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それは美香のドレスじゃない?

 

 愛未の結婚式がおわった。


 結婚式が終わってすぐに俺は愛未に会いにいった。


「愛未、綺麗だよ」

「翔太ありがとう!」


 愛未は俺に駆け寄ってきてハグをしてくれた。


 愛未はこういうところがかわいい。美香にはないところだ。結婚したら美香もこういうところを見習ってほしい。


「翔太さん、本日はお越しいただきありがとうございます」


 新郎がそう声をかけてきた。愛未と話したかったのに。


「送迎の車をご用意しています。ご案内します、美香さんはどちらに?」


「さあ、帰ったんじゃないですかね」


「え!大変!ドレス貸してくれたお礼しなくちゃ!!」


 そう言って愛未はかけだしていった。


「きゃっ」


 そして愛未はドレスの裾を踏んで転んでしまった。


「いたーい」


 びっ。


「え?」


 その場にいた人間の声が重なった。


「きゃあああ!!」


 ウェディングドレスが派手に破けて足があらわになっていた。親戚や式場のスタッフが上着や膝掛けを持ってきてくれたが。


「美香さんのせいよ!慰謝料請求してやる!」


 愛未はそう大声で泣き出した。やばい、そう思った。でも美香のせいにしておけばこの場を凌げる?そう考えて口が動き出しそうだった時だ。


「だったら美香さんに連絡を取ってみたら?」


 そう言い出したのは新郎の母親だった。感情の読めない表情で、なんの気持ちもない声で放った言葉はその場によく響いた。


「ま、待ってください。この状況で美香さんに連絡を取るのは流石に可哀想ではないですか?」

 

 口を挟んだのは愛未の母親だった。このままいけば美香に全て任せられるのに。


「どこがですか?」

 

 そうだ、とここばかりは新郎の母親に同調しようとした。


「え、このドレスは翔太君が用意してくれたドレスなんですよね?美香さんは名前だけというか、関係ないというか」


「え、これ美香さんのオーダーメイドドレスじゃないの!?」


 え、なんの話??


「どういうことなんですか?」


 問いかける新郎の母に答えたのは式場のスタッフだった。


「そのウエディングドレスはメーカー品です。こちらのドレスは業界では大手のブランドのドレスで値段も手頃でデザインも流行のものからベーシックのものまで取り揃えられているので人気のブランドです。急なご依頼だったのでこれがオーダーメイドのドレスということになっているのだと判断していました」


 ほぼ息継ぎなしに言い放った式場スタッフ。


「じゃあこれ着た意味ないじゃん!」


 周囲は一斉に音が消えたように静かになったが愛未は気づいた様子はなかった。


「私は美香さんのオーダーメイドドレスが着たかったのに!」


 静まり返った周囲がその一言でさらに一歩引いた。でもどうにもわからなくて思わず聞いてしまった。


「どうして?」


「だってオーダーメイドのウェディングドレスなんてみんな着てない!自慢できるじゃん!!」


 美香のドレスが着たいと愛未に言われた時には何も考えていなかったけどそんな理由だったのか。


「最悪!翔ちゃんだいっきらい!!」


 愛未は叫ぶと近くにあったものを俺に投げつけてきた。スタッフに誘導されるまま俺は控え室からでた。


 どうしたらいいんだろうかと思って周りを見るがみんな愛未を宥めることで一杯一杯で俺のことはどうでもいいようだった。なので、まあいいか。そう思って帰った。


 家に帰りシャワーを浴びて一息ついても愛未からの連絡はなかった。いや、もう愛未からの連絡は来ないだろうな、結婚したんだし。そのことに少しばかり寂しさを覚えたが俺は疲れもあってすぐに眠ろうとした。


 スマホがうるさく通知音を鳴らした。


 それは愛未から連絡だった。


 なんだろう?そう疑問に思いながらも内容を確認するとその内容は予想もしていないものだった。


『愛未の元夫です。愛未とあなたとの関係について伺いたいことがありますので至急愛未の部屋に来てください。来られない場合は慰謝料を請求します』


 急展開だった。晴天の霹靂ってこういうことを言うのか?


 どうして俺が?でも行かないと慰謝料を請求される。そう思えば行かないという選択肢はなかった。俺は悪くないはずなのに。だって全部結婚式の前にやったことなのに。愛未がもしかしたら美香が何かいったに違いない。重たい足を引きずりながら愛未の部屋に向かった。


読んでいただきありがとうございます。

結婚式挙げたら夫婦になると思っている人が翔太です。なので、いつ入籍したのかとかよくわかっておりません。

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