やっぱファンタジーだった!んだけど...
という訳で、今日はお父様から許可を頂きまして本を読んでおります。
幸い次の日は父親が休みだったので、許可を得るためにブラック企業時代の上司にへりくだっていた頃のテクニックをふんだんに使わせていただきました。
こういう口説き文句は大体憧れの存在に自分が置かれていると何でもしたくなるもんなんですよ。
なのでこの、
「お父さん、僕、もっと勉強してお父さんみたいになりたいな。」
と言いながら照れくさそうな顔をしましょう。
そうすると、
「お父さんみたいになりたいなんて言われてみたかったんだよな...あっ、すまん。考え事をしていた。お父さんみたいなカッコイイ男になるために日々努力するのか。よし、本を読んでいいぞ。」
はい、楽勝。
ねっ、簡単でしょ。
父親がデレデレしまくっていた顔がカッコイイとは無縁だったような気もするが、やっぱり本を見せてくれるパパは最高だぜ〜。
ここは一旦父親の甘さに感謝の正拳突きを毎日するべきだな。
条件も自分が見ている間だけと言われたのみで普通に本を触らせてくれた。
ここは顔を立てるためにも分からない文字があったらバンバン質問して子供の可愛さでシャバ漬けにしてやろう。
本当は魔力の扱い方の本を手に取りたいんだけどな...。
という訳で現在手に取っておりますものは世界地理についての本であります。
まずこれを知らないと何も始まらないだろ?
他種族が居るかもわからないしどこの勢力が対立しているか分かったら何か危ないことがあっても回避できるだろう。
ていうかそもそも魔法自体が危ないものとされていたりしたら転生早々火あぶりの刑だ。
痛い方法で死ぬのはホント勘弁だからね。
そんなことが起き無いためにも色々なことを知っておく必要があった。
ページをめくると、最初に出てきたのは地図だった。
うーん、全くどんな国か分からん!
こういうときは、
「お父さん?これは何?僕何かわからないよー。」
はい、早速シャブ漬けにしてやりましょう。
パパー、助けてーって感じで助けを求めてみたら、
「ルイス、これは地図と言うんだ。この世界の地形について書いている本だから、お父さんが一緒に何を書いているのか教えてあげるよ。」
こうやって話し始めます。
こうなれば完全にこちらの勝利です。
最後にスパイスとして、
「ありがとう!お父さん!やっぱりお父さんは頼りになるよ〜。ありがとう。」
と言ってやれば、ってあれ、固まってしまってるんですけど。
可愛さに殺されちゃったか?
「この地図は5つの大陸に分けられていて、6つの州があるんだ。俺達が住んでいる大陸がこのウエストポリス。左側にあるにある大陸だ。俺達が住んでいる場所は一番下っ側のロイマスっていう国だ。土地も四季折々あって俺は一番大好きな場所だ。といっても今までこの大陸以外出たことが無いんだけどな。」
そう言って指した大陸は、大きくも小さくもない中くらいの大陸だった。
数分経ったら再起動していきなり喋りだしたのは驚いたが、有益な情報をくれたので良しとしよう。
欲を言えばこれはどれくらいを基準に書いているかを教えて欲しい。
縮尺とかねえの?この地図。
「次にイマリストラスクだ。一番右側にある大陸だ。ここの大陸はウエストポリスの大陸にある国と仲が良い国が多いから覚えておいたほうが良いぞ。」
イマリストラスクっていう大陸はウエストポリスと友好関係を築けているんだな。
できるだけ殺し合いとか嫌なので関わりたくはないが、このような世界なら避けては通れない道だろう。
でも巻き込まれるて死ぬのは勘弁だ。
取り敢えず脳内にイマリストラスクは友好関係のある大陸と頭に刻んでおいた。
「その横にある島々がミラスト諸島だ。島々だと思って侮ってはいけないよ。全部の島の気候が生活するのに適しているからこれでも発展してるんだ。」
この世界で言う諸島とはこの場所のことを指すのだろう。
あんまり小馬鹿にした言い方をしたらダメそうな感じだったので肝に銘じとこう。
同じ島国出身同士仲良くしたいしな。
「そしてウエストポリスの下にあるのがモスロ大陸。モサラ教の総本山がある所だな。」
