志願、不安。
この物語は作者の実際の経験に基づいた話しでありますが、あくまでフィクションであります。
未明、目覚める前に思った。
昨日の出来事は全て夢で、今見ている夢こそが現実ではないか、と。起きたら空き缶と漫画の雑誌が散らかっているいつもの自分部屋で、寝起きの喫煙で新しい1日を始めることになると思った。
僕は関西のとある大学に通っている韓国人留学生、名前は「李圭津。専攻は政治外交史で、学部の4回生である。アニメが好きで日本語の勉強を始め、それが真面目にできて何とか関西で名がある大学に入学できた典型的なオタク留学生である。それはともかく、韓国人であるため当然ながら「兵役の義務」があり、就活のことを考えれば卒業する前に徴兵に行ってくるべきであった。実は2回生を終えてから入隊するつもりであったが、あいにくのことで休学のタイミングや志願に落ちたりして、結局は4回生になってしまった。周りの韓国人の同期や後輩たちはみんな既に入隊していたり、入隊が早かったやつはもう除隊して日本に戻ってきた場合もある。行きたくはないが、どうせ行くべきなら早めに行っておくってことだ。だが、僕はそれに失敗した。軍に入るのが怖かった僕は、最初は代替服務という「義務警察」に志願した。義務警察とは、1ヶ月間の基礎軍事訓練を履修した後から、軍ではなく警察で巡査補助として勤務することである。いわゆる社会で勤務することがとても魅力的であるし、また警察の制服がカッコいいから僕もすぐ志願したが、結果は大失敗であった。義務警察の選抜は筆記と体力試験、そして抽選である。僕はいつも抽選の段階で落ちてしまい、3回も同じことを繰り返した。結局、義務警察を諦めて他の選択肢を選ぶべこであった。
4回生のゴールデンウィーク、難波の酒場でオタクの友達ら-山田、小林、小泉、野原-と会った。僕たちはいつものようにアニメとか声優とかサバゲーの話で盛り上がったてた。
「そういや圭ちゃん、入隊はいつやったけ?」
友達の山田が言いだした一言で、そこから急に僕の兵役に関する話題になってしまった。
「休学の件もあるから、できる限り遅くても今年の11月までは入隊するべきやな...」
そこで小林曰く
「やはり陸軍なん?」
しかし、なぜか陸軍には絶対に行きたくなかった僕は、それを強く否定した。
「陸軍はやはり事故とか多そうやし、すこし嫌やな。海軍かな?空軍は長すぎるし」
*当時基準、韓国軍の義務服務機関は陸軍、海兵、義務警察が18ヶ月、海軍が20ヶ月、空軍が22ヶ月と決められていた。
「海軍か... 大変そうやな、あ、生ビールで」
「野原ってほんまビール好きやな、僕はハイボールでお願いします。で、来週に面接受けに韓国行くやろ?今度は合格しときな」
「あ、僕もハイボールで。うん、ありがとう(釣りキチおばさん風)」
「そっか、義務警は全部落ちたんか...」
「山田ァ、それは言うな...」
「まぁ、圭ちゃんって俺たちの中ではいちばん頭ええから心配せぇへんでええ」
「同時に俺たちの中でいちばん頭がおかしいけど 笑」
「おい、小林さん、それは酷いな 笑」
「あ、圭ちゃんが軍隊行っちゃう前に何か思い出作ろうぜ?京都市内から大阪市内までチャリで往復するとか?順番はサイコロで決めようぜ 笑」
「そろそろ暑なっとるのに、殺す気かお前 笑」
まぁ、入隊に関して個人的な不安も抱えていたが、こいつらと一緒にいると落ち着けるし、どうでも良くなる。友達らと一緒に美味しいものを食べて、酒を飲んで、どうでも良い話で盛り上がる。それだけで人間は幸せになれる。
帰り道、途中まで方向が同じ小林さんの電車の中で話した。
「小林さん、入隊って何か異世界転生に似てることかも知れないと最近思っとるで」
「は?なぜ?」
「何か一般社会とは全然ちゃう見知らぬところに行っちゃう、元の身分や職業とかに関係ず全然新しい職務に勤めるし... あ、階級ってことはなんかレベルに似てない?」
