それぞれの立場で考えよう
〇作家の立場で考える
印税1000万越えですでに消費税の納付をしている作家さんは別として、現時点で免税の作家の立場からすると課税事業者になるのは何のメリットもありません。
今まで免除されていた納税が生じますし、消費税の計算もしなくてはいけません。
とはいえ、後者の消費税の計算は実は超絶簡単で、ある方法(おそらく納税額が減る有利な方法でもある)を使えば10分もあれば計算できます。
詳しくは後述します。
税負担についてはどうしようもないです。当たり前ですが免税でゼロの時よりは増えます。
なので課税事業者にならないでいいならそのほうがいい。これは間違いないです。
とはいえ、出版社の意向もあるので、事業者登録してねと言われたときに「絶対に登録しないでござる!いやでござる!」とは言えないかもしれませんが。
いずれにせよ、作家の立場でインボイスを発行するため課税事業者になるのはメリットは皆無です。
少なくとも僕は思いつきません。
〇出版社の立場で考える
前述のとおり、出版社の立場で考えるなら前作家にインボイスを出してもらいたいでしょうね。印税の消費税が引けますから。
事業者登録してないと印税が引けない。恐らくこれが出版社の納税額に与える影響は結構大きいと思います。
実際に、すでに他業種では取引先に事業者登録をしているか問い合わせが始まっています。
登録していない取引先には登録するように促す動きもあるかもしれません。
では出版社も作家に事業者登録を要求するか?
ここで少しややこしい問題が生じます。
前述のとおりインボイスが発行されないと印税に関する消費税は引けません。
主にSNSで散見されるインボイス批判の論陣でよくあるのが、消費税が引けない相手とは取引しなくなる、つまり出版社から契約を切られる恐れがある、という論点です。
では出版社はインボイスを発行しない作家を切るのか?
あくまで私見ですがこれはNOだと思います。
理由は創作物は作家のものであり代替は利かないからです。
例えばAという店とBという店があって、両方同じ商品を売っているとします。
Aは登録事業者でインボイスを発行します、でもBは発行しません、というケースの場合、Bは切られる可能性が高いと思います。
これは、BのかわりをAができるからです。Bで買わずにAで同じものを買えばいい。
次はAという職人さんとBという職人さんがいるとします。
どちらも職種は同じで、Aは登録事業者でインボイスを発行する、Bはしない、と言うケース。
ただしこの場合Bのほうが明らかに技術的に優れていたらどうでしょうか?
恐らくBは切られないと思います。
この場合、技術的に優れたBを切るほうがデメリットが大きいからです。
これについては経理とかの関係者(出版関係ではない)と話してしてみた感じ、概ね同じ反応でした。
インボイスを発行しないからといって腕の立つ職人を切ることはないし、事業者登録を強いることもないだろう、とのこと。
作家も同じです。ある作家の代わりはだれにもできません。
例えばSWという作品があったとします。
その作者が事業者登録を拒否しても、出版社は他の作家に首を挿げ替えて作品の続きを書かせることはできないわけです。
すべての創作物はそうでしょう。
なので、出版社としては、作家がインボイスを発行しないからと言う理由で作家と契約を解除しSWを打ち切るか、インボイスが無くてもそのまま続けるかしかない。
それに契約を解除してもSWの電子版が売れたり重版がかかったりしたらどのみちその後にも印税の払いは発生すると思います。
なので、切ればそれでおしまいではない。
すでに自社で本を出版した作家をインボイスに登録しないからという理由で切るメリットは殆どないと僕は考えています。
しいて言うなら、新人作家さんは事業者登録を求められるかもしれませんが。
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もう一点付け加えると、インボイスには猶予期間があります。
印税にかかる消費税10万円がいきなり全額引けなくなるわけではないのです。
3年間は8万円、その後は5万円と段階的に下がっていきます。
なので出版社としてはインボイス登録しない作家を、来年のインボイス正式施行時にいきなり切るメリットは殆どありません。
ほかの業種でもそこまで極端な動きは起きないでしょう。
簡単に他に代替できてしまうようなものだと切替はあり得るかもね、と言う程度。