祝福《ブレス》スキル持ちのオムレツ専門店【前篇】
「どーしてあんたは魔法使いの後ろに回り込むのよっ!」
今日も今日とて怒られる。
リオン・クレスト18歳、平凡な茶髪茶眼の祝福スキルのみ所持している冒険者。冒険者ギルドでのランクはS〜FのうちのE。
力が無いので短剣しか持てない。持っても、器用度が低いので攻撃が当たらない。
敏捷度が低いので敵から遠くに逃げられない。耐久度が低いので攻撃されたら耐えられない。
知識が低いのでLV1魔法も覚えられない。無い無い尽くしでやってます。
「まあまあ、仕方無いよ、リアンは鈍足なんだからさ」
「そうそう、普通に防御したって吹っ飛んで死にかけるだろうし」
「だからレベルも上がらないし、弱いままなんだよな」
「守ってやった分、依頼料貰えば良いじゃん」
「おいおい、守る度依頼料取ったら、冒険後の報酬が無くなっちまうだろ」
「そりゃ可哀想だよな。クエストの度マイナスかよ」
「金払って一緒に連れて行って下さいってか?」
「それでレベルあがりゃあな、良いんだろうけどな」
ギルド食堂で、今回のパーティー仲間以外からも、馬鹿にされている。これもいつもの事。
「エリスも許してやれよ。大魔法使いなんだろ、リアンが攻撃くらったら死ぬけど、エリスなら擦り傷じゃねえの?」
「そういう問題じゃ無いわよ!シュワルトの後ろに行くべきでしょ!」
「シュワルトは戦士だろ。戦士の真後ろに行ったら邪魔じゃねえか。な、シュワルト」
「そうだな。俺たち小刻みに動くし、大体戦闘中に突っ立ってる奴はいねえよ」
「リオンは突っ立ってるぞ」
馬鹿笑い。これもいつもの事。
「もうリオン連れてくのやめりゃあ良いじゃねえか」
「それなー」
「リオンがレアスキル持ってなきゃなー」
「使える祝福使いがいればなー」
「リオン、頑張れー応援してるぞー」
「俺もなー」
「俺も俺も」
「可哀想だろー、応援したとこで無理なんだからさ」
「違いねえや」
「でもまあ祝福があるからな、パーティーには必ず入れるから良いよな」
「かばうの面倒だけど、ちょっと得するからな、祝福」
馬鹿笑い。私は起こるのを止めて食事を開始したエリスの前から解放されて、隣の冒険者の宿に戻った。
冒険者の宿は宿といっても長期宿泊当たり前で、最早冒険者みんなの家(食事は出ない)だ。
この街には比較的クリアしやすいB級ダンジョンがあるので、多くの冒険者が逗留している。
「ただいまでーす」
「リアンちゃんおかえり。手紙が来てるよ」
ベットと小さいテーブルと椅子でいっぱいいっぱいの狭い部屋に戻って、手紙を開ける。
リオン兄さんからだ。
「あー、終わったんだー」
私の田舎は限界集落状態で、兄さん村に一軒しかないレストランの見習いコックをしている。違う、していた。
若者は一旗上げるとどんどん出て行き、年寄りだけが残って人口がどんどん減っていく。
私が生まれる前には唯一の目玉の傷に効くと有名な温泉が枯れてしまい、温泉宿と土産屋が潰れ、遂に兄の勤めていたレストランも潰れたらしい。
私達兄妹には目標があった。レストランの開店だ。小さい時に両親が亡くなって、ほんの少しの蓄えが残った。
コックをやりたい兄は村に残って働き、祝福スキルを持った私は12歳になってすぐ稼げると聞いた冒険者になった。
ギルドに登録して、毎日声をかけてくれたパーティーとダンジョンに潜る。
けど、祝福スキルしか無かったから今持っている貯金はちょっぴり。
まあ、村に残っても仕事が無いから、ちょっぴりでも貯金があるだけマシだよね。
田舎の村から歩いて三日の所にS級ダンジョンがある。
温泉が出てた頃それなりにお金があった祖父母は、ダンジョンの横に小さなレストランを建てた。
両親も出稼ぎ状態でやっていたレストランが私達の一番大きな財産だ。
「よーし!レストランに集合だー!」
少なくとも、冒険者としては足手まといだけど居るとちょっと便利という微妙な存在でいるよりは、料理の腕が上達した兄さんとレストランをやった方が楽しいに決まってる。