「まぁ、そう考えれば、ふん...」
「とにかく、やはり行きたくないな、軍隊」
「頑張れよ圭ちゃん...」
それから1週間後、僕は韓国行きの飛行機に乗った。海軍の面接を受けるための3日間の帰国であった。兵役のために支払った飛行機代が今度を含めておおよそ8万円くらい、考えたら胃が痛くなる。1時間40分後、見慣れた仁川空港に到着した。空港で母の車に乗り、まずは実家に帰った。その日の夕方には高校時代の同級生たちとの飲み会があった。話題はやはり軍隊の話だ。話の内容を略すると「4回生になるまで入隊してないお前がおかしい」ってことだ。まぁ、遅すぎってことは僕自身が最も良く知ってるし、胃が痛くなるからその話は正直に辞めて欲しいと思った。
翌日、面接日。面接場は地方兵務庁で、タクシーを乗って行った。一応は面接だから就活用のスーツを着て行ったが、他のみんなはカジュアルな服装だった。うん、やはり文化の違いかな...?やはり僕は日本に慣れ過ぎたのかも知れない。僕の順番は8番目、しばらく待つことになった。海軍の面接日であったため、兵務庁のテレビではずっと海軍の広報動画が流されていた。うん、内容的に見てやはりすぐ飽きる内容のつまらない動画だから、ずっとそれ流すのは逆効果だと地味に思った。仕方ないからずっとスマホを弄っていたら、やがて僕の順番になった。部屋に入ったら、2人の准士官(下士官と尉官将校の間の階級、少なくとも20年以上を勤務した古参の下士官が特別な教育を受けて任命される階級)が僕の前に座っていた。そこから質問が始められる。
面接で何を聞かれ、どのような返事をしたかは覚えていない。ただ言えるのは、僕がかなり褪せていたということ。大学の休学するためには11月までは入隊するべきであり、今度の面接で合格したら10月中旬に入隊する。しかし、落ちたら11月まで入隊することができなくなる。自分としては残りの大学生活と就活に関する問題であったため、一生懸命に、ド真面目に面接を受けた。他の人たちが1人あたり5分くらい話すことで面接が終わるってことが一般的であったが、自分は面接官たちとおおよそ20分くらい話してた。面接の後、喫煙所に直行してタバコを吸った。そんな緊張感は大学面接以来であった。何となく良くできたような気がして、ホッとした。これか自分にできることは結果の発表を待つだけだった。
面接から1ヶ月くらい後、面接の結果が通知された。合格であった。自分は喜びながら関連された書類を整理し、学部の事務室に休学願とともに提出した。何というか、世界が平和に見えた。だが、帰宅してから考えてみると、入隊まで後4ヶ月くらいしか残ってないってことに気づいたしまった。先までバカみたいに嬉しがってたけど、考えてみれば全然嬉しくない。僕は日本という国で暮らし、勉強したことで、もともと好きであった日本がさらに好きになった。しかし、あと少しでこの愛しい国から出て、少なくとも20ヶ月間は帰って来れない。その時点から非常に悲しくなってきた。死刑を宣告されたらこのような気分かな?大好きな日本を離れたくないのに、自分の意思とは関係ずに離れるべきであることが辛すぎる。同時に腹が立つ。なぜ僕が行くべきか。韓国が僕に何をやってくれた?なぜ韓国のために僕の青春を犠牲せねばならないんだ?全ての状況に腹が立ち、常識的に考えるころすらできなかった。不安と悩みで何もかもが嫌になるレベルであった。その頃の僕は「国民の義務」という言葉を憎んでいた。前世に何か悪魔的な悪さをして、現世の僕が苦しむべき罰に当たったのかとも考えた。不安とストレスが胃が痛すぎる日々が続いてた。行きたくなかった。日本にいる友達らと離れることも嫌だった。そんな日々をしばらく過ごしたのである。
2話に続く。
次回予告:
夏コミの後、不安とストレスを抱えて韓国に帰国する李圭津。やがて入隊日がだんだん近づいてくる。彼は何を考えているか。




