4話! 〜無個性やろうな僕が挫け立ち上がった結果〜
ミーヤ・テクスダント。
テクスダント……テクスダント……どこかで聞いた気がする……しかしどこで聞いたか思い出せない。
「うーん……思い出せん」
そう考えていると横から肩を叩かれた。
「春希……足音が近くなってる」
「名前呼び!?流石アメリカ出身なだけあるね」
「アメリカ?私イギリス生まれよ。それより早くこっち来て」
「おーけー」
「発音間違ってるわよ。まあいいわ、早くこっちに来て」
「分かった……」
最悪だ。
「早く!」
ミーヤは小声でそう言い、手でこちらを招いた。
僕はすぐさまミーヤの元へ行き吐息が聞こえるほど近くに寄らされた。
「こっこんなに近くに寄るの?」
「そうよ。じゃないと効果ないから」
「効果?」
ミーヤは僕の疑問に答えようともせず僕の体を掴みこう唱えた。
「インプリクス」
……何か起きたのか?
「ミーヤ、インクリスプって何?」
「インプリクスよそれと一歩も動いちゃダメよ、魔法の効果が切れるから」
「わっ分かった……」
そうは言ったがこれはキツイ。彼女の長い金髪が僕の肩にかかってる……しかもこの匂いは……ラベンダーか?すごい鼻にくる。普段香水を嗅ぎなれてないからこうなるんだ!
……気にするな。大丈夫、大丈夫。……お願いだから大きくならないでくれよー。
それにしても足音が近くなっている。もうすぐ来る!
「来たよ」
「……来たね」
足音の主だ、先生じゃなければいいのに……神様!お願いします!
誰だ……足音の主は、誰だ!
「……マジか」
「春希、声出しちゃダメ」
「いや大丈夫だよ」
だって!だって!足音の主は!
「カナタ!」
(僕の大親友だから!)
僕は勢い良くカナタの元へ向かい肩を叩いてこう話しかける。
「それにしても珍しいねカナタが授業サボるなんて!一体どうしたのー?もしかして女?」
「ああ女が目的だ」
「え?まじで?」
「ああ、それも忌々しい魔女を……なあ!!!!」
そう口にしたカナタ?は制服の内ポケットから木の棒サイズの杖を取り出した。そしてこう唱えた。
「インジクール!!!」
「させない!」
凄まじい勢いでミーヤは飛び出し自身の身長程ある杖をカナタへ向けてこう唱えた!
「ルーマ!」
半透明の壁が僕を囲む。
「守りの呪文か!使えるようになったんだなあ!」
「お兄ちゃんには……関係ない!!」
「そうかよ。じゃあ死ね」
□◼︎□◼︎□
「ミーヤ!ミーヤ!」
半透明の壁のおかげで僕は助かった。だけど壁のせいで何も聞こえない。
「クソッ!!!……僕は何も出来ないのか」
何が勇者になるだよ!
「僕のせいで……僕が待機してたら」
ミーヤは戦わなくて済んだのに!
……悔やんでも仕方がない。せめて応援くらいはするべきだ。
僕は静かに目を開いた。
「ミーヤ、頑張れ……え?」
何だこれ?何も見えない……
「はあ、はあ……なんだよこれ?この赤いの何なんだよぉぉぉぉ!!!」
半透明の壁は……
「はあはあ」
赤い、赤い、液体で満たされていた。
「……なんだよ、なんなんだよ!!」
両手で壁を叩く。その一撃には悲しみと後悔が滲みでていた。
「生きてるよなミ——がはッ!」
(何だ!)
壁が消えた?
「エクスプロージョンっと」
「カナタ……じゃないよな、お前誰だ!」
「俺か?俺は……」
カナタ?は頭に杖を当てこう唱えた。
「ドュウィーク」
するとカナタ?の顔が溶けたようにドロドロになり、無精髭の金髪碧眼の男が現れた。
「あー気持ちいいな」
男は首元に手を当て音を鳴らす。
「誰だよお前!」
「あ、俺か?」
不適な笑みを浮かべ、いかにも現代風な服装をした男はズボンのポケットに手を入れこう答える。
「俺はズッコケ・テクスダント。テリアム!」
そう唱えるとズッコケの元に赤い物体が近づいた。
「ほれ、処理しとけよ」
そう差し出された物は、ミーヤの死体だった。
「何だこれ?」
「あ?魔女の死体だよ」
「嘘だ……そんなわけない!!」
「だからそれは!……ってもういいか、理解出来ないんだろ」
男はパーカーを整えてその場を去る。
「ちっ!ついでだ!ピリアム!」
赤い血が消える。そして現れたのはミーヤの死体だった。
「ミーヤ……」
「じゃあな」
「ミーヤ……」
たった少しの間だったけど大切な大切な友達だったんだ!
「待てよズッコケ!」
「んだよ」
「聞いてなかったんだが——お前ミーヤの兄貴だったりしないよな!」
「だったらどうする?」
「そんなの……ッ!」
僕はミーヤの死体を抱きしめる。涙がミーヤの顔にかかる。俺は今、怒っている。
それだけは言っちゃダメだ!
「だったらなんだよ。お前何も出来ないだろ」
「僕は……」
足が動かない。震えて口が動かない。
「じゃあ口挟むなよ」
足音が遠ざかってゆく。
僕は結局……何も出来なかった。
「何が勇者になるだよ、何が夢だよ!!」
結局、何も出来ていないじゃないか。
「クソ、クソ……うう……ミーヤぁ」
ミーヤが冷たい、肩と肩が当たった時はあんなに暖かかったのに……なんでだよ。
「なんでこうなったんだよ……クソッ!」
右手で叩いた床は冷たかった。
…………
頭が働かない。もう何も考えたくない。
考えるとおかしくなりそうだから……
………
………
「は……」
「……はる」
「……」
「春希!」
「誰!?」
声が聞こえた。確かに聞こえた。
「誰なの?」
「私だよ」
「誰?」
「だから私だって!春希!」
目を疑った。だが考えない事にした、なんだってそこにいるのは魔法少女なのだから!
「生きててよかったミーヤ」
「ははは死んでるんだけどね、でもただいま」
空中に浮いているミーヤは髪をいじっりながらそう言った。
「また話せてよかった……」
「私も!」
その時の彼女の顔は美しく気を抜いていると惚れてしまうほどだった。
(しかしテクスダントか……どこかで聞いた気がするが、まあいいや。帰ろ)
「ミーヤ行こう」
「いいけど私の死体丁寧に扱ってね!私持てないから」
「わかったわかった!」
「たく、しょうがないんだから」
二人は笑顔で秘密基地を出た。
新しい魔法説明
インプリクス@相手に気づかれなくなる魔法。但し話しかけたり触ったりする気づかれやすくなる事をすると効果は無くなる。
インジクール@敵を麻痺にする魔法。
ルーマ@守りの呪文。壁を展開するもよし、バリアを出すのもよし!唱えた者の想像による。
エクスプロージョン@爆発させる魔法
ドュウィーク@変身魔法。解除の時も同じ呪文。
テリアム@引き寄せる魔法
ピリアム@洗濯の呪文
ちょっと多くなりましたね。
では読んでいただきありがとうございます!