「しゅっぱーつ!」
ーーーーーー
S級ダンジョンは冒険者をしてた街から馬車で5日。一番安い乗合馬車の端っこにちんまり座らせてもらう。
「祝福はいかがですか?ちょっとした祝福はいかがですか?一日銅貨2枚です」
一緒に乗る人達にちょっとした小遣い稼ぎを持ちかける。
「祝福されるとどうなるんだ?」
「移動中体が痛くなりません」
「いらねー」
「冒険者が馬車移動に文句言うかよ」
「俺は買ってみるぜ。銅貨2枚ならちょっとした菓子買う位じゃねーか」
「俺も。この子あれだろ、街のダンジョンでパーティーに入れるとちょっと良い感じになる祝福持ちだろ」
ゴトゴト揺れる馬車。
「凄え!全然尻が痛くねえ!」
「俺も!ちょっと良いよな!」
「お、俺に祝福、今、うええええええ」
「祝福します?」
今にも馬車酔いで口から情熱を溢れさせそうな男性に頼まれて祝福する。
ちゃりんちゃりん。
「うおおおお!一気に楽になったぜ」
「私にもお願い」
「俺も今から頼むぜ」
感謝されるって嬉しいなあ。
夜は野宿。一番安い馬車だと、夜のモンスターや盗賊の襲撃に備えて乗客が代わりばんこに起きて見張り番をする。
ここでも私の小遣い稼ぎ。
「祝福いかがですか?野宿中の襲撃が無くなりますー。見張り番に起きなくて済みますー」
「ほんとかよ」
「ダンジョンでも休憩中にかけて効果のある祝福ですー」
「あれ良いよな!祝福持ちとパーティー組んだ事あるけど、何故か寄って来ないんだよな。俺はお願いするぜ」
「私も夜はゆっくり寝たいわ」
「見張りめんどくせえよな。買うぜ」
きっちり売れた。馬車の親方にも売れた。
念の為一人で起きておく。いままで一度も襲撃された事ないけどね、昼間寝ていけば良いし。
「一緒に起きててやるよ」
「あ、一人だけ祝福買ってくれなかった人だ」
「嫌な言い方だな」
爽やか笑顔の冒険者。20歳位かな?藍色のショートヘアに榛色の瞳。
やや高めの身長に、しっかりした体、黒い軽鎧に綺麗なデザインが施された柄と鞘のバスタードソードを持っている。
「俺は三日程度なら寝なくても平気だからな」
「そうなんだ。でも、夜は寝た方が良いと思うよ」
「お前が言うなよ」
ふふっと笑う藍色さん。
「私はリアン・クレスト。E級冒険者よ」
「ドーラ・アルザナ。A級だ。リアン嬢は何でこの馬車に乗ったんだ?S級ダンジョンのある村に行くやつだぞ」
「親のレストランがあるからそこで働くの。良かったら来てね」
「親に会いに行くのか。そりゃ楽しそうだな」
「ううん、親は亡くなってるから、兄さんとやるんだ」
「そうか、すまない」
「いいのいいの、今を大切にして元気に頑張ろーっていう家訓だから!」
「楽しそうな家だな」
私達は呑気に話しながら、一夜を過ごした。当然襲撃は無かった。
朝は祝福を売って、昼は自分を祝福してここぞとばかりに寝る、野宿前に起きて祝福を売る。
五日間繰り返してやっと着きました。
「祝福の嬢ちゃんありがとな」
「また何かあったらよろしくね」
「S級じゃ無理だけど、C級ダンジョンとか一緒に入りてえな」
とても良い気分で馬車から冒険者ギルドダンジョン前出張所や宿に向かう人に手を振る。
ギルド出張所を挟んで、結構しっかりした大きなレストランと、ボロボロのお店がある。
ボロボロの方が私達の店だ。しばらく誰も住んで無かったからね。
「リアン嬢、見張り番の時間楽しかったぜ。レストランがオープンしたら行くからな」
最後まで笑顔が爽やかだな。アルザナさんは頭をぽんぽんと叩いてギルドに入って行った。
「うわあっ!僕の可愛いリアンちゃんが、知らない男とイチャイチャしてるっ!」
ボロボロのレストランの入り口、半分斜めになっているドアの隙間から、兄さんが覗いていた。
兄さん、その体制は危ないと思う。ドアが小刻みにゆらゆらしてるし。
ばきっ!ぼてっ!
