砂場を制すルシファー
「ククク、ついに我が魔城の完成ぞ……ククク、クカカ!!」
「ぶるどーざーババーン!」
腕を組み高笑いを浮かべる女の子の足下で、たった今築城を終えたばかりの砂城が年少者の一撃で消えて無くなった。その事実に女の子はまだ気付いてはいない。
「ルシファー様~、バケツに水を汲んできましたよ~」
「うむアスタロトよ大義であるぞ!」
女の子と同い年の男の子が、両手に一つずつ小さなバケツを持ってやって来た。バケツには水が溢れんばかりに注がれており、その実歩く度に少しずつ零れては滴っていた。
「やや! ルシファー様我らが城が!?」
「んん? ……ふぇ!?」
ようやく崩壊した城の存在に気が付いた女の子。砂場を横切る足跡だけが、その犯行を物語っていた。
夢の跡の惨劇に、女の子の顔色が暗くなってゆく。
「そ、そんなっ……ふぇ、ふぇっ!」
「ルシファー様お気を確かに! 城などまた作れば良いではありませんか!」
泣きそうになる女の子を必死で説得する男の子だが、その後ろから城を破壊した年少者が、今度は飛行体制で迫っていた。
「ひこーきマンとあぁぁ!」
「ぐふっ……!!」
背中をどつかれ砂場に倒れてしまった男の子。バケツが倒れ、男の子の服はあっと言う間にグチャグチャになってしまった。
「うわーん!!」
「あらあら明日太郎くん! お着替えしないと」
脇を抱えられ、先生に連れて行かれる男の子。
「アスタロトー!!」
女の子はその姿を見届ける事しか出来なかった。
「我は無力だ……」