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プロローグ

その昔、勇者フジワラというものが仲間を引き連れて魔王を討伐し封印した。

そして、彼は世界を平和をもたらした英雄として人々に称えられた。

そして時はすぎ──────────


勇者フジワラの死から100年後 ホークス王国 ノドカ村

にて。


「……今日もいい天気だなぁ」


選択を外に干しながら呑気に呟いた、澄んだ空の様な髪をなびかせる少女こそ、勇者の末裔、フジワラ・サオリ。

つまり私である。

私の曾祖父ちゃんは、異世界からこの世界にやってきて、仲間と共に旅をし世界を救った。

曾祖父ちゃんの故郷はニホンという国で私の名前や父さんの名前はその国らしい名前が付けられている。


昔はニホンってところから来る転生者が多かったらしいけど、平和になったこの世界にはもう転生者は必要ない。

まぁ、そりゃ曾祖父ちゃんが魔王倒しちゃったし異世界の勇者に縋る理由がないからね。


勇者や冒険者は過去の産物、魔法やスキルそんな物騒なもの使ってる方がおかしい世界だ。

うん、だから私がちょっぴりそういうのが扱えなくたってなんの問題もない。


うん、だいたい夢見すぎなんだよあの生きる化石達は。

なんで昔の栄光に縋ってんだよ。

もう勇者の時代じゃないっての。

なぁにが、人の為に強く、誰よりも最強であれだ。

たっく古臭いのよ、そんな危なっかしいもん鍛えたって何の役にも立たないっての。

一族のみんなも馬鹿みたいに努力しちゃってさぁ、だいたい何と戦うのよ、必要も無い力これみよがしに自慢しちゃってさぁ。

自分より下手くそな奴見つけたら、馬鹿にしたり、虐めたりしたがってそんなに勇者になりたいのかよ。

そんなにその血が誇らしいのかよ。

ふざけんな、自分より出来ない奴がいたら、バカにして散々虐めやがって。

そんなヤツらが、勇者になれるわけないだろバーカ!

力に酔った、傲慢なレイシストどもめ!

……うっわ、嫌なこと思い出した。


「あーイライラする。八つ当たりに獣でも狩りに行くか」


取り込んだ洗濯物の籠を置き、仕事着に着替えて森の中に入り獲物を見つける。


「おっと、いいのがいるじゃん」


目線の先にまるまる太ったイノシシが居たので、短剣に魔力を込めて攻撃した。

一振するだけでイノシシは倒れ、私の食材となった。


「さて、残りもやっちゃいますかねぇ!」


仲間をやられたイノシシ達は私を囲み今にも襲いかかりそうだ。

そんな彼らを私はナイフを振るだけで今夜の夕食の材料に変える。


勇者一族の力をこんなくだらないことに使う自分って最高。

さーせん、一族の長と曾祖父ちゃん。

私は、魔法を戦いじゃなくて自分の快適なスローライフの為に使わせてもらいます。

自由気ままに家庭菜園をして、小遣い稼ぎに狩りをして、たまにテレポートで観光地へ行って遊ぶ!

そんなのびのび優雅な暮らしが私の目標なのだ!


決して落ちこぼれだから家を出てこんな生活をしてる訳じゃない、私の思想は一族の血筋に反してるから故郷を出たわけであって、うん。

べつに逃げたした訳じゃないし、夢を追いかけたんだし。

誰にも邪魔されない究極の暮らしを手に入れたんだ、もうあそこには帰らない。


悪いねご先祖さま、貴方の力くだらない事に使わせてもらいまーす。


そんなことを考えながら私はふかふかのベットにダイブして夢の中へ―――――――――――――


「おーい、起きろー勘違い娘」


私を呼ぶ声に反応してパチリと目を開ける。


「……誰?」


白い空間に1人男か私の前に立っている。


「おいおい、この姿見てわかんない? この黒髪、この服装! そしてこのイケメン! どこからどうみたって世界の英雄! 勇者 藤原志郎(ふじわらしろう)様だろうが!」


偉そうに親指自分に向ける騒がしい人。

何だこの人、自信満々に自分のこと英雄とか言っちゃって。

うん? ……ふじ……わら?


「 ……あぁ! 曾祖父ちゃん!? にしては若すぎない!? 私が知ってるのはもっと老けてて」


「どうでもいいことに突っ込むな! あのな、サオリこんなどうでもいい話をしている場合じゃないんだよ。お前に伝えなきゃいけないことがあるんだ」


曾祖父ちゃんは何やら真剣な眼差しで私を見つめる。


「手短に頼みます、私の夢から早く出てって私疲れてるの」


「おいおい、なんだよつれねぇな……なんかほんとに俺そっくり」


そう言って彼はやれやれとため息をついた。


「なにか」


「いいやなんでもない」


彼は再びシリアスな雰囲気を作り、強ばった表情をみせる。


「いいかサオリよく聞け、お前は勇者の素質がある。しかもやばいほどにな」


「……なに? それ?」


やばいほどって……なに?

いきなり夢に勇者の曾祖父ちゃんが出てきて、そんな事言われても……だって、私貴方の末裔の落ちこぼれよ?