ドア完全に取れちゃったじゃん。
とりあえず、ドアは立てかけといて、第一回レストラン会議開催。
見習い兄さんは料理の才能がめちゃくちゃ無かった。料理が大好きで真面目なのに、レシピ通りに作っても謎の物質変化を起こしてしまう、呪われたコックだ。
そんなリオン兄さんが唯一美味しく作れる料理は、ある意味基本の卵料理、オムレツ。
オムレツなら凄く上手に作れる。挽肉入り、キノコ入り、スフレオムレツ、デミグラスソース掛け、ホワイトソース掛け、ベーコン入り、チーズ入り、ジャガイモ入り、オムレツに対してだけ、絶妙の火加減を発揮するオムレツコックだ。
恐らく所持スキルはオムレツだろう。
「オムレツ専門レストランって客入るのか?ギルド向こうのレストランにもオムレツあるし、それ以外にもたくさんのメニューがあるぞ。何と言っても夜は酒場として大人気だ」
「そこで、差別化ですよ。兄さんがオムレツを作る。私がオムレツに祝福を掛ける」
「俺さ、普通にオムレツ作るしか出来ないけど、オムレツに祝福を掛けるとどうなるんだ?」
「常にかけ続けるわけじゃないから、パーティーを組むのと比べたら凄く弱くなるけど、一種類の祝福をかけたら半日位もつよ。経験値が増える、弱い敵が寄ってこない、魔力が上がる、魔法や法術の威力が上がる、力が上がる、素早さが上がる、器用度が上がる、耐久力が上がる、他にも希望があればかけられるよ。一つだけだけどね」
「呪いのオムレツっぽくないか?」
「兄さんがオムレツ以外上手に作れれば良いけど、それ以外は全部不味いんだもん。お茶は私が入れれば良いでしょ。そうと決まったら、掃除しないと。兄さんは壊したドアを直してね」
「任せろ!」
その後、兄さんはドアを半壊させ、出窓を破壊し、キッチンカウンターを陥没させた。
何だよー、不器用なの料理だけじゃないじゃないかよー。
ーーーーーー
【祝福のオムレツ屋さん】
【 お茶も色々あります】
入り口のドアの上に看板を掲げて完成だ。
お店は二階建て。一階は店舗とちっこい裏庭に囲った水浴び場と井戸。二階は部屋が四つ。
兄さんの壊したドアと出窓は、いっそ開口部にしてしまえと、道に向かって半分以上どかーんと開けてしまった。
道側に座れば、知ってる冒険者が通った時に声をかけられるし、パーティーの待ち合わせもわざわざ中に入らなくて良いから便利になる筈。
いや、なおそうとして挫折したわけじゃないですよ。ほんとですよ。
どかーんと崩れた窓とドアの前で、一緒にがっくり崩れ落ちていたら、アルザナさんが通りかかって適当な丸太を二本、どこからか持って来たかと思うと、あっという間にお洒落なオープンカフェ風にしてくれて、陥没カウンターも余った端材で直してくれた。
もうね、アルザナさんには足を向けて眠れない。寝る時にどっちにアルザナさんがいるからわからないけどね。それくらい感謝しまくっている。
最後に感謝の土下座をしたら、必死に止められたあげく軽ーく引っ張り上げられた。
「オムレツ屋さんでーす。攻略前にオムレツをどうぞ!祝福付与のオムレツでーす。お好きな祝福をおつけしまーす。新規オープンお試しミニサイズオムレツやってまーす。経験値アップ、アイテムドロップアップ、ドロップアイテムレア度アップ、お好きな能力値アップ等、ご注文の際にお申し付け下さーい」
「お。馬車のお嬢ちゃんじゃん。お試しミニサイズ作ってくれよ」
「ありがとうございます。ベーコン、チーズ、キノコ、から一つ、祝福効果を一つ選べます。銅貨3枚の前払いでーす」
「おう。チーズ味をアイテムドロップアップで頼むぜ!嬢ちゃんの力を信じてるからな!」
「お試しチーズいっちょー!」
「お試しチーズいっちょー!」
キッチンカウンターの兄さんが卵をぽんと割って、牛乳を入れてシャカシャカと混ぜる。
