3話! 〜無個性やろうの僕が美少女金髪碧眼魔法少女に膝枕してもらっていた結果〜
雨が降る日、僕は泣いていた。
初めて出来た彼女との初デート。
だが待ち合わせに来たのは空虚と虚空のスパイラルのみ。
その現実を中学生の頃の僕は受け入れられなかった。
涙を流し唇を噛み……夢を追いかけようと決意した。
□◼︎□◼︎□
「ぱんつの人だ……」
綾乃春希は静かに目を開いた。
(柔らかい……)
頭に柔らかい何かがある……それに目の前にはぱんつの人がいる。
「これって——膝枕?」
夢のような感触だ。
そう思った綾乃春希は体を180度回転させ少女の太ももの匂いを嗅ぐ。
「何してるんですか?」
鼻を二回ならせ自分の心の思うまま答える。
「あの!何してるんですか!」
またも鼻を鳴らせ——
「だ!か!ら!何してるんですかぁ!」
「はう!」
(この女!杖で叩きやがった!)
「痛い」
「だったらどいてください」
「……はい」
まだ頭が朦朧とする……
一分程彼女を見つめていた。あくまで落ち着くためである。しかし彼女は勘違いしているのか見つめていると少しずつ顔を赤らめてる。
「あの……落ち着きましたか?」
そう彼女は質問してきたが僕はあえてノーと答える。
この子を見ていると何故か弄りたい気持ちが溢れてくる。
「うーん分かんないので一旦寝てもいいですか?もちろんあなたの膝枕で!」
「は?」
やばい地雷を踏んだ。
今にも爆発しそうな爆弾、この質問から逃げないとやばいと綾乃春希は本能的に判断した。
「いえ、全てを理解しました。膝枕は不要です」
「そうですか」
だがこれだけは分からないことがある。
「だけどこれだけは教えてほしいです」
「皆まで言わなくてもいいよ、大体分かるから」
そう言うと女は手を組み持っていた杖を肘に挟む、そして魔法使い特有の帽子を触りこう答える。
「私が何で魔法を使えるのか——それが知りたいんでしょ」
女は綾乃春希の返答を待たずに次のセリフを言い出した。
「私はね……気付いたらここにいたの。私は魔法が飛び交う世界から来た、つまり異世界人だと思う……原理は分からない、だけどここに来た。この世界の人間じゃないから魔法が使える……しかも私の記憶が正しければ……私はもう死んでい——」
「ストップ!!」
突然の大声に驚いた女は舌を噛み悶絶していた。
「いったぁー急にどうしたの?」
綾乃春希は口の前に指を持ってくる、そしてこう呟いた。
「誰かくる」
(この足音はいつものおねいさんじゃない)
この場所がバレた?最悪の場合は教師が来た時この子の存在をどう説明するかだ。十中八九生徒指導室に呼ばれる事になる。
「大事な事を聞いてなかった。君の名前はなんて言うの?僕は魔法よりそっちが気になるな」
「私の名前?そんな事が気になるんだーふふふ!面白いね君!じゃあ君から教えてよ」
相槌を打つ。
「僕の名前は綾乃春希。将来の夢は勇者になること!よろしく!」
「私の名前はミーヤ!ミーヤ・テクスダント。よろしくね」
ミーヤは笑顔でそう答えた。
長く美しい金髪。青く綺麗な瞳を見て綾乃春希は不思議と初恋の人を思い出していた。
悲しく儚い初恋の事を。