表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

第3話 小鳥遊さんの過去

近くの公園。

風が少し冷たい。

リティはいつものように、ジュエルを握りしめて座っていた。

メルの言葉が頭から離れない。

「いじめられる原因がある」

「加害者の方が将来性が高い」。

そんなブラックな論理に、心が疲れ果てていた。

そこに、小鳥遊アリスが現れた。

黒髪をなびかせ、クールな表情のまま、リティの隣に腰を下ろす。

「リティ。また一人で悩んでるの?」

リティは小さく頷いた。

「先輩…私、魔法少女なんて、向いてないかも。みんなから嫌われて…怪物が可哀想だって。」

アリスは静かに空を見上げた。

「私も、最初はそう思ったよ。」

リティは驚いて顔を上げた。

「先輩も?」

アリスは小さく微笑んだ。

いつものクールさが、少しだけ溶ける。

「うん。メルに選ばれた時、嬉しかった。でも、すぐに現実が来た。排除、排除って…。私も、マイノリティを傷つけてきた。」

アリスはポケットから、古い写真を取り出した。

幼い頃の自分と、年上の男の子。

男の子は笑顔で、アリスの頭を撫でている。

「これ、私の兄貴。名前は小鳥遊悠人。5歳差。」

リティは写真を見つめた。

「お兄さん、優しそう…」 アリスは目を細めた。

「優しかったよ。いつも守ってくれた。私、体が弱くて、学校行けなかった時期が長かった。いじめられることもあったけど、兄貴が全部受け止めてくれた。『アリスは俺が守る』って。」

アリスは話し始めた。声は静かだけど、どこか温かい。

「中学の時、私、初めて魔法少女になった。メルが現れて、『君は選ばれた』って。変身して、初めての怪物と戦った。あの怪物は…病気の子供だった。体が弱くて、みんなから避けられる存在。マイノリティの象徴だって、メルは言った。『排除しろ』って。」

アリスは拳を握った。

「私は…撃った。光のビームで、消した。兄貴は知らなかった。でも、後でネットで見た。『魔法少女が病弱な子を殺した』って炎上してた。私、兄貴に相談した。『アリス、何をしたんだ?』って、兄貴の声が震えてた。」

リティは息を飲んだ。

「それで…?」

「兄貴は怒らなかった。代わりに、抱きしめてくれた。『アリスは悪くない。お前はただ、夢を追いかけただけだ』って。でも、私は知ってる。あの時から、私の心に影が落ちた。兄貴はいつも、私を責めなかった。でも、自分を責めてた。『俺がもっと強く守ってやれれば…』って。」

アリスは写真を撫でた。

「兄貴は、大学行ってからも、私のことを心配してくれた。『アリス、魔法少女やめろ』って、何度も言った。でも、私はやめられなかった。メルの声が、頭に響くから。『社会のためだ』って。」


アリスは立ち上がった。風が髪を揺らす。

「でも、ある夜、決めた。兄貴が事故に遭ったんだ。交通事故。重傷で、意識不明。病院で、兄貴の手を握って、泣いた。『お兄ちゃん、起きて…私、守ってあげるから』って。」

その時、メルが現れた。

「アリスちゃん、兄貴を助けたい? もっと強い魔法少女になれるよ。でも、代わりに、もっと排除しなきゃ。」

アリスは拒否した。でも、兄貴の命が危なかった。

結局、変身した。新しい力で、兄貴の病室に怪物が現れた。『死の影』みたいなもの。

メルは言った。

「これを排除すれば、兄貴は助かる。」

アリスは泣きながら、ステッキを振った。

「マジカル⭐︎ビーム!」

怪物は消えた。兄貴は目を覚ました。奇跡の回復。

医者も驚いた。

でも、アリスは知ってる。

あの怪物は、兄貴の心の闇だったのかもしれない。

兄貴が自分を責め続けた、影。

「兄貴は今も、元気。でも、私のせいで、心に傷を負ってる。『アリス、俺のせいで魔法少女になったのか?』って、時々聞く。私は笑って、『違うよ。お兄ちゃんのためだよ』って言うけど…本当は、怖い。兄貴を失うのが。」

アリスはリティに向き直った。目が潤んでいる。

クールな先輩が、初めて見せる弱さ。

「リティ、私たちは似てる。夢を追いかけて、ブラックな現実を知った。でも、守りたい人がいる。それが、魔法少女の意味かも。兄貴のためなら、私はまだ戦える。君も、きっと。」

リティは涙をこらえきれなかった。

「先輩…ありがとう。私、頑張ってみる。」

アリスは優しく、リティの頭を撫でた。

「…本当に、いい子だね。」

二人は抱き合った。風が優しく吹く。

絆が、重く、温かく、心を満たす。


その夜、アパートに戻ったアリスは、スマホをチェックした。兄貴からメッセージ。

「アリス、元気? 」

アリスは微笑んだ。

返信を打とうとした時、通知が鳴った。

ニュースアプリ。

「今話題の魔法少女マジカル⭐︎魔女アリスの中身が熱愛!?」

記事の見出し。写真が添付されている。

アリスと兄貴のツーショット。

幼い頃の写真じゃない。最近の。

兄貴がアリスの肩を抱いて、笑ってる。

背景は公園。デートみたいに見える。

記事本文

「人気魔法少女アリスこと小鳥遊アリスさん(推定18歳)と、謎のイケメン男性が密会!? 兄妹説もあるが、熱愛の可能性大!」

アリスは凍りついた。

写真は、兄貴が病院から退院した日に撮ったもの。

兄貴が「アリス、久しぶりに散歩しよう」って

誘ってくれた日。

SNSが即座に燃えた。 トレンド1位。

「#マジカルアリス熱愛」

「#アリス彼氏」 ポストの嵐。

「アリスちゃんは騙されている! あんな年上男、クソ彼氏だろ」

「魔法少女のイメージ台無し! ファン辞めるわ」

「彼氏。クソ男、死ね」

アリスはスマホを握りしめた。

兄貴のアカウントにも、叩きのリプライが殺到。

「お前みたいなのがアリスに近づくな」

「クソ男、魔法少女に手出すな」

アリスは震えた。

兄貴は…兄貴はただ、守ってくれただけなのに。

恐怖で手が震えている。

兄貴からの着信。

「アリス…記事見たか? 大丈夫だよ。俺、なんか…」

アリスは涙をこらえて、電話に出た。

「お兄ちゃん…ごめんね。」

夜の闇が、二人の絆を、さらに重くする。


アリスの電話の先、兄の姿は黒く歪んでいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