フライパンにバターをちょっと入れて火であぶれば、バターの焦げる良い香り。そこに卵液を入れてフォークでかき混ぜれば、空気がたっぷり混ざってふんわり膨らんでくる。最後に削ったチーズを真ん中に入れて、ぽんぽんと丸めればチーズオムレツの出来上がり。
真っ白なお皿にオムレツと、ちょっとだけでもサラダを載せれば、緑と黄色がより美味しく感じるポイントになる。
「お待たせです」
一つ売れれば漂う香りと、美味しそうに食べる冒険者のおっちゃんの姿に、新しいお客様がやって来る。
やっぱりお試しサイズを作ったのは成功だ。
兄さんは大きさが違うだけで手間は一緒だから面倒くさいと嫌がったが、祝福効果は実際に体験してもらわないとわからないし、馬車の時と一緒で小銭で済むなら試してみようという気分になってくれる。
兄さんのオムレツが美味しいのは事実なんだから、美味しいと分かってもらえれば次の注文はお試しじゃなくてちゃんとした食事になる。
食事になればオムレツセットA(パン・スープ付き)や、オムレツセットB(パン・ドリンク付き)が売れる。
そして儲かる!儲かったら二階の住居部分を充実させるんだー。
今は寝袋にくるまって、藁束を敷いた床で寝てるからね。目指せベッド。
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祝福のオムレツ屋さんはオープン1ヶ月位で安定した。
ギルドの向こう側のレストラン、ネクタル酒場はランチから夜まで営業なので、うちは朝からモーニング営業から夕ご飯までやったらお終い。
お酒メインのネクタル酒場と、ノンアルコールしか無いうちの店で、お互いの飲み物は持ち込み可能したら、出入りが激しくて食事は出来ないギルドのホールよりお店で打ち合わせした方が良いって事で売り上げが上がったってネクタルのオーナーが喜んでた。
ダンジョンに出入りする冒険者さんや、村の人にも好評であっという間に一年程経った。
ベッドも買えたし、次はお風呂を作りたい!
今は井戸から水を引いて水浴びしか出来ない。冬は冒険者の宿でお風呂を借りたから、お金がかかって悔しかった。
ちょっとずつレンガを買ってやっと台座位まで組み上がっている。
順風満帆、といいたい所だが、時々「オムレツ以外の料理もやっぱり出したい」「俺の才能は今花開いたぜ!」などと言い出して、見た目はまともなのに、訳のわからない不味さを持った料理を兄さんが作ってしまい、村の人に披露しては「大人しくオムレツ専門店やっとけ」と言われて落ち込んだりする。
材料が無駄になるし、オムレツは最高の出来なんだからそれで満足して欲しい所だけど、コックと名乗るからには常に向上心を持って、料理に取り組むのは良い事だしな。
私が料理を作っても、普通の家庭の味にしかならないので、兄さんがやりたいのなら良いかな。
最近村の子供達が、オムレツ以外の匂いがすると「チャレンジメニューが食べられるぞ!」「一番に食べ切った奴が勇者な!」などと集まってくるのも微笑ましいというか、何というか。
「おはようクレスト嬢」
「おはようございますアルザナさん。いつものベーコンオムレツAセットで良いですか?」
「ああ。ほら銅貨10枚」
「毎回お代要らないって言ってますよね。未だに店の改装代お支払い出来てないのに」
「毎回言ってるよな、俺が払わないで済む理由を知らない奴に見られたら面倒だから、代金はきちんと払うって」
「うー」
いつものやり取り。
朝早くに起きて朝食後に鍛錬するアルザスさんは常連さんだ。
「ちょっと良いか?」
「ん?卵の殻とか混じってました?」
兄さんオムレツなら絶対失敗しないんだけど。
アルザナさんは軽く首を横に振る。
おいでおいでしてぽんぽんと隣の椅子を叩く。