家から出でったのも、皆の考えが嫌だからだし、私が弱かったからだし……

虐められたくらいでへこたれて逃げた私にそんな素質ある訳ないよ……何言ってんだろこの人、見る目無さすぎだよ笑えてくるあはは。


「じいちゃん、私そんな強くないよ。従兄弟達の方強いし」


「いや、そんなことはない。お前は確実に俺の意思を受け継いでいる」


「何それ……そんな、世界を救うーだの、皆のために! だの私はそんなかっこいいこと思ったことないよ……」


話す度に顔が曇る私に対して、話を聞く事に目がキラキラしていく曾祖父ちゃん。


「うんうん、そうそう、まさにそれだよ。やっぱ間違いない。お前こそ俺の後継者だ」


深く頷いて嬉しそうに私の肩を掴む。


「なんで!? 私はじいちゃんみたいに世界を救うとか大層なことしなくていい! 適度に魔法を使って……」


「快適なスローライフをだろ?」


「……えっ」


「弱いモンスターを狩って生活できる金を稼ぎ、その辺の食材と家庭菜園で自給自足の生活。たまにテレポートで観光地へ行きも帰りも楽ちんな日帰り旅行、俺の力をどうでもいいことに使いやがって! くぅー羨ましい! 俺がやりたかった異世界ライフを堪能しちゃてさぁ!」


私の暮らしが夢……?


「我が子孫に問う、貴様の夢はなんだ」


「そんなの、決まってるじゃない」


「「快適な生活を送り、あわよくば不老不死になる!」」


にやりと笑って私と言葉を被せた元勇者。

……これは、これは。

ふふっと笑って私も彼キラキラした眼差しでみつめる。


「戦うことは好きだけど?」


「負けることは大嫌い!」


「強い敵には?」


「会いたくない!」


「痛いのは嫌だ」


「死にたくない!」


「あはよくば?」


「不老不死!」


「寂しくなったら?」


「すげぇ呪いで殺してもらおう!」


私と曾祖父ちゃんは交互に質問しあった。

そして……


『ピシッガシッグッグッ』


「「いぇーー!!! お前こそマイソウルフレンド!」」


互いに肩を組み喜びを分かちあった。


「いやー! 良かったよ、なんか知らんけど俺の子孫、みんな世界の為人の為がんばりますみたいな、主人公精神ばっかだったんだもん! 本当に俺の血入ってる? みたいな!」


テンションが上がってバシバシと機嫌よく曾祖父ちゃんは私の背中を叩いてこう言った。


「そしたら生まれてきたよ、俺の意思全部引き継いだやつ! まさに純血! お前こそ俺の正当後継者だ!」


「うわっ、やめてよ! 世界救わないといけないじゃん!」


嫌そうにする私の顔を見つめる曾祖父ちゃん。

見つめあっていたらほっぺに空気を貯めて一気に吹き出した。


「「だっはっはっは!」」


まじか、曾祖父ちゃんも私と一緒だったなんて。

つまり、私は一族の中で最も誇れる人間……いや、違うだろ!

何喜んでんだ!

私と英雄が同じ思想とか終わってんだろ!

こんな、自分勝手な思想を持ってたやつが勇者!?

ふざけすぎだろ!


「……でもな、喜んでばかりじゃいられないんだよサオリ」


心の中で暴れていたら、凄い真剣な顔で彼は私に語りかけてきた。


「俺とほとんど同じって事はだな、多分お前も凄い面倒な事に巻き込まれる」


「……はっ?」


「多分じゃねぇな、あのなサオリ。この平和な世界だが最近なんかちょっとおかしいんだ。禍々しいオーラっていうか不穏な空気っていうか、なんか邪悪なものが生まれようとしている」


……まて、ちょっとまて。


「俺が封印した魔王いるだろ? なーんか最近封印した場所の付近がさぁ……」


「待て! じじい! それはあれか!? 私にそれを倒せっていうの!?」


「察しがいいな! その通……」


「嫌! 無理! 戦うのは好きだけど死にたくないもん!」


「うん分かる! めっちゃ分かる! けど俺も無理だった! 運命には逆らえなかった! お前も多分俺と同じ事になるぞ! つーわけだから頑張れ! 俺から出来ることはお前を応援することと、見守ることだけだ!」


「ふざけんなクソジジイ!」


「大丈夫だ! お前と俺が一緒なら絶対ラストは上手くいく! それじゃ、頑張れ!」


そう言って彼は私の前から消えてった。

その瞬間私の視界は明るくなり、目に見える風景が白い世界から白い天井へと変わる。


「……最悪の目覚めだ」


何かの悪い夢だ、私が勇者の正統後継者?

バカバカしい、こんなアホが勇者だなんてこの世の終わりよまったく。


体をベットから起こして、太陽の光を浴びて気持ちをリセットしようと外に出る。


「……うそ、でしょ?」


その瞬間私の目にありえない光景が飛び込んできた。

昨日まで丘の下はのどかな村だったのに、何故か知らないけど悪趣味な街と大きな城が出来ていた。




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