「モサラ教って?」
「そうか、ルイスはまだ行ったことないもんな。モサラ教は世界的に見てもほぼ全ての大陸に広がっているんだ。英雄のモサラが戦争で勝った後に作られたモンだからな。大体この宗教か無神教かのどっちかに入ることが多いんだ。」
宗教か...あまり前世では馴染みのないものではあるが、無神教が選択肢に入っているということは強制ではないのか。
出来れば関わりたくないが、関わるようになってしまったらまあしゃあない。
もしかしたら世界的に見てもってことはこの宗教のお陰でイマリストラスクと仲がいいかもしれないな。
余程変な宗教じゃなければ入ったとしても問題は無いはずだ。
え、変な宗教だった場合...想像もしたくないね。
「そしてスメストとガルタ帝国。この2つは、まああんまり気にしなくてもいいぞ。なんたって八割ほどは魔物と魔族が主に住んでいるからな。」
ということは支配されていると捉えていいだろう。
やっぱり魔族との間に戦争が起きたのだろうか。
ガルタ帝国とスメスト大陸は魔族の領土と思っておこう。
「以上がこの地図に載っていることだ。学校で今後習うことがあるかもしれないが覚えておいて損はないからな。」
「分かった!ありがとう、お父さん。何でも知っているんだね!」
追い打ちがてらに褒めてあげたら、案の定嬉しかったのか顔がニタニタしだした。
そういえばさっきはこの後フリーズしたんだっけ。
もう放っといても問題ないですね。
次のページを開いてみると、先程父親が教えてくれた大睦の詳しい説明が載っていた。
これさえ確認できれば大丈夫だと思います!
そんなことより早く魔術の本をみたいです!
という訳で、いよいよ魔術の本を読むことにした。
やべえ、物凄くバクバクする。
これであなたに魔力がないです!とか分かったら泣いてまうぞ。
緊張していたがあんまり不審な動きをしていたら付き添いの人に怪しまれてしまう。
いや付き添いの人も十分不審なのだが。
覚悟を決めてエイッ!
何事も勢い!
開くと、まず最初にと書かれていたのは魔術のお偉いさんみたいな人の名言が載っていた。
『魔力と共にあらんことを。』
いや某SF映画のパクリかよ!
身構えてこれ出てきたら焦るわ!
でもこれ読めるってことはみんな知っている有名な名言なのか?
いや前の世界でも知らない人の方が少ないレベルで有名っちゃ有名だけど!
まあこれで一応落ち着けたから良しとしよう。
こんなことを最初に書いている本なんだ。
あんまり信用はできない程度で読めば何かあってもダメージは少ないだろう。
次をめくると、目次があり、それを過ぎると魔力についての話があった。
その後の内容は、
・魔力には人の中には誰でもある。
・魔力には色があってそれによって使える魔術が決まってくる。
・魔力の総量は伸ばせるが、人によって限度が異なる。
とのことだ。
その後は魔力の体の中の扱い方が載っていて、後半からは色ごとの魔力の使い方があった。
取り敢えず魔力は誰でもあるらしい。
助かったぜー!
ということは確定で魔法を使えるということだ。
こういう系である自分だけ使えないパターンは無いみたいで一安心。
魔法が使えることに余韻に浸っていたら、
「この本か。俺も昔はこの本を読んで鍛冶の魔力の注ぎ方を覚えたな。後半は全く役に立たなかったがな。」
「なんで?魔力は誰にでもあるはずなんじゃ無いの?」
「残念ながら俺とルイスは魔力に色がないんだ。だから使えないだ。」
なんやて!?おいおいおい。
じゃあこれって糠喜びだったってことか?
「魔力の総量があっても色がついていなかったら何も出来ないんだけど...ってルイスどうした!?」
あまりのショックに涙が出てきた。
どうしてこんなに上手く行かないのだろう。
せめてスタートラインに立ってそこから努力しようと思っていたのに。
そのスタートラインにすら立てないとは。
この世界のある種の理不尽に怒りと悲しみが溢れてしまった。
転生三日目、早々に心が折れかけております。
国名がいっぱい出てきますが、取り敢えず主人公が住んでいる国とモスロとモサラ教さえ覚えておいたら大丈夫だと思います。