「ダンジョンの奥の気配があまり良く無いんだ。かなり強いモンスターが出るかも知れない。もし、冒険者の戦力が足りなかったら、上に上がって来る事もあるから、危険な時は教えるから村から退避も考えてくれ」
小さな声で教えてくれる。
が、E級冒険者だった私には今一つ強いモンスターのイメージがわからない。
首をこてんと傾けて、思った事をそのまま言う。
「んー、でも行くとこ無いんですよね。貯金もほぼ無いし。それにS級ダンジョン攻略者の皆さんって高レベルだから、危なくなる事は無いんじゃ無いかなーって思うんですけど」
「そうなんだけどな、危険に備えるのは必要だぞ。じゃあリオンにも伝えておいてくれ」
「はーい」
アルザナさんと兄さんは名前で呼び合う位仲良しになっている。
『リアンもやった事ある冒険者、俺もやってみたーい』と子供みたいな事を言う兄さんを、アルザナさん含むオムレツ屋の常連さんがパーティーを組んで、ダンジョン第一層に連れて行ってくれたのがきっかけだったりする。
コックだから愛用のフライパンと包丁を武器にしたら?と言ったら『バカだな、調理用具はコックの命だぞ!お前の装備を貸せ!』と言って私のお古の短剣を持ってご機嫌で出かけて行った。
臨時休業の札を下げて紅茶を入れて、テラス席で二杯目を飲み始めたあたりで、生まれたての小鹿みたいにぷるぷる震える兄さんを、アルザナさんがお姫様抱っこして帰って来た姿は私の目に焼き付いている。
そんな兄さんの王子様アルザナさんの忠告をランチタイム後の暇な時間に、お兄様姫に伝えると私と同じく首をこてんと傾けた。
「うーん、S級ダンジョンに出て来る高レベルモンスターって言われても、実感わかないなあ」
「だよねー。行くとこ無いしどうする?」
「流石にやばくなって来たらわかるんじゃね?一応非常用持ち出し袋作っておくか」
「あ、それもう出来てる」
「やる事ねえな」
「ねー」
アホ兄妹のアホ会話にしかならなかった。
ーーーーーー
一応高レベルモンスターを警戒しつつ半月程、全くもって私の生活は変わらなかった。レンガは増えた。
「今日も元気に稼ぎましょー」
一応雨の日と夜の防犯の用に開口部を閉める仕切りを作ってあるので、朝一の仕事はテラス席の仕切りを外して箒で掃く所から始まる。
天気も良いし、良い感じ。
ばたばたばた!
冒険者の宿から10人程の人達が走って来る。
朝一からダンジョンアタックかー。元気だなー。
と思ったら、全員私の前で立ち止まった。
「オープンは未だですよー」
「リアンっ!こんなとこで何やってんだ!」
「遊んでないで街に戻って来いよ!」
何かわあわあ言われてる。
んー。どっかで見た事ある様な?な?
あ!
「B級ダンジョンの街の冒険者さん達だ。お久しぶりですおはようございます。遂にS級ダンジョンにチャレンジですか?凄いですね」
「何言ってんだよ!ふざけんな!」
「わざわざ迎えに来てやったんだぞ!」
一人にがつっと腕を掴まれた。
「痛いです。やめて下さい」
すっと大きな影が私の横に現れた。
「お前ら何やってんだ!」
大きな影ことアルザナさんが、私を掴んだ腕を握って、外してくれた。そのまま、すっと私の前に出る。
「お前誰だよ!俺たちはリアンの雇主だぞ!」
「クレスト嬢、君は彼らに雇われているのか?」
「雇われてませんよ。私は兄との共同ですけど経営者ですよ。えっへん」
「何言ってんだよ!」
またしても騒ぎ出す街の冒険者さん達。
私を後ろに庇ったまま、アルザナさんが冒険者さん達をお店の椅子に座る様に促す。
うーん、オープンが遅れた分は誰が賠償してくれるんだろ。
厨房に目をやれば、兄さんが心配そうな顔をしつつも、今日のお勧めメニュー用の黒板にチョークで『よくわからんが任せた』と書いて見せてくる。お姫様はしょーがないなー。




