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『おっかえり〜。ソフィア!!』


『おかえりなさい、ソフィアちゃん』


自分の部屋に戻ったソフィアを2つの声が迎えた。


「ただいま、レティ、クレア」


レティとクレアと呼ばれた2人はソフィア付きの侍女だ。2人はソフィアより3つ年上で、小さい頃からソフィアと共に育った幼馴染でもある。だから公の場以外は砕けた物言いなのだ。また、彼女たちはソフィアが城内で心を許す数少ない者たちでもある。


『さっそく届いてるわよ!今度は何したの〜?』


ソフィアが上着を脱いでいるところで、レティがテーブルの上にあるお菓子を指しながら言ってきた。彼女の顔は笑顔だ。


「ただ注文していたドレスを断っただけだ。無駄だもの」


置いてあるお菓子を横目に見ながら淡々と答えた。


『それだけ!?それだけでよくやるわね』


レティは呆れたといった顔で言った。クレアも紅茶をいれながら困ったような顔をしている。


ソフィアは脱いだ上着をヒョイと椅子に掛け、行儀悪くテーブルにあったお菓子を口に放り込んだ。


『あっ、ちょっと、そんな簡単に食べるなよ!まだ毒見してないんだぞ、それ!!』


レティが慌てたように言ったが、もう咀嚼してしまった。


「ム・・・・・・少し舌がピリピリする・・多分、これはトリカの実の粉末が入っているぞ」


 トリカの実とは、国外で採れる毒の一種だ。食べると体の穴という穴から血が出て失血死をする恐ろしい毒だ・・・ソフィアたち以外には。


『そうだったの。それなら私たちも食べられるわね』


クレアがそう言いながら、ソフィアが取ったのとは違うお菓子をつまんだ。


『あら、これはミグスの毒よ。珍しいわね・・・すごく甘い』


ミグスとは国内で採れる、甘い味のする毒だ。症状は下痢が3日間止まらなくなるというものだ。


『あっ、ずるい!!私も食べる!!・・・これは何も入ってないわ・・つまんないの。他の食べよ!!』


3人とも全く平気そうに食べている。


「・・・で、今回は誰から?」


紅茶を飲み一息ついてからソフィアはレティたちに聞いた。


『3馬鹿トリオの2番目。たかだかドレスごときでよくやるよ。それにこの毒だって国民の税金から払ってるんだろ。あいつら働いてないし。人気ないくせにさ』


『あらあら、レティちゃん。3馬鹿なんて言っちゃだめよ。いくら馬鹿でもクソでも一応は姫なのだし』


『・・・あんたの方が多く言ってるじゃない。それにクソとも言ってるし』


『あら、フフフ。私の口は嘘が言えないのよ』


クレアの発言を聞いたレティは「それこそ嘘じゃない・・」と言いながらため息をついた。その後、忘れてたといったふうにガバッと顔を上げ、ソフィアに言った。


『そういえば、今回持ってきた侍女は隣の部屋にいるよ。二の姫付きの侍女だった。泣きわめいて五月蠅かったから、口縛っちゃった。

 それにしてもなんであの馬鹿たちはトリカの毒とか使ったんだろうね。バレバレだよ』


そういったレティだが、ソフィアに「馬鹿だからこそだよ」と言われ口を噤んだ。


『それよりも、ソフィアちゃん。侍女はどうするの?本人は私たちが必ず死ぬと思ってきたみたいね。それに捕まえようとしたときナイフも使ってきたわ。素人風だったけれど。失敗するとは思わなかったのかしらね?王族・・・しかもソフィアちゃんに手を出すなんて愚かな子』


クレアが嘲笑を浮かべながら言った。それにはソフィアもレティも同感だったのでうなずいた。


 王族に手を出したら死刑そして一族は追放だなんてことぐらい小さな子供でも知っている。ましてや今の治世は全く悪くない。それでも手を出したのなら、余程の覚悟のうえ、あるいは欲に目がくらんだかなのだろう。今回の場合は後者だろう。


 ただのメイドごときに恨みを買った覚えはない。


「まぁ、とりあえず会ってみようか」


そういうと、ソフィアは例のお菓子の入った皿を手に持ち、二人と共に隣の部屋に向かった。


――――――ああ、面倒くさい。


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