものでも、明日は夢中になっているかもしれない。
今は興味が無いものでも、それを見つけられたということに意味がある。
少年はそう考えると、勢い良くコーラを飲み干して席を立った。
まだ時間はあるし、アキバの街に繰り出すのもいいかもしれない。
少年はわくわくを求めて歩み始めた。
(可能性のエンド)
■59
少年はかばんの中を見た。
中にはさっきカードショップで買ったMTCカードセットがあるだけだった。
結局、誰にも相手をしてもらえず、金の無駄遣いだった。
そうしてコーラを飲んでいると、隣の先客が席を立ったようだ。
ベンチには少年ひとりだけが残った。
こうしてひとりでいると落ち着く。無理に他人と関わる必要もないだろう。
家で何かひとりで出来ることでもしよう。そういえば終わっていないゲームや本もある。
そうして少年は席を立って駅に向かった。
秋葉原で新しいわくわくには出会えなかったが、既にあるわくわくを再発見出来たのは良かったかもしれない。
そう考えて少年は帰路に着いたのだった。
(孤高のエンド)
■60
今日は楽しい物を探しに来たが、やはり少年の気を引いてくれるものは無かった。
興味を引くものはあるが、お金がかかったり、あるいは1人では楽しさが半減だったりで、
今から始めようと思うものは無かった。
まあこんなものだろう。
しばらく休憩していると、隣人はいつの間にか席を立っていた。
気がつけばラヂオ会館閉館の時間が近づいてきた。
秋葉原は最近は遅くまでやる店も増えたが、基本的には夜早い街だった。
少年は足早に駅に戻り、帰路についた。
家に帰ってゲームなりテレビなりを見よう。
今日は何も見つからなくても、明日には何か見つかるかもしれない。世の中にはたくさんのことがある。
帰りの電車に揺られながら、少年はそんな風に考えていた。
(探求のエンド)
もしもふたたび秋葉原の街に繰り出す気があるのなら:→1へ
■61
少年はなけなしの勇気を振り絞って、その少女に声をかけた。
「・・・さっきはどうも。あれから何か買いました?」
少女は声を掛けられて、ちょっとどきっとしたようだった。
しかし少年がさっき話をした相手だと気がついたようで、警戒を少し解いたようだった。
「いえ、何も。」
「僕も、楽しいこと何も見つからなかった。」
「・・・」
「このキャラ、好きなんですか」
少年はさっき交換したキーホルダーを見せて少女に尋ねた。
すると少女はエンジンが掛かったかのように話し始めた。
「青髪くん好きなんです!グッズ大体持ってます!」
少女は自分が話しすぎたと感じたのか、顔を赤くしてうつむいてしまった。
少年はそんな少女の話をもっと聞きたいと感じていた。
他人の話に興味を持つなんて、少年には珍しい事だった。
しかしそれがどういう事なのか考えて、少年は顔を赤くした。
異性に、それも見ず知らずの相手に話をするなんて、下手したら怒られるかもしれない。
◆分岐:それでも少年は少女に声を・・・
掛けた:→63へ
掛けなかった:→62へ
■62
ベンチには少年と少女のふたりっきり。
どちらも何かを言うでもなく、気まずい時間が流れる。
その気まずさを誤魔化すように、少年はぐいぐいとコーラを飲み干した。
空の瓶を手にしばらくうずうずとしていると、やがて隣で気配がした。
少女は立ち上がり、瓶をくずかごに入れるとエスカレーターを降りていった。
ベンチには少年1人だけが残った。
・・・やっぱり、こんなもんだよな。少年はそう納得して席を立った。
館内放送が聞こえてくる。いつの間にか閉館時間近くになっていたようだ。
今日はもう帰ろう。少年はそのまま駅へと向かった。
少年は少女から貰ったキーホルダを見た。
特に興味のあるものではないが、確かに収穫はあった。
また明日、別の楽しいことに出会えるかもしれない。
そう考えて、少年は帰路に付いた。
(失意のエンド)
■63
少年は顔を真っ赤にして少女に声を掛けた。
「その話、もっとしませんか?」
そう言われて少女は驚いたようだった。
警戒されただろうか?少年はそう思ったが、さらに勇気を出して言葉を投げかけた。
最初、少女は警戒したようで、適当に相槌を打つだけだった。
しかし共通の話題があるのも助けになって、ふたりの会話は徐々に弾んでいった。
・・・そうしてその後しばらくして、少年はくたくたになって駅に向かった。
わくわく感は全くなかった。自分がとんでもないことをしたような気がしていた。
少年は失意の中、電車に乗って帰路についたのだった。
→64
■64
後日、少年は秋葉原方面のホームで電車を待っていた。
あの日以来の秋葉原だが、今日は何となくではなく目的があって向かうのだった。
今日の少年は、少年にしてはちゃんとした身なりをしている。
どこに行こう、何を話そう。そんな事を考えていると、秋葉原方面の電車がやってきた。
待ち合わせ時間に遅れないようにしなければ。
少年はちょっと早めの時に到着するように、その電車に乗り込んだ。
あの日、少年は、秋葉原でわくわくする事に出会った。
それは、自分だけが勇気を出して得たものではない。
少年は自分だけで物事を成し得るとは思っていない。
そしてそのわくわくが未来永劫続くとも限らない。
でも確かに今、自分はわくわくしている。
その事実を噛みしめて、少年は今日もまた秋葉原へ行く。
(秋葉原通いのエンド)
2015/12/28 ver1.0
お読み頂きありがとうございました。
なお、この物語には17通りのエンディングがあります。
もしよかったら探してみてください。
2024/12/31 後書き変更。