帳簿の付け方について・下
もう少し続けます。
此処からは小話に近い気もしますが。
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まずはしばしば話題になるインボイスの確認について。
インボイスの確認というのは一般的に費用の領収書の確認のことです。
貰った領収書にインボイスの番号(T123456789012みたいなの)が書いてあるかどうかの確認ですね。
前回で書いた、クリアファイルに区分した領収書とかレシートがインボイスに該当するかを見るわけです。
ただし、これの確認はあなたが消費税を簡易課税で計算している場合、もしくはそもそも消費税を納めない事業者である場合はする必要はありません。
簡易課税は収入が5000万を超えるまで使用できます……アバウト表現ですが、分かりやすさ優先ということで。
そして、極めて特殊なケースを除き、簡易課税ともう一つの本則課税を比較した場合、簡易課税が有利です。
よって、あえて本則を選ぶような場合か、印税収入5000万超えの超絶売れっ子以外、作家業でインボイスの確認は不要です。
後者の場合は20万くらい払って税理士に全部丸投げする方が多分楽だと思います。
ということで、インボイス導入で確認の手間が増える!というのははっきり言ってデマです。
もし領収書の集計さえしていないなら……それはインボイス以前の問題なので、税務署の調査を食らう前に対応することをお勧めします。
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事業所得と雑所得と違いについて。
どちらも所得ですが、雑所得の計算は
収入-経費合計 で計算されます。
例えば
収入 ・1,250,000
必要経費 ・550,000
所得 ・700,000
こう。
なので前回書いた経費の区分は全く必要ありません。
雑所得は計算が簡単なのがメリットですが、デメリットは赤字が出てもその赤字を他の所得(兼業作家の場合は給与とか)から引けないことです。
事業所得は三段階に分かれます
3つともに共通しているのは
収入-区分した各経費 で計算することです。
例えば
収入 ・1,250,000
取材費 ・△300,000
交際費 ・△50,000
備品費 ・△10,000
資料費 ・△200,000
雑費 ・△80,000
所得 ・610,000
こう。
雑所得より経費をきちんと集計しなくてはいけませんし、その集計額を区分した表を出さなくてはいけません。
その表のことを収支内訳書とか決算書とか言いますが……名前は今はどうでもいいかな。
メリットは赤字が出たらその分を他の所得や来年の事業所得から引けることです。
例えば、出版準備のために取材を多くした結果、その年は赤字になっても、その赤字分を来年の所得から引けるわけですね。
あとは、経費とは別に引けるものがあること。
デメリットは単純に書く書類が増えて面倒なことです。
3つを簡単に説明します。下に行けば行くほど面倒です。
①白色申告
簡易帳簿という簡単な帳簿を付ける必要があります。
特別な控除は無し。
②青色申告10万円控除
青色申告の届け出書を税務署に出さなくてはいけません。
その上で①と同じく簡易的な帳簿を付ける必要があります。
特別控除として10万円が所得から引けます。
なので上の例だと、所得610,000から更に100,000引いて、所得は510,000です。
やることは①と同じなので事業所得にするなら青色申告の届け出を出す方がいいです。
③青色申告65万円控除
届出の必要については②と同じ。
特別控除は10万から65万に大幅アップします。
ただしこの控除を使って赤字にすることは出来ません。
上の例だと610,000-610,000で所得ゼロにはなりますが、610,000-650,000で40,000の赤字にはならないわけです。
②との違いは複式簿記というきちんとした帳簿を付ける必要がある事。
このハードルはかなり高いです。自分でやるなら簿記の専門知識は必須でしょう。
時々、青色申告の届け出を出したら65万控除を受けれると思ってる人が居るようですが、それは違いますので注意してください。
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こんなところかな。
所得さえ出てしまえば、確定申告は終わったも同然です。
不動産取引してるとか、なんか高額のものを売ったとか、副業が複数あるとかだと話がややこしくなりますが、専業作家とかサラリーマンの兼業作家とかだとそこまで複雑にはなりません。
恐らく単純さという意味では、兼業作家の方が専業より楽です。
というのは、社会保険料とか生命保険とかその辺の処理が全部年末調整で終わってますからね。
ともあれ、いかに作家の所得……というか費用を集計する手順をルーチン化して簡単にやるかが全てです。
前の回でも書きましたが、どうせやるならば簡単にやりましょう。
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最後に。
個人で事業を営み収入を得る以上、確定申告は義務です。
面倒だと思うのは分かりますが、やらないといけないことです。
そして個人事業者は誰もがやっています。
自分の土地の大〇建託のアパート建てて不動産経営してる人も、街角のイタリアンレストランのオーナーシェフも、ネットで活動するハンドメイド作家も、昔ながらの個人経営の小売店も、誰でもがそうです。
誰もが面倒だと思っています。作家も例外ではありません。
サラリーマンはやらなくていいじゃないか!なぜ我々だけが!という声もありそうですけど。
サラリーマンは会社から給与を支給される時に、すでに経理部門とかの人の給与を負担しています。
個人事業的に言うなら、税理士費用を強制的にひかれてるようなもんです。
個人事業主とサラリーマン、どっちがいいのかは人それぞれでしょうが、どちらにも楽な面と嫌な面がある。
この世界に何もかも満たされた理想郷は多分ありません、残念ですけどね。
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