プロローグ「暗い暗い黒の森」
皆様がこの小説を読んで頂いて
少しでもファンタジーの世界、「エトル・リーヴァ」へ行けることを願って
扉は開いております、いつでもお越しください
暗い暗い森の中、その中を通る一本の道
一台の馬車が雨を貫き、草花を踏み抜けながら風の様に走って行きます
その後ろを黒い馬に跨り、黒いローブで身を包んだ男達が追いかけます
お母様、と馬車の中にいた女の子はか細い声で呟きました
これからどうなるの?
遠い所にいくのよ
どんなところ?
ずっと楽しく暮らせるところよ
お母様も一緒?
...お母さんは、別のところに行くの
...どこに?
遠い所、でもあなたの事はずっと見てるわ
やだよ...一緒にいてよ
お母さんも一緒にいたいの...でも
やだよ!一緒がいい!
何か大きい石でも踏んだのか馬車が大きく揺れ始めた
揺れは収まらず、その車体を力に任せて横転してしまう
「女王様!ご無事ですか!」
馬車の運転手だった若い騎士が二人に駆け寄ってきた
「私は平気です、こうなってはどうにもなりません、彼らを迎え打ちましょう!」
追手はすぐそばまで来ている
馬車と馬なら結果は見えていた
馬車が横転した今、馬車を起こすにもどうにもならない
決心したように女王と呼ばれた女性は鞘から細身のレイピアを抜き、馬車を運転していた騎士も両手剣を持ち出す
ただ一人、その様子を見ていた少女
「お母様...」
「ルイン、貴方はこれを持っていなさい」
渡されたのは一つのペンダントだった
金一色で装飾が施されている
ルインと呼ばれた少女はこれが大事なものと知っている
一族に代々伝わる一族の証と、聞かされている
雨に濡れたそのペンダントを握りしめた
「貴方はこれを持ってその道を走りなさい、あとで必ず追いつきます!」
「でも、お母様!」
「早く!」
母親の顔は厳しさと悲しみに溢れていた
もうーー、分かっている
母がどうなるか、自分がどうなるのか
少女は走り出す
「あなた方のお相手は私がします、絶力できなさい!」
黒馬の追跡者にそう言い放ち、レイピアを構えた
娘との別れがこんなにも悲しいものかと
自分が過保護過ぎたのかもしれないと少しだけ後悔しながら熱くなる目頭を押さえる
その濡れた頬が雨によるものかそれともーー
プロローグ「暗い暗い黒の森」
今回の作品は、「王道ファンタジーもの」です
魔法や剣、のどかな自然で強力な炎を吐き出すでっかいドラゴン
耳の長いエルフやごっつい体のドワーフまで
あの日皆さんが読んでいた童話の世界
少しでも近付けれたらと思います