施行前のまとめ
施行前に纏めを書いておきます。
ちなみに僕の知人の兼業作家は複数社から印税を貰ってますが、令和5年9月27日現在で、そのいずれからもインボイス登録を促したり、番号を確認する連絡は来ていないそうです。
まあ彼はそこまで印税が大きくないからかもしれません。
そして以前書いた通りインボイスには経過措置があります。
なので出版社側は経過措置を使えば、現時点では作家に対して其処まで強くインボイス登録を促す理由はないんですよね。
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もし、免税事業者(印税収入1000万円以下)であり、出版社から特に連絡が来ていないなら、何もしないのがよいです。
免税事業者で出版社から登録を促す連絡が来たら、出版社との交渉になります。
登録するか、消費税に相当する印税の減額等を提示されて受け入れるか、選択しなくてはいけません。
ただし、以前書いた通り、貴方が著作権を持つ作品を他の人に続きを書かせることはできませんし、出版済みの作品の電子版に印税が生じることもありえるはずです。
商業作品の著作権を持ちオンリーワンの作品を生み出す作家は其処まで弱い立場ではありません。
フリーランスとして堂々と交渉しましょう。
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免税事業者であり、登録しない場合は特に何も変わりません。
免税事業者がインボイス登録するならばやることは以下の通りです
一つ目。
まずは国税庁のインボイス登録申請で登録する。郵送でも電子でも可能です。
登録番号はTと13桁の数字です。これは登録すれば終わりです。
二つ目。
次に出版社とインボイスをどう発行するか決める。
作家業は請求書がまず発生しない特殊な業界なので、領収書をインボイスにするのが妥当でしょう。
前回書いた通り、出版社が領収書の雛形を作るんじゃないかなーとは思っていますが、この辺は要確認。
……上でも書いた通り、僕の知人の兼業作家はインボイス登録をしないつもりのようなので、出版社がどう対応するか分からないんですよね。
ただ、ヒット作を飛ばしてすでに課税事業者である作家さんも居るわけで、出版社側の対応というのは絶対に存在します。
どういう風にするのか興味があるので、情報をご存じの方は教えてください。
三つ目。
インボイスを発行するということは消費税の課税事業者になるということですので、それに備えなくてはいけません。
以前の回で書きましたが、余程特殊な取引をしていない限り、消費税は簡易課税が有利となります。
簡易課税は印税収入のみから消費税を計算するので、経費として受け取った領収書がインボイス要件を満たしているかの確認は不要です。
これは売れっ子作家で既に課税事業者である人も同じです。
巷で言われている「消費税の計算のために新たに膨大な領収書の確認の必要がァァぁァァァl!!」ということはありません。
あれはデマと言って差し支えないと思います。
簡易課税の場合の計算を再掲しておきます。
印税550,000(消費税50,000)の場合は
50,000*0.5=25,000
です。
免税事業者が登録した場合に使える2割特例を適用すると
50,000*0.2=10,000
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本則課税というのを使うこともできます。
本則課税は簡易と異なり、印税収入の消費税から経費の消費税を引いて行って差額を納付する方法です。
この場合は経費の領収書を保存してインボイスの要件を満たしているか確認しなくてはいけません。
とはいうものの、経費の領収書は確定申告をしているなら保存してるでしょうから、新たに手間が増えることはありません。
インボイスの要件を満たさない領収書は、普通の店で買い物をしている限りまず無いと思います。
なので実務上は特に気にしすぎることはないでしょうね。
創作活動に関してインボイス要件を満たさない領収書であり得そうなのは、
・個人がやってるレストランで作家仲間と会食して領収書をもらった
・創作活動にあたって個人イラストレーターに依頼して領収書をもらった
・資料として個人から同人誌等を買って領収書をもらった
この辺かな。
兼業作家で印税収入が比較的少なめで、経費で収入を相殺できるくらいの場合は本則課税の適用を受けて消費税をゼロにすることもできると思います。
具体的には
印税収入550,000(消費税50,000)
取材費220,000(消費税20,000)
資料費165,000(消費税15,000)
備品費110,000(消費税10,000)
交際費55,000(消費税5,000)
50,000-(20,000+15,000+10,000+5,000)=0
これで消費税ゼロ。
経費の領収書のインボイス確認が必要ですが、手間をかけてもやる価値はあるかな。
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ちなみに。
もし、確定申告なんてしてないよ、とか領収書の保存なんてしてないよ、というのならば、これを機会にやってください。新規にデビューして印税を貰う作家さんもです。
というよりやらないとダメです。
それをやることも含めてフリーランスです。
税務署を甘く見てると、どこかの社会学者のセンセイのように自宅に踏み込まれますよ。
何か質問がありましたら感想欄までどうぞ。
時間があれば答えます。